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◇第四章 ルイス編◇ チャラい彼はヒミツを抱えています
第十五話 「触んなっつうの!」
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休日の昼間。
今日も私は訓練場に一人でコッソリと来ていた。
「結局、来ちゃった……」
来るなってハーヴェイさんに言われたけど、なんとなく気になって来ちゃったんだよね。
それに、昼間に騎士の仲間の人達の前ではどんな風に剣を振ってるのか、前は見れてなかったから。
もしかしたら訓練ってだけだから、実際は剣は振らないのかもしれないけど。
でももし剣を使って訓練をしてるなら、そのときは、あのどうでもよさそうな無機質な目じゃないといいなって思う。
私の心配なんて、余計なお世話かもしれないけど。
「……とりあえず、ハーヴェイさんにバレないようにのぞいておけばいいよね」
何が理由で見学をダメだって言ってるのかわからないけど、気づかれたらまたムスッてされちゃうはず。 コッソリ、ヒッソリだったらいいよね?
今日だって、たくさん女の人達がいることだし、私一人が紛《まぎ》れ込んだって見つからないと思う。
でも、念には念を入れて、訓練場の目立たない隅の柱の近くにいようっと。
「……でも、ここからだと遠くであんまり見えないよね」
ハーヴェイさんの様子とかを確認したかったのに、全然できないよ。
豆粒程度の大きさにしか見えないけど、かと言って前に移動しちゃうとバレる可能性が上がるのは……。
「そう。なら、これだとどう?」
「!? えっ?」
すぐ近くで男性の声がしたかと思ったら、眼前に薄い板のような物が浮かび上がった。
その板は透き通ってて、豆状のハーヴェイさんがちょうど中央にあった。けど、すぐにその映像が拡大された。
……すごい!
まるでズームをかけたみたい! ハーヴェイさんの顔がしっかり見えるほど、映ってる姿が大きくなってる。
「ルイスの必死な顔が見えるね。……ふふ、愉快だ」
「! あ……」
優し気な口調で容赦ない物言い。
既視感を覚えて振り向けば、柔和な表情で私を見つめる菫色の瞳がまず視界に入ってきた。
「! アル」
「久しぶり、リオン。変わりなさそうでなによりだよ」
蕩ける砂糖菓子みたいな甘い笑みを向けてきた彼は、数週間前に最後に会った時から何も変わってなかった。
「それにしてもつれない人だね、リオン。『ごめんなさい、屋敷を出ることになりました。お世話になりました。またどこかで会えることを祈ってます』なんてあいさつだけで、私は納得などできないよ?」
「ご、ごめんなさい」
……う。
悲哀な表情でさみしそうに見つめるアルに罪悪感がズシッとのしかかってくるよ。
そして、一言一句間違えずに伝言を繰り返すなんて、根に持っていますか。
た、たしかにアルには何も断りなしにマクファーソン家から出ちゃったからね。
あんなに私の料理をおいしそうに食べてたのに、申し訳ないことしちゃったよ。セバスチャンさんには一応伝言頼んどいたんだけど、本人に直接伝えるべきだったよね。
「だから、ね。これは罰だよ」
「……え」
スッとなめらかな動作で私の片手を、アルにすくい取られた。そのまま、手の甲を彼の口元に寄せられて。
「!」
まるで、羽が舞い落ちてきたように、温かくやわらかい感触が手の甲にする。私の肌に、わずかに触れたのは間違いなく。
唇をそっと外して、アルは微笑んでみせた。
「これで許すよ。リオンだから、特別に」
「……」
これって、『ありがとう』ってお礼を言うところ? ……ううん、違うよね。
手の甲にキスされて、ありがとうなんて思えるはずがないよ!
そもそも、どうしてそんな行動に出ちゃったのアルは!? 会わなかった数週間で何が彼の中で起こったの!?
「っっざっけんな!! 何してやがるアルフォード!」
怒りをにじませた声が聞こえた。
グイッと強い力でアルにつかまってた手をとられて、そのまま引き寄せられる。
だ、誰……!?
