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13 渡り人?2
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「はぁぁぁ」
買い出しから帰ってきて、数日が過ぎていた。
なのに、あれ以来、どうも頭から例の美人が離れない。
多分、俺と同じ渡り人で日本人だという気がした。
顔は女の子にしか見えなかったけど、多分男の子だ。体つきがそうだった。
「でっかい溜息だな」
ヨーランは俺がお土産に買ってきたかりんとうもどきにハマったらしく、あれ以来、用もないのに俺の近くに寄って来る。
もうないって言っても出てくると思ってるんだろうか。
懐かない猫の餌付けに成功してしまったような気分だ。
「この前、助けた子が気になってんだろ。なんで名前と住まい、聞かなかったんだよ」
俺があ然としてる内に、我に返ったあちらが礼を言って去ってしまったんだ。
彼は、俺が渡り人だとは思わなかったんだろうか。
それとも、高藤様のお母様みたく渡り人とのハーフか外国人だったのかな。
「ぽめ太らしくねぇな!」
ベッドに転がっていたヨーランが起き上がって、俺の背中をバンッと叩く。
「一目惚れだろ? 認めちまえよ!」
はぁ?! 一目惚れ?!
「ぽめ太、オーナーがお呼びだ」
忙しいはずのハザナさんが、わざわざ俺の部屋まで呼びに来た。
体が鈍るので床で腹筋していた俺を見て、怪訝そうな顔を見せる。
そうだよね、基本、筋肉質な陰間って見かけないもんね。
ここでの陰間はみんな突っ込まれる専門だから。
もっと他に磨く場所あるだろって顔してる!
大体オーナーに呼び出されるときはお小言だ。ビビる俺に、ハザナさんが笑って「大丈夫だ」と言った。
「この前、お前が助けた人がいたろ? あの話だ」
オーナーの仕事部屋は、建物の一番奥まったところにある。
その奥の続き部屋がオーナーの寝室になっていて、俺がこの世界に初めて来たとき寝ていた部屋だ。
けど、最近はお小言かお仕置きで呼ばれる部屋になっていて、入るのに躊躇する。
広い廊下の突き当りで、声を掛けてから扉を開けた。
廊下も壁も古民家風の古びた板張りなのに、部屋は畳じゃないんだよね。
俺たち陰間の雑魚寝部屋も仕事部屋もフローリングでベッドだし。まぁ、ベッドは有り難いけど。
開けると、誰かがぱっと立ち上がる気配がした。
「え!?」
ソファに座ってたのは、この前、俺が助けたあの美人だった。
俺の驚きように、向かいのソファに腰を下ろしていたオーナーが呆れた声を出す。
「ハザナから聞いてないのか」
「助けた人の話って……だから、オーナーが事情聴取するのかと」
また何か言われるのかぁって、びくびくしてたんだ。
「人聞き悪いな、怒られるようなことばっかするお前が悪いんだろうがよ」
くすくすと。
俺とオーナーの間で小さな笑い声が聞こえた。
見るとあの美人が笑って「ごめんなさい」って言ってたので、顔が赤くなる。
さらさらの黒髪が肩まで伸びてて、俺よりも小さくて華奢で、笑った顔なんて本当に女の子みたいに綺麗だった。
あれ、俺の勘違い? 女の子だった?
うっとり見惚れてたら、オーナーの咳払いがした。
「まあ、座れ」
俺が不躾に見つめすぎたせいで、その人は顔を赤らめて俯いていた。
「ありがとうございました。もっと早く来るべきだったのに」
その人は、小野灯と名乗った。それから「よく間違われるんですが、男です」って付け加えた。
「僕、渡り人です」
灯さんていう人のカミングアウトに、俺は思わず声を上げてしまった。
「俺もです、日本人ですよね?」
答えてしまってから、ハッとオーナーの顔を見た。
そういえば、俺が渡り人ってのは内緒なんだった。
でも、俺が灯さんに感じたように、黙っていたとしても灯さんにはバレる気がする。
それを知ってるのか、オーナーは仏頂面のままだった。言ってしまったものは仕方ないって感じかな。
それよりも。
なんか、すごくすごく嬉しい。
やっぱり、寂しかったんだ。ここで良くしてもらったし仲良いヤツも出来たけど、俺、寂しかったんだよ。
なんと、年を聞いたら俺より一つ年上だった。
童顔なんですってはにかむ顔も女の子にしか見えない。可愛い。
「でも、よく俺がここにいるって分かりましたね?」
「あ、あの、探したんです。一緒にいた方がここのお店の方だと分かって良かったです」
動揺してろくにお礼も言わなかったから、お世話になっている方に叱られたと灯さんは申し訳なさそうに伝えてきた。
買い出しから帰ってきて、数日が過ぎていた。
なのに、あれ以来、どうも頭から例の美人が離れない。
多分、俺と同じ渡り人で日本人だという気がした。
顔は女の子にしか見えなかったけど、多分男の子だ。体つきがそうだった。
「でっかい溜息だな」
ヨーランは俺がお土産に買ってきたかりんとうもどきにハマったらしく、あれ以来、用もないのに俺の近くに寄って来る。
もうないって言っても出てくると思ってるんだろうか。
懐かない猫の餌付けに成功してしまったような気分だ。
「この前、助けた子が気になってんだろ。なんで名前と住まい、聞かなかったんだよ」
俺があ然としてる内に、我に返ったあちらが礼を言って去ってしまったんだ。
彼は、俺が渡り人だとは思わなかったんだろうか。
それとも、高藤様のお母様みたく渡り人とのハーフか外国人だったのかな。
「ぽめ太らしくねぇな!」
ベッドに転がっていたヨーランが起き上がって、俺の背中をバンッと叩く。
「一目惚れだろ? 認めちまえよ!」
はぁ?! 一目惚れ?!
