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本編

第10話_妖しの訪ね人-5

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葉月ハヅキは、少しずつ頭がはっきりしてきたレツへ、昨日『転異空間』へ転送してから今に至るまでのあらましを伝えた。

「ごめん、もっと早くに言っておけば良かったね…」
「いや、俺もだいぶ油断してました。…蒼矢ソウヤはどういう状態なんすかね?」
「…わからない。僕も戦闘状況を聞き出したくらいで、彼とはろくに会話できてないんだ。…ただ…今となっては、彼が言ってたその情報でさえも、正しいものか判断出来なくなってしまった」
「さっき一瞬、あいつの声の中に別のものが混じってた時があったんです。…別の奴が喋ってるみたいな気がした」
「それは、苡月イツキも言ってたよ。…操られてる、憑依されている。いずれにしても、おそらく精神をコントロールされてしまってる…と思う」
「…蒼矢が…、[異界のもの奴ら]に…!」

烈の眼に怒りの感情が帯び、拳が硬く握り込まれる。
豹変していく彼の面様を見守りながら、葉月は落ち着いた口調で続けた。

「――とにかく、あまりゆっくりしていられない状況だ。早く蒼矢を見つけ出さないと…[侵略者]の意のままだとしたら、どこで何をしでかすかわからない。彼に干渉した理由は見えないけど、『現実世界』に害をなそうとしていることは確かだ」
「そっすね。…」

葉月の言に、烈は同意しつつも、再び記憶と思考を巡らせる。

――残念だ、ロードナイト・・・・・・――

…蒼矢を使って、ロードナイトを引き入れようとした…?

「…葉月さん、[侵略者]の目的は『現実世界こっち』ってよりは、『セイバー俺ら』なのかもしれねぇ」
「…僕ら…?」
「蒼矢をきっかけに俺たちを囲い込んで、無力化する。…あわよくば、蒼矢と同じように手駒にする。…『守護者セイバー』さえ押さえちまえば、[侵略者奴ら]にとって現実世界ここの障害は無くなる」
「……!」

烈の鋭い視線を受け止めた葉月は、目を見開かせ表情を凍らせた後、我に返ったように瞳を揺らす。

「…確かに…、接触したにしても苡月が無事だったのは、そういうことか…!?」
「興味が無かった。苡月は『セイバー』じゃないから、標的にはならなかった。ってことすかね…」

そして、彼らは核心へ辿り着く。

「…葉月さんやアキラを狙わずにまず俺に来たのは、俺が[侵略者]と直接当たってないから、…もしくは」
「…主戦力・・・だから」

ふたりは、同時に息を飲んだ。
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