満月の夜の幻想

藤堂樹里

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旅立ちの朝

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 紅葉は、育ってきた家を見つめた。そして、少し笑い
「ばあ様、じい様、行ってまいります。私はばあ様、じい様と一緒に暮らせてとても幸せでした。」
と言い、家を出ていった。
「バイバイ。」
 紅葉は最後に家を見つめ 、振り返った。そこには、紅葉の見送りに何人かの人が来ていた。
「みんな...こんな朝早くに来なくても...」
 紅葉の視界がどんどんとぼやけていった。
「紅葉ぁぁぁ!」
 琴海が紅葉に抱きついた。紅葉も琴海に抱きついた。
「ちゃんと帰ってきてよぉ...ずっと待ってるからね。」
「もちろんだよ。私を誰だと思っているの?」
「そうだね。じゃあ、行ってらっしゃい!」
 琴海が紅葉を離した。紅葉はうなずき、
「みんな。行ってきます!」
と笑顔で言って道を進んでいった。
 そして、紅葉の住んでいた柴亜露村(しあろむら)を出る門を通ろうとした時だった。
「紅葉。」
 聞きなれた少し低めの聞き心地の良い声が聞こえた。
「朱道!」
 紅葉は嬉しそうな声をあげた。
「ねえ、私...みんなの前では強がって見せたけど実際は怖い!すごく怖いの。でも、行かないといけない。この手紙を見て。」
 紅葉は一通の手紙を朱道に差し出した。
「これは、私の母である魅影からの手紙なの。母は生きているはず。王の関係する場所で。ばあ様達を殺したのも王宮の人。関係がないとは思えない。」
「そうか。紅葉も殺されかれないということか。」
「そう。」
「最後に暁暝の手合わせをしないか?」
 朱道は羽織を脱ぎ捨てて武道着姿となった。
「もちろん。」 
 紅葉も旅のためのマントを脱いだ。
「じゃあ、公式戦と同じように方が地面についたら負け。いざ、勝負開始!」
 朱道は叫ぶと同時に紅葉を蹴りあげた。初めてのパターンの攻撃に紅葉は戸惑った。
「うわっ!今のはずるい。」
「読めなかったの初めてだろ?」
 朱道はニヤッと笑いかけた。そして、そのまま紅葉の肩を押した。
「ほんと、力だけはあるんだね。」
 紅葉は、よろけた体の態勢を素早く直し、朱道を蹴り飛ばした。そして、朱道は倒れた。
「私に勝つなんて百年早い。
 もっとスピードと判断を速くしてから出直してきて。」
 紅葉は、朱道に手を差し伸ばした。朱道は立ち上がり紅葉を見つめた。
「絶対に生きてろよ。」
「当たり前でしょ。
 じゃあまたいつかね。」
 紅葉がそのまま歩こうとした。すると、朱道は
「ちょっと待て。」
と言い、紅葉を引き止めた。
「馬を二匹連れていけ。」
 朱道はそう言い、紅葉に馬の手網を渡した。その先には二匹の馬がいた。
「わぁ、カワイイ子だね。」
 紅葉は馬に抱きついた。
「オヤジが紅葉に渡せって言ってたんだ。紅葉がかわいがってたやつの息子たちだ。」
「そうなんだ。ありがとう!」
 紅葉は馬に乗り、そのまま進んでいった。そして、紅葉は朱道が、朱道は紅葉が見えるまで手を振り続けた。
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