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本編

第12話_静かな正義-6

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部外者が消え、講義室には沈黙が降りる。
蒼矢ソウヤは、開け放たれたままのドアへ歩み寄って閉めると室内へ向き直り、再び頭を下げた。

「…みんなごめん。迷惑をかけてしまって」

またしても深々と垂れる頭に、同級生たちは慌てた風に立ち上がってとりなし始める。

「頭上げろよ、髙城タカシロっ…お前が謝ることじゃないだろ…!」
「そうだよ! お前こそ被害者じゃないか。俺たちが迷惑かけられてるとしても、髙城からじゃなくあいつらからだからっ」
「今の奴が言ってたことなら、何も刺さっちゃいないよ。だって地味なのも陰キャなのも、本当のことだもん」
「学部ごと注目されるなんて、こっちから願い下げだしな。こちとら望んで人目を忍んで生きてるんだから」

同級生たちの自虐を交えたフォローを聞き、すまなそうな表情を浮かべながらも目元を緩ませると、蒼矢は啓介ケイスケへ歩み寄っていく。

「急に前を塞いで悪かった、沖本オキモト。怪我は?」
「…! あ、いや、大丈夫」

まだ少し呆けた様子だった啓介は、声を掛けた蒼矢へ目を見張りながら応える。
次いで少し顔を赤らめ、身を縮めながら頭を下げた。

「…助かったよ。お前が止めてくれなかったら、やり返しちまってるところだった。…ついかっとなって」

そう恐縮する啓介へ、リョウはため息をついてみせる。

「本当だよ。あのままとっ組み合いにでもなってたら、今頃収拾ついてないぞ。あと煽り過ぎ。気持ちわかるけどさ」
「…だって、学部のことまで馬鹿にされちゃ、黙ってられなくて…」

諒にたしなめられ、しょぼくれながらも愚痴る啓介に、蒼矢も鋭い面差しを向ける。

「確かに、さっきのは言い過ぎだったな。沖本の弁を借りるなら、彼らの中身が三流だという根拠も無い」
「う…」
「…でも、君の言葉を聞いてなんだか俺もすっきりした。つまり、俺も頭の中で同じようなことを思ってたのかもしれない」
「…!」

啓介が顔をあげた時には、蒼矢は表情を緩め、静かに微笑んでいた。

「言えなかった俺の代わりに、君が言ってくれた。…ありがとう」
「…髙城…」
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