乱暴なくらいの勢いで引かれて、私の頬に固い胸板があたる。視界の端に映ったのは、見慣れた紺碧色の髪。
「っ! ハ、ハーヴェイ、さん……!?」
「こいつに触んなっつうの!」
「ふふふ、旧知の友人に対してその物言いとは。ひどい人だね」
「うるさい! あんたと俺は単なる腐れ縁だろうが!」
私を背後から抱きかかえながら、ハーヴェイさんは威嚇して唸るように言い放った。
っというよりですね、あの、その、ち、近くないですか? ハーヴェイさん。
それに訓練中じゃなかったの?
……でも、訓練場の中央を確認しようとしても、しっかりハーヴェイさんに抱きこまれててそっちの方は見れない。
身体がハーヴェイさんの腕で拘束されてるから、横目ですぐ近くにある彼の顔を見てみると。
優しい印象をあたえるはずのタレ目が、怖いことになってる。
まさに、機嫌最悪って言わんばかりの彼の表情を、アルはニコニコと眺めてた。
……楽しそうだね、アル。
「それにしてもズルいよね。私のお気に入りのリオンをそんな風に独り占めする気かい?」
「『アルフォードの』じゃないだろ!」
「ルイスのものでもないよね? なら、構わないだろう?」
「んなわけないだろ!? 構うに決まってるからな!」
言い争いがヒートアップしてるけど、正直私はそれどころじゃないよ。
ハーヴェイさんと大接近してるせいで、混乱して頭の中が真っ白になっちゃってるから。
あの……庇ってくれてるのとかはわかるけど、そろそろ放してもらえないかな。緊張しちゃって会話の内容も聞き流しちゃうよ。
「君は口を挟む立場ではないはずだよ?」
「お、俺はクガの兄替わりとしてだな……!」
ハーヴェイさんの焦りが前面に出た返事に、目をすがめたアルが見える。アルの雰囲気がまるで勝機を見出したように強者のものに変化し、嘲るようにかすかに微笑んだ。
「ふぅん……『兄替わり』、ね。なら、余計に小言を言わないでくれないかな。私の感情はそんな半端なものじゃないから」
「は? は!? まさかアルフォード、あんた……」
ハーヴェイさんの抱きしめてくる力が強くなった。つかまれてる腕には、彼の指がくいこみそうなくらいだ。
あの……苦しいです、ハーヴェイさん。どうしてそんなに動揺してるんですか?
アルもアルで、何を言ってるの……?
「ふふ、口にするだけ野暮というものかな。それに、囁くに値しない場では告げる必要はないよ」
妖艶なしぐさで人差し指を薄く整った唇にそえてみせて、アルは目を細めた。
流し目でとらえられて、まるで縫いつけられちゃったみたいに身じろぎすらできなくなる。
クモの巣にかかってしまったら、こんな気分になるのかな?
「……ああ、そうだ。ねぇリオン、花祭りの日の予定は空いているかい? もしよかったら、私と巡ろう?」
「……え?」
「はぁ!?」
ただでさえ脳がショートを起こしかけてたのに、そこにさらに爆薬を仕掛けられた気分。
さっきの話題だけでも整理がついてないのに、アルってば何を言い出したの?
まるで自分の意見を『名案でしょ?』って言わんばかりに、満足そうにアルは笑ってる。
「そもそも私はね。君を誘うために、ここを訪ねたのさ」
それって……つまり私がここに来るって知ってたってこと?
どうやって知ったのか気になるけど、聞くと面倒そうな予感がする。深く考えないでおこうかな。
…………あれ? アルの今の発言って、そもそもだけどもしかして。
「デートってこと……?」
「!!?」
「そう、さすがリオン。察しが良いね」
半信半疑のまま聞いたのに、あっさり肯定されるなんて思わなかったよ。
……でも、女タラシ疑惑がある彼のことだから、言葉の選び方が間違ってたり冗談とかじゃないの?
私の思考を見透かしたみたいに、アルは華やかな笑顔を浮かべた。
「どうかな? 君の一日を私にくれる?」
「…………あの」
どうしよう。突然すぎて、わけがわからないのに。
だからって、ここで黙ってるのはよくないよね。
……でも、どう答えるべきなの?
