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本編
第9話_波乱の序章-3
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他学部生とみられるその女子学生は、蒼矢の行く手を阻むようにドア前に立ったまま室内をきょろきょろと見渡し、ついで目の前に立つ彼をゆっくりと眺め上げた。
「…! もしかして…あなたが"髙城"くん?」
「! はい」
「やだ私ったら…目の前にいるのに探しちゃった。失態失態」
いつの間にか、女子学生の後ろから追加で男女数人が入室してきていて、彼らに気圧されるように蒼矢は更に室内へと戻されていく。
全員他学部生なのか、やはり知らない顔ぶれで、地味めのトーンでまとめた者がほとんどな理学部生に対し、派手髪にアクセサリーを身に着けた色鮮やかな装いの者ばかりだった。
まるで雑誌モデルのような華やかな出で立ちの彼らは、女子学生に対面する蒼矢を背後から好奇の目で眺めていた。
「私、『T大ニュース』っていうサークルの代表務めてます、是枝です。文学部の4年よ」
そう名乗った女子学生――是枝 岬は、にっこり微笑みながら蒼矢へ名刺を手渡す。
「初めまして、僕は1年の――」
「あぁ、名乗らなくていいわ、あなたの名前ならよぉく知ってるから。髙城 蒼矢くん。この前の入学式で、新入生代表で挨拶してたでしょう?」
「…! はい」
岬は、くっきりとした太眉を表情豊かに上下させながら、初対面の蒼矢へそう気さくに話しかける。
幅広のカチューシャをかけ、生え際を見せたすっきりとした輪郭に、肩下くらいに伸びた黒髪には緩やかなウェーブを効かせていて、理知的な面立ちの中にも快活さを表立たせていた。
「サークルの性質柄、私たちも末席に座らせて貰えててね。それからもう、あなたの顔を一日でも早く間近で見てみたかったんだけど、やっぱり会場中湧かせてただけのことはあるわ…すっごく綺麗な顔してるのね!」
「は…あ」
「でもあなた、入学式の時はそんな黒縁眼鏡かけてなかったわよね? どうりで判らなかったはずだわぁ」
岬がそう何気無しに発した言葉に、後ろから見守る諒と啓介の胸中に、やや緊張が走る。
「…! もしかして…あなたが"髙城"くん?」
「! はい」
「やだ私ったら…目の前にいるのに探しちゃった。失態失態」
いつの間にか、女子学生の後ろから追加で男女数人が入室してきていて、彼らに気圧されるように蒼矢は更に室内へと戻されていく。
全員他学部生なのか、やはり知らない顔ぶれで、地味めのトーンでまとめた者がほとんどな理学部生に対し、派手髪にアクセサリーを身に着けた色鮮やかな装いの者ばかりだった。
まるで雑誌モデルのような華やかな出で立ちの彼らは、女子学生に対面する蒼矢を背後から好奇の目で眺めていた。
「私、『T大ニュース』っていうサークルの代表務めてます、是枝です。文学部の4年よ」
そう名乗った女子学生――是枝 岬は、にっこり微笑みながら蒼矢へ名刺を手渡す。
「初めまして、僕は1年の――」
「あぁ、名乗らなくていいわ、あなたの名前ならよぉく知ってるから。髙城 蒼矢くん。この前の入学式で、新入生代表で挨拶してたでしょう?」
「…! はい」
岬は、くっきりとした太眉を表情豊かに上下させながら、初対面の蒼矢へそう気さくに話しかける。
幅広のカチューシャをかけ、生え際を見せたすっきりとした輪郭に、肩下くらいに伸びた黒髪には緩やかなウェーブを効かせていて、理知的な面立ちの中にも快活さを表立たせていた。
「サークルの性質柄、私たちも末席に座らせて貰えててね。それからもう、あなたの顔を一日でも早く間近で見てみたかったんだけど、やっぱり会場中湧かせてただけのことはあるわ…すっごく綺麗な顔してるのね!」
「は…あ」
「でもあなた、入学式の時はそんな黒縁眼鏡かけてなかったわよね? どうりで判らなかったはずだわぁ」
岬がそう何気無しに発した言葉に、後ろから見守る諒と啓介の胸中に、やや緊張が走る。
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