エイリアンチートで新人類に進化した俺は、異星文明で現代地球を開拓して南朝復活をめざします

大沢 雅紀

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桐人の過去

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桐人の旧姓は田中といい、平凡な一家に生まれた。工場勤務の父と専業主婦の母の家庭で、貧しくはあるもの両親からの愛を一身に受けて育つ。
そんな家庭の歯車が狂ってきたのは、桐人の高校受験である。
「なんで弥勒学園を受けさせてくれないんだよ」
そう詰ってくる桐人に、父親は冷静に返す。
「よく考えてくれ。確かにあそこは名門高校で、卒業したらエリートコースに乗ることができる。だが、その分学費が高いんだ。普通の私立高校の二倍はある。しかも大学までエスカレーターだ。すべての学費を合わせたら、二千万にもなる。特待生にでも選ばれなければ、とてもじゃないが払えない」
金銭的な問題を諭す父親だったが、桐人は納得しなかった。
「そんなの、奨学金で借りればいいだけだろ」
「その奨学金は誰が返す?私たちには無理だ。一口で二千万円というが、いくらお前が将来出世したとしてもおいそれと返せる金ではないんだ」
「くっ」
桐人は唇をかんで悔しがるが、父親は引き下がろうとしなかった。
「もういいっ!自分の子供の将来より金が大事なのかよ!お前なんか親じゃねえ!」
そういってプイッと顔を背けて、二階の自分の部屋にもどる。両親はため息と共に彼の後姿を見送った。
進路のことで両親と喧嘩した日の夜、トイレにいくために一階に降りた桐人は、両親が深刻な顔で話し合うのを立ち聞きする。
「あなた。お父様に相談してみてはいかがかしら」
「南方家の当主である源人様か……」
母である詩織の提案に、父親は難しい顔をする。
「だが、果たして駆け落ちした我々を許してもらえるだろうか?」
「もう昔のことだし、桐人という息子もいるんだからきっと許してくれるわよ」
詩織はそう楽観的に考えているようだが、父親は厳しい顔をしたままである。
(どういうことなんだ?もしかして、母さんはあの有名な南方財閥のお嬢様だったのか)
中学生である自分ですら知っている大財閥の血を引いていると知り、桐人の胸が期待に膨らむ。
しかし、次の父親の言葉を聞いて絶望を感じた。
「いや。駄目だ。南方家にはすでに勇人という男子がいる。直系の男子を脅かす子の存在を、あの方が受け入れるはずはない」
「……そうね……」
詩織もため息をついて同意する。源人が男子長嗣にこだわるのは、南朝の高貴な血を守り通すことと家の序列を維持するためだったが、聞いている桐人にとっては理不尽なことに思えた。
「こんなことなら、駆け落ちなどしなければよかったかもな。どれだけ邪険にされても、認められるよう努力していれば、南方家の後継者にはなれなくても、親族として扱われ桐人にも苦労をかけずに済んだかもしれない」
そう後悔する父親を、詩織は優しく宥めた。
「あなた。私は駆け落ちしたことを悔いてはいないわ。あの古い柵だらけの家から逃れられたからこそ、家族三人だけで幸せにいきていけているのだから」
「そうだな」
そういって微笑みあう両親。
しかし、聞いていた桐人にとっては、腸が煮えくりり変えるほど理不尽なことだった。
(く、くそっ。なんで俺はこんな一般庶民の生活に甘んじないといけないんだ!母さんが南方家に残っていたら、俺が御曹司になっていたかもしれないのに)
桐人は自分に自信を持っていた。スポーツ万能で容姿端麗、人気者である自分は絶対に正当な御曹子にも負けないと思う。
(その勇人ってやつがどれだけの男かしらないが、俺が負けるわけがないんだ)
両親のせいで惨めな一般家庭暮らしをしないといけない。その理不尽さが身を灼き、心を苦しめた。
桐人は部屋に戻ると、ベッドに伏して泣き続ける。
いつしか桐人は、眠りに落ちていた。
「……うふふ。今の自分を変えたい??」
夢の中で、桐人は初めてみる美女に対面していた。
「お、お前は誰だ?」
「12使徒のひとり、『夢人類(ドリーマー)』のナイトメアよ。よろしくね」」
そう名乗った美女は、桐人にささやいた。
「もしあなたが望むなら、ふさわしい地位とお金を得るための力を授けるわ。その力で、南方家を乗っ取りなさい。報酬は後払いでいいわよ」
謎の美女は、そういって桐人を誘った。
「あはは……これはきっと夢だ。だけど、もしそんな力が手に入るなら、なんでもしてやる」
「そう。なら、その覚悟をみせてもらうわよ。契約の証として、あなたの父母の命をささげなさい」
美女の手から黒い稲妻が発せられ、桐人の頭に激痛と同時に何かの能力(プログラム)がインストールされていった。