「――待った!」
困って返事を迷っている私の耳に飛び込んできたのは、ハーヴェイさんの制止の声だった。
「ハーヴェイ、さん?」
近くの彼の横顔を見ると、眉間にしわをこれでもかってくらいつくって、しかめっ面をしてた。
苦しそうで、つらい思いをしてるような表情。
一体どうしたの?
「なんだい? せっかくの機会を潰さないでくれるかな?」
「……」
アルのため息交じりの呆れ声に、ハーヴェイさんは無言だった。
彼の腕の拘束が解かれて、やっと抱きしめられてる体勢じゃなくなった。かと思ったら、私の両肩がつかまれてクルリと反転させられる。
正面のすぐそばに立つハーヴェイさんは、ひどく真剣な表情をしてた。
タレ目気味の瞳を切なそうに細められて、私の心臓が元気よく飛び跳ねた。こんなに近いと、早くなった鼓動が聞かれそうで嫌なのに。
でも、落ち着けさせる方法なんてわからない。誰か知ってたら、今すぐに教えてほしいよ。
「こいつとデートするくらいなら、俺としてくれ」
「…………!?」
ハーヴェイさんまで何を言い出すの!?
まさか負けず嫌いでアルにつられて言い始めただけ?
「ふぅん、妨害とはね」
「何とでも言え。選ぶのはクガだろ」
「…………あ、あの」
アルはスッと目を細めた。威圧感のある逆らえない空気が彼から出てるのに、ハーヴェイさんはそれを鼻で笑い飛ばしてみせた。
二人は普通に会話をしてるけど、私は展開についていけてないよ。
その、つまり。アルとハーヴェイさんの両方に、デートに誘われてる、の?
……改めて考え直しても、理解できないよ!?
何がどうしてこんなことになっちゃったの!?
「クガ」「リオン」
「なぁ、どっちを選ぶんだ?」「ねぇ、どちらを選ぶのかな?」
「……」
同時に投げかけられた問いに、言葉が詰まった。
このまま、返事をしないで逃げるっていうのは……無理、なのかな。
私の答えをジッと見守って待つ二人にうながされて、怖々と唇を動かした。
今日も私は訓練場に一人でコッソリと来ていた。
「結局、来ちゃった……」
来るなってハーヴェイさんに言われたけど、なんとなく気になって来ちゃったんだよね。
それに、昼間に騎士の仲間の人達の前ではどんな風に剣を振ってるのか、前は見れてなかったから。
もしかしたら訓練ってだけだから、実際は剣は振らないのかもしれないけど。
でももし剣を使って訓練をしてるなら、そのときは、あのどうでもよさそうな無機質な目じゃないといいなって思う。
私の心配なんて、余計なお世話かもしれないけど。
「……とりあえず、ハーヴェイさんにバレないようにのぞいておけばいいよね」
何が理由で見学をダメだって言ってるのかわからないけど、気づかれたらまたムスッてされちゃうはず。 コッソリ、ヒッソリだったらいいよね?
今日だって、たくさん女の人達がいることだし、私一人が紛《まぎ》れ込んだって見つからないと思う。
でも、念には念を入れて、訓練場の目立たない隅の柱の近くにいようっと。
「……でも、ここからだと遠くであんまり見えないよね」
ハーヴェイさんの様子とかを確認したかったのに、全然できないよ。
豆粒程度の大きさにしか見えないけど、かと言って前に移動しちゃうとバレる可能性が上がるのは……。
「そう。なら、これだとどう?」
「!? えっ?」
すぐ近くで男性の声がしたかと思ったら、眼前に薄い板のような物が浮かび上がった。
その板は透き通ってて、豆状のハーヴェイさんがちょうど中央にあった。けど、すぐにその映像が拡大された。
……すごい!
