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番外編 山奥の家で風呂を作る
今日、カラウ伯父さんとお母さん、オルの幼馴染み達が山の家に来ていた。
前から言ってた井戸掘りとお風呂作りの手伝いに来てくれたんだ。
いずれお母さんに帰ってきてもらうために、お風呂も色々考えた。
オルと伯父さんは家の前にドラム缶みたいのを置くつもりだったけど、出来るなら脱衣場とトイレも作りたいと提案してみたんだ。
山で周りには人目もないけど、お母さんは女性だからな。
オルはすぐに同意してくれた。
「シンが見られなくていい」
俺の裸はどうでもいいんだって。
相談の結果、家の前の空いた場所に井戸と脱衣場付きの風呂小屋を建てることになった。
イメージは屋根付きの露天風呂だ。
風呂小屋には、浄化装置の魔道具を使ったトイレも設置する。
はずだった。
ところが、ここで問題が起きた。
村の技師に検査してもらったら、家の前からは水が出ないと言われたんだ。
オルの幼馴染み達は「なんで掘れないんだ?」とツルハシ片手に首を傾げている。
人力で掘るのか、オニ族恐るべし。
というか。
こういうのは前もって調べるんじゃないの?
でも、技師も慣れた様子だから、村ではいつものことなのかもしれない。
「あの、他に水が出そうなとこは?」
「んー、この辺りは厳しいなぁ。川から水を汲むか湧き水しかないかなぁ」
詳しくは分からないが、水脈がどうの地質がどうの言っていた気がする。
「そういえば。裏山に湧き水があったわ」
お母さんの一言で、その場所まで行ってみることになった。
目の前には険しい山がある。
確かに木々が生い茂って、清らかな水もありそうだ。
「病気する前はよくここで汲んでたの」
「俺、登れないと思います」
やっぱりお母さんもオニ族だった。
よくこの急斜面を水担いで降りてこれたな。
俺が登れないというや、後ろでオルの幼馴染み達がざわつき始めた。
「登れないって言ってるぞ」
「なんでだ? 子どもの遊び場くらいだぞ?」
この人達が異常、俺はひ弱じゃない。
口の中で唱える。
「じゃあ、ここから水を引くというのは?」
「水を引く?」
「詳しくは知らないんですが」
山の湧き水を家まで引いて生活用水にしているのを、何かで見た気がする。
飲み水には濾過装置か何かで適用してたのかな。
そもそも川の水で一度も不調になったことはないから、ここの水は飲み水に適してるんだろう。
「面白い発想だねぇ」
村でも水を引いている家はなかった。
遠くへ水汲みに行くことも、井戸掘りも、彼らには全く苦にならないからだ。
俺からどういったものか聞き出した技師が、何かを書き出した。
技師になるだけあって、細かな作業が好きで色々作るのが得意なんだそうだ。
オニ族には珍しいタイプだな。
「手持ちの道具でなんとかなりそうだよ。材料はここらのポンチチでいける」
「ポンチチ?」
なんだ、その浮かれた名前。
オルが技師に指示された木を切ってきた。
縦に割ると、中が空洞だった。
竹みたいなものか。竹よりももっとずっと大きくて太いけど。
「これで水を通す。このまま土に埋めたほうがいいなぁ、獣もいるし。朽ちないように加工して……」
ブツブツ言い始めたと思ったら。
「とりあえず、オル達は家まで穴を掘ってよ」
「どれぐらい?」
「この木を埋める分。家の前まででいいから」
なんか適当に指示し始めたぞ。
暇を持て余してたカラウ伯父さんや幼馴染み達は、ツルハシを手に喜々として穴を掘り始めた。
けど。
みんな、てんでに掘り始めた!
