乙女ゲームの「当て馬」にされたので、すべてぶち壊してハーレムを目指します

大沢 雅紀

文字の大きさ
31 / 32

虚しい勝利

しおりを挟む
ヘリックとエロスの戦いは続いていく。
(なんでこいつこんなにボロボロになっているんだ?最初に一撃以降、充分に手加減しているはずなんだが)
ヘリックは疑問に思う。最初の一撃以降、充分に手加減しているはずだが、軽く棍棒で小突いただけでエロスは大げさにふっとんだり、まとっている着ぐるみがボロボロになって痛々しい姿になっていった。
それにつれて、女子たちの悲鳴が高まっていく。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!ひどい!」
「もうやめて!あなたは勇敢にたたかったわ!」
そんな声が上がるたびに、エロスはますます嬉しそうな顔になって立ち上がるのだった。
「くっ。ごほっゴホッ!……僕は負けられないんだ。貴族としての誇りを示すために!」
芝居かがったしぐさでせき込むたびに、女子からの応援の声がかけられる。
「がんばれ!」
「正義は必ず勝つ!悪のヘリックなんかに負けるな!」
そんな声があがり、闘技場は異様な盛り上がりをせていた。
「ね、ねえ。なんか変じゃない?この雰囲気は」
「ええ。元はと言えば彼らが勝手に勝負を挑んできたのに、いつの間にかヘリックの方が悪者になってます」
アテナイとエウロスも、会場を漂うアウェイ感に居心地が悪くなる。
「これじゃ、ヘリックが勝っても、ただの弱いものいじめになっちゃうよ。なんとかしないと!」
焦って会場を見渡したアテナイは、闘技場に注がれる第三者の魔力を感じ取ることができた。
「エウロス!この魔力は?」
「ええ、私も感じました。水の幻影魔法です」
魔力の元をたどっていくと、一人の男子生徒に行きつく。めそのメガネをかけた青い髪の生徒は、ひそかに杖を掲げて呪文を唱えていた。
「××××」
その生徒、セイレーン・マーキュリーが魔法を使うたびに、エロスは痛々しい姿になって生徒たちの同情を誘っていく。
「ヘリック、あいつを見て!」
アテナイの言葉で、ヘリックも気が付いた。
(もしかして、勝つことが目的じゃないのか?奴らは俺に弱者をいたぶる悪人のイメージをかぶせるのが目的で)
はっとなって棍棒をこいた瞬間、エロスはニヤッと笑って倒れる。
「くっ……悔しい。僕ではどうやってもかなわないのか。うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
そうつぶやくと、闘技場の上でうつぶせになって泣きわめき始めた。
「……かわいそう。あんなに頑張ったのに……」
「わかるぞ。悔しいよな。あんな平民なんかにいいようにいたぶられて」
女子生徒はその様子を見てもらい泣きし、同情する。
そんな雰囲気をみて、アポロ王太子はエロスに近づいて肩をたたいて慰める。
「もういい。君は頑張った」
「アポロ王子……俺は貴族の誇りをしめすことができたでしょうか?」
涙にぬれた目で、エロスは王子を見上げる。
「ああ。君は精一杯戦った。この場にいる者の中で、誰一人君をバカにするものはいないだろう」
アポロがそう宣言すると同時に、生徒たちの中からエスメラルダが立ち上がって、エロスを優しく抱きしめた。
「そうよ。あなたは勇敢に戦った。友達として誇りにおもうわ」
「エスメラルダさん……」
感動的に抱き合う二人に対して、生徒たちからは盛大な拍手が沸き起こった。
「そうだ!お前は頑張ったぞ!」
「あなたは負けてないわ!」
まるで勝者であるかのように賞賛を浴びるエロス。ヘリックはこの三文芝居に付き合う気になれず、ただ白けた気分で立ち尽くしていた。
「それでは、この勝負はこれで終了とする」
アポロは勝手に終了宣言をして、エロスたちを連れて去って行ってしまう。
「……いったい何だったんだ?」
「たぶん、ヘリックに勝てないとみて、評判を落とすやり方に切り替えたのよ」
「これが貴族のやり方ですか……汚いですね、すっかりヘリックさんに弱い者いじめをする悪人のイメージがついてしまいました。これからの学園生活がおもいやられます」
ヘリックたち三人は、そういってため息をつくのだった。

