エイリアンチートで新人類に進化した俺は、異星文明で現代地球を開拓して南朝復活をめざします

大沢 雅紀

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怪盗義賊アルカード

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ピルの屋上を、飛び回っている黒い影がある。
「ちっ。こんな小さなブローチ一つしか取れなかったぜ」
黒い影―怪盗義賊アルカードは、盗みが失敗したことで悔しがっていた。
「しかし、特製スタンガンを首元に仕込んでいたとは。金持ちの坊っちゃんだとおもって、甘く見ていたか」
そう反省していると、目の前に白い影が現れる。
「今日こそは許さないよー。盗んだものを返して」
そう言って立ち塞がったのは、白い巫女服をきた美少女、魔法巫女ウズメだった。
「どけ!邪魔するんじゃねえ」
「いいかげんにしなよ。こんなこと続けていると、私たち亜人類がまた人間たちから迫害されるようになるよ。せっかく時代が代わって、平穏に暮らせるようになったのに!」
叱りつけられても、アルカードは恐れ入らない。
「へっ。人間が作った法律なんて糞くらえだぜ」
「……一回、本気でお仕置きしないとわからないみたいだね」
ウズメは祓い串を掲げて、身構える。
「上等だ!今日こそ決着をつけてやるぜ」
ビルの屋上で、二人は対峙するのだった。
「いくぜ!」
「返り討ちだよ!」
動き出そうとした瞬間、雷鳴がとどろき、二人の間に稲妻が落ちた。
「きゃっ⁉」
驚いた二人は、身をひるがえして距離をとる。落雷の中から、一人の少年が姿を現した。
「な、なんだ!ターミ〇ーターか?」
「勇人?」
驚いて立ち尽くす二人の間に、その少年は割り込んだ。
「二人とも、争いはやめろ」
現れた少年ー勇人は手を広げて二人を制止する。
「て、てめえ。何もんだ!ただの人間じゃねえな」
「その通りだ」
警戒するアルカードに向けて、勇人は笑顔を向けた。
「ほら、忘れものだぞ」
そういってアルカードに向けてリュックを放り投げる。その中には、展示会の他の財宝が入っていた。
「わざわざ財宝を持ってくるなんて、何考えてんだ?」
「その宝は困っている人たちのために使うんだろ。大いに結構。どうせ売上金は全額孤児院に寄付するつもりだったしな。君に任せるよ」
そういうと、勇人は懐に手を入れる。警戒する二人に向けて差し出されたのは、『南方財閥、常務取締役 南方勇人』と書かれた名刺だった。
「君たち、俺に雇われてみないか?」
「や、雇うって?」
「そうだ。君たちをわが財閥にスカウトしたい」
「はぁ?」
ポカンとする二人を、勇人は熱心に口説く。
「君たちは世間、とくに女性に大人気だからな。俺が考えているある事業の広告塔にもってこいだ。なんならアニメ化やドラマ化をして……」
こんな状況で勧誘してくる勇人に、アルカードは怒りを募らせた。
「ふ、ふざけんな!誰が人間なんかに仕えるか!」
そう叫ぶと、勇人に襲い掛かる。鋭くとがったが勇人を捕らえようとしたとき、一瞬でその姿が消えた。
「なっ?てめえにも俺と同じ力が?」
「残念だが、俺は誰にも捕らえられない。『雷速移動』」
自らの身体を雷に変換して移動した勇人は、アルカードの後ろにまわって羽交い締めにした。
「くそっ!放せ!」
アルカードは死に物狂いで振り払い、逆に勇人に抱き着く。大きな胸が圧迫して、いい匂いが勇人を包んだ。
「おっ。おっぱい柔らかい」
「ふざけんな!このスケベ野郎が!」
アルカードの牙が首筋を捕らえ、噛みついてその血を吸う。
すると、彼には悪気がなく、言っていることにも嘘がない電機信号が伝わってきた。
「そんな……お前は本気で俺を雇うつもりなのか?」
「だからそういっているだろ。いてて」
勇人は首筋に治療信号を乗せた電流を集中させる。首筋の傷は一瞬で治っていった。
「ば、化け物?」
「君が言うなよ」
吸血鬼から化け物扱いされて、勇人は苦笑する。
「どうだ?報酬は弾むし、なんならもっと財宝を渡してもいいぞ」
「はっ!お断りだ。じゃあな」
アルカードの身体が雷の霧となって拡散する。輝く霧はリュックを包み込むと、一目散に逃げていった。
「振られたか……君は?」
アルカードに逃げられて、勇人は今度はウズメを勧誘する。
「わ、私そんなの興味ないよ。謹んでお断りするよ」
ウズメは油断なく払い串を構えると、ブンブンと首をふった。
「まあそういわずに、話だけでも聞いてよ」
じりじりと迫ってくる勇人に、祓い串が向けられる。
「しつこい男は嫌い。マジカル巫術『大神光』」
「うわっ。まぶしい」
まぶしい光が発せられ、勇人は思わず目をつむる。再び目を開けたときには、ウズメの姿も消えていた。
「逃がしたか。ちょっとしつこくしすぎたかな。まあいい。二人の身体データは取った。調べればすぐに正体がわかるだろう。あらためてスカウトに行こう」
勇人はそういって、得たデータを分析するためにブラックナイトに戻っていった。

