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24 変わり過ぎ
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「俺、死んだ?」
目が覚めたときの、俺の第一声はこれだったらしい。
俺は一週間も意識不明だった。
目覚めたのは病院のベッドで、側にいたイシュレイとヨーランの叫び声がぼんやりした頭に響いたのを覚えている。
俺は知らなかったけど、この街にも大きな総合病院っていうのがあって、検査魔道具も揃ってて手術もできるらしい。
俺はそこで頭と肩の縫合を受けた。
ただ、相当お高いので、意識が戻ればあとは街の薬師が調合した薬で治すんだって。
とうとうオーナーに借金を作ってしまった。
帯が擦れたのか手の平もズタズタで、肋骨も折れてた。
殴られた頭と肩の刺し傷が一番酷く、でも、脳に異常はなかった。医師から頑丈な頭で良かったと言われたそうだ。
意識の戻りが遅かったのは、血が流れすぎて貧血になったせいらしい。
ホントに満身創痍ってやつだ。
でも、頭と肩は豪商のせいだけど、あとは俺のせいだから、自業自得とも言われてしまったんだ。
「なんでお前は救助を待たなかった? 二階の窓から抜け出す? どうして、そう考えが浅いんだ、いつもいつも……」
退院してから、ハザナさんのお小言が耳に痛い。
そう言いながらも、俺の好きなりんごっぽい果物を、俺が教えたうさちゃんの形にして剥いてくれるからにやにやが止まらない。
「探してくれてたの?」
「当たり前だ! お前が出てったあと、オーナーがどんなだったか教えてやろうか!」
へ? オーナー?
うさちゃんりんごを口に入れかけて、ついキョトンとなる。
「終始無言で、機嫌が悪いわピリピリしてるわ。怖いなんてもんじゃない。リロイ様がいらっしゃらなければ、どうなってたか」
「へぇ、どうなってたって?」
ハザナさんが口を噤んだ。
開けた扉に寄り掛かるように、オーナーが腕を組んで立っていた。
退院してからというもの、何故か俺はオーナーの部屋で寝泊まりしている。
オーナーのベッドはふかふか過ぎて、「折れた肋骨が痛いから」と丁重に断ったら、すぐさま固めのベッドが用意された。
いや、雑魚寝部屋に戻してって意味だったのに。
煎じ薬も苦くてまずくて、毎回うぇってなるから「怪我がさっと治るポーションがあればいいのに」って呟いたら、オーナーが真剣な顔で薬師に開発させようとしてた。
ちなみに、この世界に万能ポーションなんてものはない。
オーナーの変わりようが怖い。
ビクビク去っていったハザナさんを見送ると、オーナーがハザナさんが座ってたベッド脇の椅子に腰を下ろした。
手には仕事の書類なんか持ってる。
そう。
オーナーはいつも俺の側にいるんだ。
忙しそうに人を呼んで指示してるから、自分の仕事部屋に行けばいいのに。
「どうした、痛み止め飲むか?」
「え? なんで?」
「変な顔してた。傷が痛むんだろ」
失礼な! 変な顔は生まれつき!
オーナーが注いでくれた果実水のコップをサイドテーブルに置こうとしたら、すぐにコップを受け取って、なんなら俺の布団も直してくれた。
くすぐったくて慣れない。
盛大に怒られる前触れか、それとも……。
「俺、もしかして余命宣告受けてる?」
「は?」
「なんか優しすぎて、気持ち悪い」
オーナーが顔をしかめて、大きくため息をついた。
あ、いつものオーナーの顔でホッとする。
「お前、俺のこと好きなんだろ?」
「え?!」
「なんだ、違うのか」
ちが、違わないけど!
なんで知ってるの?!
口をパクパク開けて、でも言葉が出てこない。
誰だ、バラしたの?
「お前が言ったんだろ、気を失う前に。なんだ、覚えてないのか」
鏡を見てないけど、俺の顔は真っ赤のはずだ。顔がめっちゃ熱いから。
しかも、オーナーの顔が近寄ってくる。近い近い、ちょっと離れて。
押し返したいのに手の平が痛い。
逃げたいのに、体が動かせない。
「お前はアカリが好きだと思ってたからな」
え?