入学時の決闘騒ぎ以降、ヘリックには悪いイメージがつきまとい、生徒たちからはほとんど無視されていた。
「あれがエロス様をいじめたヘリックよ」
「元馬小屋の下男らしく、乱暴者よね」
女子たちからはそうヒソヒソと噂され、誰も近寄ってこない。
「困ったな。こんなことじゃ誰が魔王になるのか見極めようにも、情報が集まってこないぞ」
困ったヘリックは、従者であるアテナイとエウロスに相談するが、彼女たちも難しい顔をしていた。
「私たちも、女子グループから浮いているんだよね」
「ヘリックの従者であるということで避けられているみたいです」
彼女たちもクラスに溶け込めず、悩んだ顔をしていた。
そんな時、一人の女子生徒たちが近寄ってくる。
「ヘリック君、エロス君に謝ってちょうだい」
そう言ってきたのは、白い髪をした小柄な少女だった。
「えっと……君は?」
「マーティン・ホビット。ホビット伯爵家の長女で、エロス君の許嫁だよ」
その少女は、プンスカと怒りながらヘリックに迫ってきた。
とりあえず部屋に招き入れて、話を聞く。
「君がやったことは、どう考えてもひどすぎるよ。か弱いエロス君をあんなに痛めつけて」
「……勝負を挑んできたのはあいつらだろう。俺は正々堂々と戦っただけだ」
「だからって……少しくらい手加減してくれてもいいじゃない。君とエロス君だと、体格が違い過ぎるでしょ」
そういって責めてくるマーティンに、ヘリックは話にならないと肩をすくめた。
その時アテナイとエウロスが口を挟む。
「ヘリックはちゃんと手加減していたよ。あいつがボロボロになったのは、幻影魔法で見せられた嘘の姿だよ」
「そうです。マーキュリーさんが水魔法を使うのを、私たちは確かに感じ取りました」
二人からそういわれても、マーティンは納得しなかった。
「うるさい!とにかく、エロス君に謝って仲直りしろ!」
駄々っ子のように謝れ謝れと繰り返すばかりで、ヘリックの言い分に身を貸そうとしなかった。
うんざりしたヘリックは、ため息をついて頷く。
「わかったわかった。とにかく誤ればいいんだな」
「そうだよ。そうすれば、エリック君も僕に感謝してくれて、また一緒に遊んでくれるようになるよ」
マーテインは、期待した目でそうつぶやくのだった。

エロスの部屋
「エスメラルダ……痛いよぉ」
「よしよし。エロス君頑張ってね。あんな野蛮人と勇敢に戦って。かっこよかったよ」
エスメラルダは、ベッドに座ってエロスを膝枕して慰めていた。
「ほら。あーん」
口元にお菓子を持っていくが、エロスはイヤイヤと首を振る。
「そんなのより、もっとおいしいものがほちぃなぁ」
「ふふ。もしかしてママのおっぱいがほしいの?」
エスメラルダは妖しく笑うと、見せつけるように胸元をひらく。
「うん。ほちいほちい」
「しかたなぃなあ。ほら、ちゅっちゅしましょうねぇ~」
エスメラルダが胸元を大きく開いたとき、いきなり部屋のドアがバーンと開いた、
「エロス君!ヘリックをつれてきたよ……え?」
二人を一目見ると同時に、入ってきたマーティンが固まる。
「な、なんだよ!勝手に入ってくるなよ」
赤ちゃんプレイを見られたエロスは、真っ赤な顔をして起き上がった。
「き、君たち、何しているんだよぁ」
「何しているって、決まっているでしょ。私のおっぱいでエロス君を癒してあげてるのよ」
エスメラルダは見せつけるように、胸をとりだしてエロスの顔を間に挟んだ。
「ほーら。ぱふぱふぱふ」
「ぱふぱふぱふ……」
胸に挟まれたエロスは、嬉しそうにうっとりしている。
「そ、そんな。うわぁぁぁぁぁぁぁん!」
それを見たマーティンは、泣きながら走り去ってしまった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした

茜カナコ
ファンタジー
魔法使いよりも錬金術士の方が少ない世界。 貴族は生まれつき魔力を持っていることが多いが錬金術を使えるものは、ほとんどいない。 母も魔力が弱く、父から「できそこないの妻」と馬鹿にされ、こき使われている。 バレット男爵家の三男として生まれた僕は、魔力がなく、家でおちこぼれとしてぞんざいに扱われている。 しかし、僕には錬金術の才能があることに気づき、この家を出ると決めた。

帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!

雪奈 水無月
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。 ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。 観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中… ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。 それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。 帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく… さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!

封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する

鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。 突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。 しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。 魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。 英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

処理中です...