「ぽめ太、オーナーがお呼びだ」
忙しいはずのハザナさんが、わざわざ俺の部屋まで呼びに来た。
体が鈍るので床で腹筋していた俺を見て、怪訝そうな顔を見せる。
そうだよね、基本、筋肉質な陰間って見かけないもんね。
ここでの陰間はみんな突っ込まれる専門だから。
もっと他に磨く場所あるだろって顔してる!
大体オーナーに呼び出されるときはお小言だ。ビビる俺に、ハザナさんが笑って「大丈夫だ」と言った。
「この前、お前が助けた人がいたろ? あの話だ」
オーナーの仕事部屋は、建物の一番奥まったところにある。
その奥の続き部屋がオーナーの寝室になっていて、俺がこの世界に初めて来たとき寝ていた部屋だ。
けど、最近はお小言かお仕置きで呼ばれる部屋になっていて、入るのに躊躇する。
広い廊下の突き当りで、声を掛けてから扉を開けた。
廊下も壁も古民家風の古びた板張りなのに、部屋は畳じゃないんだよね。
俺たち陰間の雑魚寝部屋も仕事部屋もフローリングでベッドだし。まぁ、ベッドは有り難いけど。
開けると、誰かがぱっと立ち上がる気配がした。
「え!?」
ソファに座ってたのは、この前、俺が助けたあの美人だった。
俺の驚きように、向かいのソファに腰を下ろしていたオーナーが呆れた声を出す。
「ハザナから聞いてないのか」
「助けた人の話って……だから、オーナーが事情聴取するのかと」
また何か言われるのかぁって、びくびくしてたんだ。
「人聞き悪いな、怒られるようなことばっかするお前が悪いんだろうがよ」
くすくすと。
俺とオーナーの間で小さな笑い声が聞こえた。
見るとあの美人が笑って「ごめんなさい」って言ってたので、顔が赤くなる。
さらさらの黒髪が肩まで伸びてて、俺よりも小さくて華奢で、笑った顔なんて本当に女の子みたいに綺麗だった。
あれ、俺の勘違い? 女の子だった?
うっとり見惚れてたら、オーナーの咳払いがした。
「まあ、座れ」
俺が不躾に見つめすぎたせいで、その人は顔を赤らめて俯いていた。
「ありがとうございました。もっと早く来るべきだったのに」
その人は、小野灯と名乗った。それから「よく間違われるんですが、男です」って付け加えた。
「僕、渡り人です」
灯さんていう人のカミングアウトに、俺は思わず声を上げてしまった。
「俺もです、日本人ですよね?」
答えてしまってから、ハッとオーナーの顔を見た。
そういえば、俺が渡り人ってのは内緒なんだった。
でも、俺が灯さんに感じたように、黙っていたとしても灯さんにはバレる気がする。
それを知ってるのか、オーナーは仏頂面のままだった。言ってしまったものは仕方ないって感じかな。
それよりも。
なんか、すごくすごく嬉しい。
やっぱり、寂しかったんだ。ここで良くしてもらったし仲良いヤツも出来たけど、俺、寂しかったんだよ。
なんと、年を聞いたら俺より一つ年上だった。
童顔なんですってはにかむ顔も女の子にしか見えない。可愛い。
「でも、よく俺がここにいるって分かりましたね?」
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