まるでズームをかけたみたい! ハーヴェイさんの顔がしっかり見えるほど、映ってる姿が大きくなってる。
「ルイスの必死な顔が見えるね。……ふふ、愉快だ」
「! あ……」
優し気な口調で容赦ない物言い。
既視感を覚えて振り向けば、柔和な表情で私を見つめる菫色の瞳がまず視界に入ってきた。
「! アル」
「久しぶり、リオン。変わりなさそうでなによりだよ」
蕩ける砂糖菓子みたいな甘い笑みを向けてきた彼は、数週間前に最後に会った時から何も変わってなかった。
「それにしてもつれない人だね、リオン。『ごめんなさい、屋敷を出ることになりました。お世話になりました。またどこかで会えることを祈ってます』なんてあいさつだけで、私は納得などできないよ?」
「ご、ごめんなさい」
……う。
悲哀な表情でさみしそうに見つめるアルに罪悪感がズシッとのしかかってくるよ。
そして、一言一句間違えずに伝言を繰り返すなんて、根に持っていますか。
た、たしかにアルには何も断りなしにマクファーソン家から出ちゃったからね。
あんなに私の料理をおいしそうに食べてたのに、申し訳ないことしちゃったよ。セバスチャンさんには一応伝言頼んどいたんだけど、本人に直接伝えるべきだったよね。
「だから、ね。これは罰だよ」
「……え」
スッとなめらかな動作で私の片手を、アルにすくい取られた。そのまま、手の甲を彼の口元に寄せられて。
「!」
まるで、羽が舞い落ちてきたように、温かくやわらかい感触が手の甲にする。私の肌に、わずかに触れたのは間違いなく。
唇をそっと外して、アルは微笑んでみせた。
「これで許すよ。リオンだから、特別に」
「……」
これって、『ありがとう』ってお礼を言うところ? ……ううん、違うよね。
手の甲にキスされて、ありがとうなんて思えるはずがないよ!
そもそも、どうしてそんな行動に出ちゃったのアルは!? 会わなかった数週間で何が彼の中で起こったの!?
「っっざっけんな!! 何してやがるアルフォード!」
怒りをにじませた声が聞こえた。
グイッと強い力でアルにつかまってた手をとられて、そのまま引き寄せられる。
だ、誰……!?
乱暴なくらいの勢いで引かれて、私の頬に固い胸板があたる。視界の端に映ったのは、見慣れた紺碧色の髪。
「っ! ハ、ハーヴェイ、さん……!?」
「こいつに触んなっつうの!」
「ふふふ、旧知の友人に対してその物言いとは。ひどい人だね」
「うるさい! あんたと俺は単なる腐れ縁だろうが!」
私を背後から抱きかかえながら、ハーヴェイさんは威嚇して唸るように言い放った。
っというよりですね、あの、その、ち、近くないですか? ハーヴェイさん。
それに訓練中じゃなかったの?
……でも、訓練場の中央を確認しようとしても、しっかりハーヴェイさんに抱きこまれててそっちの方は見れない。
身体がハーヴェイさんの腕で拘束されてるから、横目ですぐ近くにある彼の顔を見てみると。
優しい印象をあたえるはずのタレ目が、怖いことになってる。
まさに、機嫌最悪って言わんばかりの彼の表情を、アルはニコニコと眺めてた。
……楽しそうだね、アル。
「それにしてもズルいよね。私のお気に入りのリオンをそんな風に独り占めする気かい?」
「『アルフォードの』じゃないだろ!」
「ルイスのものでもないよね? なら、構わないだろう?」
「んなわけないだろ!? 構うに決まってるからな!」
言い争いがヒートアップしてるけど、正直私はそれどころじゃないよ。
ハーヴェイさんと大接近してるせいで、混乱して頭の中が真っ白になっちゃってるから。
あの……庇ってくれてるのとかはわかるけど、そろそろ放してもらえないかな。緊張しちゃって会話の内容も聞き流しちゃうよ。
「君は口を挟む立場ではないはずだよ?」
「お、俺はクガの兄替わりとしてだな……!」
ハーヴェイさんの焦りが前面に出た返事に、目をすがめたアルが見える。アルの雰囲気がまるで勝機を見出したように強者のものに変化し、嘲るようにかすかに微笑んだ。
「ふぅん……『兄替わり』、ね。なら、余計に小言を言わないでくれないかな。私の感情はそんな半端なものじゃないから」
「は? は!? まさかアルフォード、あんた……」
ハーヴェイさんの抱きしめてくる力が強くなった。つかまれてる腕には、彼の指がくいこみそうなくらいだ。
あの……苦しいです、ハーヴェイさん。どうしてそんなに動揺してるんですか?
