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本編

第6話_"名門校"の裏切り-4

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「この大学初めて来たけど、結構地味だなぁ。敷地広そー」

歩きだすと、影斗エイトは道のりを好き勝手に逸れながら方々を散策し始めた。

「先輩、ちゃんとついてきて下さい。迷子になって後で連絡貰っても電話出ませんからね」

来訪記念か、あちこちをスマホで撮影して回る影斗へそう声を投げる蒼矢ソウヤに、リョウはおずおずと問いかける。

「…髙城タカシロって、出身高校どこなんだっけ?」
「? TK高だけど」

…T大付属K高…、国立…!?

さらりと返ってきたその返答に、諒は内で驚嘆しながらも、冷静を装いつつ続ける。

「…つまり、宮島ミヤジマ先輩も、なんだよね?」
「そうだよ。…! あぁ」

こちらの反応を待つ諒と啓介ケイスケの面持ちを見、遅ればせながら彼らの内に渦巻く疑念に気付いた蒼矢は、注釈をつけ加えた。

「あの人は、高校でも特別というか…結構逸脱してたんだ、色々と」
「どんないきさつがあって知り合ったの? …委員会とかの先輩っぽい感じはしないんだけど…」
「うん、そういう繋がりじゃない。先輩が俺に興味あったみたいで、急に話しかけられたんだ。そこから、…まぁ、少しずつ」
「へぇ…」
「そういうきっかけね。髙城とあの先輩って雰囲気正反対に見えるから、ちょっと驚いたわ。学年も違うし、普通に学校通っててもそうそう接点無いだろうし、話しかけでもしなきゃ絶対出会わなそう」

啓介がもっともな推論を述べると、蒼矢は大講堂前で自撮りする影斗を眺めながら頷き返した。

「うん。でも、俺にとっては良い人だよ。面倒に思う時もあるけど、頼りになるし、事あるごとに助けられてる」
「確かに、なんか万能そう。とりあえず敵にいたら怖いタイプだわ」

啓介の言い得て妙な表現に、聞こえていない渦中の影斗で3人は笑った。
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