「ぎゃぁぁぁぁぁ」
桐人の部屋から悲鳴が聞こえてきて、父親と詩織はハッとなる。
「今の叫び声はなんだ!」
慌てて二階に上がると、部屋の中で頭を押さえて唸っている桐人がいた。
「桐人、大丈夫か?何があったんだ?」
「こ、怖い夢を見て……」
桐人の顔から汗が吹き出し、美しい顔を濡らす。両親はそんな彼を抱きしめ、タオルで汗をぬぐった。
「もう大丈夫だぞ」
「そうよ」
抱き締めてくる両親に、桐人は聞いた。
「……母さん。どうして父さんと駆け落ちなんかしたの?お爺さんに頼めば、学費ぐらいいくらでも出してもらえたのに」
「そ、それは……」
自分のせいで息子の未来が閉ざされると責められて、詩織の心に罪悪感が沸き起こる。
「父さん。お爺さんと仲直りしてよ。元はといえば、駆け落ちなんかするから僕が困ることになるんじゃないか」
「……」
父親は自分の甲斐性のなさを責められ、胸が苦しくなった。
そんな二人の心に漬け込み、桐人はさらに続ける。
「僕が南方家に戻りさえすれば、もっと自分にの才能を生かせるんだ。僕は成績もいいし、スポーツも万能だ。皆にも好かれている。後継者としてどこに出しても恥ずかしくない人間だろう」
「……ああ、そうだな」
「そうよね。桐人が南方家を継ぐのにふさわしいわ」
二人はぼんやりとそう答えた。
「僕が南方家に戻るのに、一番確実な方法があるよ」
桐人は両親の愛情と同情心を煽り立てながら、耳元で甘くささやく。
「お爺さんの怒りを買った二人がいなくなればいいんだ」
そういうと、静かに二人から離れていった。
「そ、そうだな。私たちがいなくなれば……」
「お父さんはきっと桐人を助けてくれる」
そう呟くと、二人はふらふらと一階に戻っていくのだった。
次の日、警察に「両親が自殺している」という通報があり、警官が桐人の家に突入した。
中に入った警官が見たものは、首をつって死んでいる二人の男女の姿だった。
「こ、これは何が起こったんだ」
「わかりません。朝起きてきたら、両親が死んでいて……」
美しい顔をゆがめて泣きじゃくる桐人に、警察官は同情心をそそられる。
「ほ、ほら、泣くのはやめなさい。誰かご親族の方はいないか?私から事情を説明してあげよう」
それを聞いて、桐人はハンカチで顔を覆いながらニヤリと笑うのだった。

「ち、ちがう!こんなのは嘘だ!でたらめだ!」
両親の死の真相を暴かれた桐人は、真っ赤になって否定していた。
「つまり、婿と詩織はこやつに操られて自殺したということなのか」
桐人の記憶から作られた映像を見た源人は、激怒する。
「操られた……とまでは言えません。自分たちのせいで桐人の進学を邪魔しているという罪悪感、そして自らを犠牲にしてでも息子の生きる道を広げたいという親の愛情を極限まで増大させられたせいで、自ら命を立つという極端な選択をしたのでしょう」
勇人はそういいながらも、桐人を軽蔑した目で見ていた。
「そ、そうだ。俺は親に自殺しろなんて言ってない。勝手に死んだんだ……ぶっ!」
直も自分勝手に喚き続ける桐人を、勇人は殴りつける。
「そんなことはどうでもいい。お前は史郎たちに命じて、俺を殺そうとした。その落とし前をつけてもらうまでだ」
勇人が合図すると、屈強な執事たちが入ってくる。
「お、俺をどうするつもりだ!」
「お前には償いをしてもらう。連れていけ!」
勇人の命令により、桐人は縛り上げられて連れ去られてしまうのだった。
「あやつにどんな罰をあたえるのだ?ワシの手で八つ裂きにしてやりたいのだがな」
そういきり立つ源人を、勇人は冷静に宥める。
「人を切り刻んでも一円の儲けにもなりません。奴には役に立ってもらいましょう。鉱山のカナリアとして」
そういって勇人は黒い笑みを浮かべるのだった。
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