アルもアルで、何を言ってるの……?
「ふふ、口にするだけ野暮というものかな。それに、囁くに値しない場では告げる必要はないよ」
妖艶なしぐさで人差し指を薄く整った唇にそえてみせて、アルは目を細めた。
流し目でとらえられて、まるで縫いつけられちゃったみたいに身じろぎすらできなくなる。
クモの巣にかかってしまったら、こんな気分になるのかな?
「……ああ、そうだ。ねぇリオン、花祭りの日の予定は空いているかい? もしよかったら、私と巡ろう?」
「……え?」
「はぁ!?」
ただでさえ脳がショートを起こしかけてたのに、そこにさらに爆薬を仕掛けられた気分。
さっきの話題だけでも整理がついてないのに、アルってば何を言い出したの?
まるで自分の意見を『名案でしょ?』って言わんばかりに、満足そうにアルは笑ってる。
「そもそも私はね。君を誘うために、ここを訪ねたのさ」
それって……つまり私がここに来るって知ってたってこと?
どうやって知ったのか気になるけど、聞くと面倒そうな予感がする。深く考えないでおこうかな。
…………あれ? アルの今の発言って、そもそもだけどもしかして。
「デートってこと……?」
「!!?」
「そう、さすがリオン。察しが良いね」
半信半疑のまま聞いたのに、あっさり肯定されるなんて思わなかったよ。
……でも、女タラシ疑惑がある彼のことだから、言葉の選び方が間違ってたり冗談とかじゃないの?
私の思考を見透かしたみたいに、アルは華やかな笑顔を浮かべた。
「どうかな? 君の一日を私にくれる?」
「…………あの」
どうしよう。突然すぎて、わけがわからないのに。
だからって、ここで黙ってるのはよくないよね。
……でも、どう答えるべきなの?
「――待った!」
困って返事を迷っている私の耳に飛び込んできたのは、ハーヴェイさんの制止の声だった。
「ハーヴェイ、さん?」
近くの彼の横顔を見ると、眉間にしわをこれでもかってくらいつくって、しかめっ面をしてた。
苦しそうで、つらい思いをしてるような表情。
一体どうしたの?
「なんだい? せっかくの機会を潰さないでくれるかな?」
「……」
アルのため息交じりの呆れ声に、ハーヴェイさんは無言だった。
彼の腕の拘束が解かれて、やっと抱きしめられてる体勢じゃなくなった。かと思ったら、私の両肩がつかまれてクルリと反転させられる。
正面のすぐそばに立つハーヴェイさんは、ひどく真剣な表情をしてた。
タレ目気味の瞳を切なそうに細められて、私の心臓が元気よく飛び跳ねた。こんなに近いと、早くなった鼓動が聞かれそうで嫌なのに。
でも、落ち着けさせる方法なんてわからない。誰か知ってたら、今すぐに教えてほしいよ。
「こいつとデートするくらいなら、俺としてくれ」
「…………!?」
ハーヴェイさんまで何を言い出すの!?
まさか負けず嫌いでアルにつられて言い始めただけ?
「ふぅん、妨害とはね」
「何とでも言え。選ぶのはクガだろ」
「…………あ、あの」
アルはスッと目を細めた。威圧感のある逆らえない空気が彼から出てるのに、ハーヴェイさんはそれを鼻で笑い飛ばしてみせた。
二人は普通に会話をしてるけど、私は展開についていけてないよ。
その、つまり。アルとハーヴェイさんの両方に、デートに誘われてる、の?
……改めて考え直しても、理解できないよ!?
何がどうしてこんなことになっちゃったの!?
「クガ」「リオン」
「なぁ、どっちを選ぶんだ?」「ねぇ、どちらを選ぶのかな?」
「……」
同時に投げかけられた問いに、言葉が詰まった。
このまま、返事をしないで逃げるっていうのは……無理、なのかな。
私の答えをジッと見守って待つ二人にうながされて、怖々と唇を動かした。
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