しかも、ものすごいスピードであちこちに深い穴が開いていく。
「ちょっ、ちょっと待ってください!」
穴を掘る轟音に負けないように、俺は精一杯の声を張り上げた。
喉が痛かった。
結局、水源を確認してから道順を決め、穴の深さを指定して掘ってもらうことになった。
ポンチチの木を切り出す人、運ぶ人、穴を掘る人に分けて作業に取り掛かってもらう。
俺は、魔道具を使って木の加工をする技師の手伝いをしている。
「オルの嫁さんは手際がいいねぇ」
「そうですか? 手が細かい作業に向いてるだけですよ」
「違うよ、仕切りがうまいって褒めてるんだよ」
技師が笑っていう。
褒めていただいてなんですが。
これ、普通です、とは言えなかった。
夕方、家の前まで引かれたポンチチから水が溢れたときは、みんなが歓声を上げていた。
オルも顔を輝かせてたし、俺も手伝っただけに喜びも格別だった。
前から言ってた井戸掘りとお風呂作りの手伝いに来てくれたんだ。
いずれお母さんに帰ってきてもらうために、お風呂も色々考えた。
オルと伯父さんは家の前にドラム缶みたいのを置くつもりだったけど、出来るなら脱衣場とトイレも作りたいと提案してみたんだ。
山で周りには人目もないけど、お母さんは女性だからな。
オルはすぐに同意してくれた。
「シンが見られなくていい」
俺の裸はどうでもいいんだって。
相談の結果、家の前の空いた場所に井戸と脱衣場付きの風呂小屋を建てることになった。
イメージは屋根付きの露天風呂だ。
風呂小屋には、浄化装置の魔道具を使ったトイレも設置する。
はずだった。
ところが、ここで問題が起きた。
村の技師に検査してもらったら、家の前からは水が出ないと言われたんだ。
オルの幼馴染み達は「なんで掘れないんだ?」とツルハシ片手に首を傾げている。
人力で掘るのか、オニ族恐るべし。
というか。
こういうのは前もって調べるんじゃないの?
でも、技師も慣れた様子だから、村ではいつものことなのかもしれない。
「あの、他に水が出そうなとこは?」
「んー、この辺りは厳しいなぁ。川から水を汲むか湧き水しかないかなぁ」
詳しくは分からないが、水脈がどうの地質がどうの言っていた気がする。
「そういえば。裏山に湧き水があったわ」
お母さんの一言で、その場所まで行ってみることになった。
目の前には険しい山がある。
確かに木々が生い茂って、清らかな水もありそうだ。
「病気する前はよくここで汲んでたの」
「俺、登れないと思います」
やっぱりお母さんもオニ族だった。
よくこの急斜面を水担いで降りてこれたな。
俺が登れないというや、後ろでオルの幼馴染み達がざわつき始めた。
「登れないって言ってるぞ」
「なんでだ? 子どもの遊び場くらいだぞ?」
この人達が異常、俺はひ弱じゃない。
口の中で唱える。
「じゃあ、ここから水を引くというのは?」
「水を引く?」
「詳しくは知らないんですが」
山の湧き水を家まで引いて生活用水にしているのを、何かで見た気がする。
飲み水には濾過装置か何かで適用してたのかな。
そもそも川の水で一度も不調になったことはないから、ここの水は飲み水に適してるんだろう。
「面白い発想だねぇ」
村でも水を引いている家はなかった。
遠くへ水汲みに行くことも、井戸掘りも、彼らには全く苦にならないからだ。
俺からどういったものか聞き出した技師が、何かを書き出した。
技師になるだけあって、細かな作業が好きで色々作るのが得意なんだそうだ。
オニ族には珍しいタイプだな。
「手持ちの道具でなんとかなりそうだよ。材料はここらのポンチチでいける」
「ポンチチ?」
なんだ、その浮かれた名前。
オルが技師に指示された木を切ってきた。
縦に割ると、中が空洞だった。
竹みたいなものか。竹よりももっとずっと大きくて太いけど。
「これで水を通す。このまま土に埋めたほうがいいなぁ、獣もいるし。朽ちないように加工して……」
ブツブツ言い始めたと思ったら。
「とりあえず、オル達は家まで穴を掘ってよ」
「どれぐらい?」
「この木を埋める分。家の前まででいいから」
なんか適当に指示し始めたぞ。
暇を持て余してたカラウ伯父さんや幼馴染み達は、ツルハシを手に喜々として穴を掘り始めた。
けど。
みんな、てんでに掘り始めた!
しかも、ものすごいスピードであちこちに深い穴が開いていく。
「ちょっ、ちょっと待ってください!」
穴を掘る轟音に負けないように、俺は精一杯の声を張り上げた。
喉が痛かった。
結局、水源を確認してから道順を決め、穴の深さを指定して掘ってもらうことになった。
ポンチチの木を切り出す人、運ぶ人、穴を掘る人に分けて作業に取り掛かってもらう。
俺は、魔道具を使って木の加工をする技師の手伝いをしている。
「オルの嫁さんは手際がいいねぇ」
「そうですか? 手が細かい作業に向いてるだけですよ」
「違うよ、仕切りがうまいって褒めてるんだよ」
技師が笑っていう。
褒めていただいてなんですが。
これ、普通です、とは言えなかった。
夕方、家の前まで引かれたポンチチから水が溢れたときは、みんなが歓声を上げていた。
オルも顔を輝かせてたし、俺も手伝っただけに喜びも格別だった。
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