強く閉じてた目を開けると、オーナーの目が目の前にあった。
狼狽える不細工な俺が映ってる。
そのまま、チュッとオーナーが俺の唇に音を立てた。
「子どもじゃなかったしなぁ」
我慢する必要もなかったわけだ。
オーナーの呟きは、俺の口の中に消えていった。
ゴンッ、と。
俺がオーナーに口の中を貪られてるとき、扉の近くで何かが落ちた音がした。
「ご、ごめんっ!」
灯さんの声がして、続いて「扉開けっ放し」って呆れ顔のリロイ様が見えた。
俺は思いっきりオーナーを引き剥がし、肩と肋骨の激痛に呻いた。
目が覚めたときの、俺の第一声はこれだったらしい。
俺は一週間も意識不明だった。
目覚めたのは病院のベッドで、側にいたイシュレイとヨーランの叫び声がぼんやりした頭に響いたのを覚えている。
俺は知らなかったけど、この街にも大きな総合病院っていうのがあって、検査魔道具も揃ってて手術もできるらしい。
俺はそこで頭と肩の縫合を受けた。
ただ、相当お高いので、意識が戻ればあとは街の薬師が調合した薬で治すんだって。
とうとうオーナーに借金を作ってしまった。
帯が擦れたのか手の平もズタズタで、肋骨も折れてた。
殴られた頭と肩の刺し傷が一番酷く、でも、脳に異常はなかった。医師から頑丈な頭で良かったと言われたそうだ。
意識の戻りが遅かったのは、血が流れすぎて貧血になったせいらしい。
ホントに満身創痍ってやつだ。
でも、頭と肩は豪商のせいだけど、あとは俺のせいだから、自業自得とも言われてしまったんだ。
「なんでお前は救助を待たなかった? 二階の窓から抜け出す? どうして、そう考えが浅いんだ、いつもいつも……」
退院してから、ハザナさんのお小言が耳に痛い。
そう言いながらも、俺の好きなりんごっぽい果物を、俺が教えたうさちゃんの形にして剥いてくれるからにやにやが止まらない。
「探してくれてたの?」
「当たり前だ! お前が出てったあと、オーナーがどんなだったか教えてやろうか!」
へ? オーナー?
うさちゃんりんごを口に入れかけて、ついキョトンとなる。
「終始無言で、機嫌が悪いわピリピリしてるわ。怖いなんてもんじゃない。リロイ様がいらっしゃらなければ、どうなってたか」
「へぇ、どうなってたって?」
ハザナさんが口を噤んだ。
開けた扉に寄り掛かるように、オーナーが腕を組んで立っていた。
退院してからというもの、何故か俺はオーナーの部屋で寝泊まりしている。
オーナーのベッドはふかふか過ぎて、「折れた肋骨が痛いから」と丁重に断ったら、すぐさま固めのベッドが用意された。
いや、雑魚寝部屋に戻してって意味だったのに。
煎じ薬も苦くてまずくて、毎回うぇってなるから「怪我がさっと治るポーションがあればいいのに」って呟いたら、オーナーが真剣な顔で薬師に開発させようとしてた。
ちなみに、この世界に万能ポーションなんてものはない。
オーナーの変わりようが怖い。
ビクビク去っていったハザナさんを見送ると、オーナーがハザナさんが座ってたベッド脇の椅子に腰を下ろした。
手には仕事の書類なんか持ってる。
そう。
オーナーはいつも俺の側にいるんだ。
忙しそうに人を呼んで指示してるから、自分の仕事部屋に行けばいいのに。
「どうした、痛み止め飲むか?」
「え? なんで?」
「変な顔してた。傷が痛むんだろ」
失礼な! 変な顔は生まれつき!
オーナーが注いでくれた果実水のコップをサイドテーブルに置こうとしたら、すぐにコップを受け取って、なんなら俺の布団も直してくれた。
くすぐったくて慣れない。
盛大に怒られる前触れか、それとも……。
「俺、もしかして余命宣告受けてる?」
「は?」
「なんか優しすぎて、気持ち悪い」
オーナーが顔をしかめて、大きくため息をついた。
あ、いつものオーナーの顔でホッとする。
「お前、俺のこと好きなんだろ?」
「え?!」
「なんだ、違うのか」
ちが、違わないけど!
なんで知ってるの?!
口をパクパク開けて、でも言葉が出てこない。
誰だ、バラしたの?
「お前が言ったんだろ、気を失う前に。なんだ、覚えてないのか」
鏡を見てないけど、俺の顔は真っ赤のはずだ。顔がめっちゃ熱いから。
しかも、オーナーの顔が近寄ってくる。近い近い、ちょっと離れて。
押し返したいのに手の平が痛い。
逃げたいのに、体が動かせない。
「お前はアカリが好きだと思ってたからな」
え?
強く閉じてた目を開けると、オーナーの目が目の前にあった。
狼狽える不細工な俺が映ってる。
そのまま、チュッとオーナーが俺の唇に音を立てた。
「子どもじゃなかったしなぁ」
我慢する必要もなかったわけだ。
オーナーの呟きは、俺の口の中に消えていった。
ゴンッ、と。
俺がオーナーに口の中を貪られてるとき、扉の近くで何かが落ちた音がした。
「ご、ごめんっ!」
灯さんの声がして、続いて「扉開けっ放し」って呆れ顔のリロイ様が見えた。
俺は思いっきりオーナーを引き剥がし、肩と肋骨の激痛に呻いた。
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