「ふう……さんざんな目にあったぜ。まさかこの俺が人間に負けるとはな」
アジトである下町の酒場に戻ってきたアルカードは、ため息をつくと、リュックを開ける。
中からはまばゆいばかりに輝く宝石や宝物がでできた。
「思わず持ってきてしまったけど、どうせこの宝も偽物だろ。よく考えたら、逃げ出しだ泥棒にわざわざ宝を持ってくる奴なんているわけないよな」
そう思いながら、酒場の主人を呼ぶ。
「姫、大成功ですね」
「いや、大失敗だ。たぶん偽物をつかまされた。鑑定してみてくれ」
そう言って宝を渡す。それをじっくりと鑑定した主人は、驚愕の表情を浮かべた。
「どうだ?二束三文のガラクタだろ?」
「何言ってるんですかい?スペイン王朝のフィリップ二世のエメラルドネックレスに、古代ソロモン王の契約の指輪、大魔女マーリンの魔力がこめられている「賢者のブローチ」と、とんでもないお宝ばかりですぜ」
「へっ?」
アルカードは、訳の分からないといった顔になる。
「これらすべてを闇のオークションで売ったら、たぶん100億円ぐらいにはなるかと」
金額を聞いて呆然となるアルカードに、主人は手放しで喜んでいる。
「やりましたね。これで血の確保に苦しんでいる、我々『血人類(バンパイア)』の貧しい同胞を救えます。姫ももう泥棒なんてしなくて済みますね」
「あ、ああ」
複雑な顔になるアルカード。
「この話を持ってきた、直子さんにもお礼をしないといけませんね。そうだ、ちょうど今きているんですよ。彼女にも報せないと」
そういって、酒場の主人は戻っていく。それを見送ったアルカードの顔に、徐々に怒りが湧き上がってきた。
しばらくして、ウキウキした様子の直子が主人に連れられてきた。
「大成功だったみたいですね。それでは、今まで財産を取りあげられたメイドたちに返すために、少しでいいので分け前を……」
そこまで言った時、直子はアルカードが怒っていることに気づいた。
「あの、何か……?」
「おい。話が違うじゃねえか。あいつは強欲で貧乏人から財産を取り上げる悪い奴だっていってたのに、困っている人のために使うようにって宝を渡してきたぞ」
血を通じて勇人の心に触れ、もらった財宝が本物だったことを知ったアルカードは、激怒して直子に詰め寄った。
「そ、それは……その……」
「俺をだましておいて、ただで済むとおもっているんじゃねえよな」
アルカードの牙が煌めき、直子の首筋に迫る。
「きゃぁぁぁぁぁぁ」
激痛が走り、直子は悶絶するのだった。
「ぺっ。悪党の血はまずい。おい、こいつを放り出せ」
「は、はいっ」
主人は血を吸われてしおしおの老婆のようになった直子を連れていく。
「南方勇人か……。人間のくせに俺を雇おうだなんて、面白い奴だぜ。今回のことは借りだ。貧しい同胞たちを救ったら、きっとこの借りは返すぞ」
アルカードはそう心に決めるのだった。

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