穢れた救世主は復讐する

大沢 雅紀

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開き直り

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テレビ局。
第一スタジオを占領する正志。
「ふむ。このテレビ局には、東京69のメンバーがいるな。全員こちらにこい」
局内をスキャンして超人気アイドルグループが隠れているのを発見し、思念波で命令する。
 「い、いや!」
「怖い……」
アイドル達はすでに恐怖に震えている。
「さっさとしろ! 死にたいならすぐにあの世に送ってやるぞ!」
激痛と共に命令されると、皆泣きながら正志の前に集まった。
もちろんその姿も全国に放送されている。すでに視聴率は90%を超えていた。
 「そこに四つんばいになれ」
豪華な椅子に腰掛けている正志の命令により、全員がその前に跪く。
正志は一番前にいる少女の背中にどかっと足を放り出し、その上に乗せた。
「お、お願い。何でもするから助けて!」
背中に足を乗せられている少女が泣きながら命乞いをする。
「そういえば、アンタの名は?」
「い、いちおうセンターしている、笹宮星美っていいます。お願い。殺さないで!」
可憐な少女が必死に訴える。
「ふっ。俺にとってはアイドルもそこらの不細工な女も変わらん。人類皆平等さ。だから、お前も助かりたかったら俺に価値を示さないといけない」
「な、なんでもします!」
「まあいい。別に恨みがあるわけじゃないからな。……全国のこの姿を見ている奴等に言っておく。俺のように新人類になれば、昨日まで指をくわえてテレビ越しに見るしかなかったアイドルも、こうやって足元にひれ伏させる事ができる。チャンスは平等だ。金も社会的地位も意味はない。ただ自らの決断のみだ。今の社会では生きづらい者、踏みつけにされている者、女の一人すら手に入れられない者に告ぐ。私の元にくれば、新人類に昇格し、すべてを手に入れられるだろう」
正志は悪の大魔王のように轟然と呟く。
その甘い誘惑に、心を惹かれた者は全国に現れた。
「ほ、本当にこんなことができるんだ……」
『俺、金なし職なし学歴なしだけど……信じれば!正志様のところに行けば!」
テレビの前の満たされない者たちは、目をギラギラさせてその光景を見る。
「ふふ。我々新人類はまさに原始人だ。欲しいものを力ずくで奪う。そこに善悪などありはしない。我々のルールは我々で作っていくのだからな。いわば外敵である人間からは切り取り放題奪い放題だ。進化した者は、土地も女も食料もすきなだけ奪うがいい」
高笑いする正志。
テレビの前の人間の受け取り方は様々だった。
苦しめられているアイドルをみて怒りに震えるファン。彼を犯罪者として嫌悪する一般人。そして、暗い欲望を刺激され、目を輝かせる者たち。
「『最後の審判』ゲームの第二章を始める。ただし、今度は審判を受けるのはお前たち自身だ」
正志はテレビの前にいる者たちに呼びかける。
「私がいるマジテレビまでたどり着け。そこで審判を下す。新人類に昇格したいものは、命と生きる権利と次世代に子を為す資格を与えよう。それが出来なかったものは死が与えられる。与えられたチャンスをどう使うか、お前たち次第だ」
その言葉で放送が一旦締めくくられる。
日本中に不穏な空気が立ち込めていた。

テレビ局
正志は放送を一時停止したことを確認する。
「はい。カット。もういいよ」
背中から足をどけて、目の前で四つんばいになっている星美にいう。
「え?」
わけがわからないという顔をする。
「もう四つんばいになってなくていいよ。おつかれさん」
正志の言葉に東京69のメンバーは戸惑いながらも立ち上がった。
「えっと、そうだな。しばらくここに居座るから、キミたちは好きにするように。食堂もあるし、3日分くらいは大丈夫だろ。また明日にでも放送するから、その時は怖がった顔で泣いている演技をしてくれ。それじゃ、以上!解散」
そのままスタジオを出ようとする。
「ち、ちょっと待って!ねえ、これって番組なの?」
星美があわてて正志に聞く。
「うんにゃ。ガチで犯罪者とその人質」
「……」
東京69のメンバーもそれを聞いて絶句する。
「ふ、ふざけないでよ!」
「ここから出して!」
口々に正志を責め立てる。
「まあ、諦めて付き合ってくれ。心配しなくてもそのうち出て行くから。ま、これも経験さ。俺は上の重役室にいるから、なんか用があったら来る様に」
笑ってスタジオを出て行く。
星美たちはポカンとした顔で見送った。
 
一時間後
東京69のメンバーは手持ち無沙汰にしていた。
てっきり無体な要求をされるとおもっていたが、完全に放置されている。
そうするとかえって不気味で、正志の事やこれからの事が気になってしょうがない。
「ね、ねえ。誰かアイツの所に行って、話を聞いてきてくれない?」
メンバーの一人が言う。
「で、でも何されるかわかんないし……」
「さっきは本当に痛かったしね」
正志に与えられた苦痛を思い出して震える。
「……わたしがいく」
意を決して名乗り出る星美。
「ホシちゃんいいの?」
「一応センターだからね。私達に手を出さないように、話をしてくるよ。思ったほど乱暴でもないみたいだし」
そういいながらも小刻みに震えている。
「私達もいく」
メンバーから二人が立ち上がっていう。
「気をつけてね」
見送られながら、正志が居座る重役室に行った。
 
「なかなかいいブランデーだな。この部屋は気に入ったな」
重役室のソファにすわり、酒を飲んでいる正志。一人で宴会状態である。
「コンコン」
「はい。どうぞ~」
意を決して中に入った三人の目には、顔を真っ赤にしてブランデーを飲んでいる正志が映った。
「いらっしゃい。飲むか?」
酒を勧めてくる。
「いらない。私達は話しにきたの!もう私達に手を出さないで!」
「いいよ。その代わり、放送の時には協力してくれ。私達を助けてってな。そうしたら人がたくさん集まるから」
あっさりという。
「……人を集めてどうするのよ」
「ま、殆どは魔人類に進化できずに死ぬだけになるだろうが、中には生き残る奴もいるだろ」
「死ぬって……?」
穏やかでない単語を聞いて驚く。
「テレビ局の周囲にフィールドを敷いている。その中に入ったらソウルウイルスがインストールされる。この世界に適応している奴は、残念だけど魔人類にはなれないるで、死に至る。ごく一部の鬱屈して世界を変えたいという執念を持つ奴は、魔人類に進化する」
なんでもないことのように言う。
「わ、私達に人殺しの手伝いをしろっていうの!」
星美が怒る。
「……俺にとって人間の命は軽いんだ。どうせすぐに殆どの人間が悲劇に襲われて死ぬ事になる。いちいち気にしていられない。むしろ苦痛全くなしに死ぬ設定しているぶんだけ、いい死に方かもしれないぜ」
「この悪魔!」
思わず星美は正志をビンタする。
「や。やめなよ……」「怒らせたら……」
残りの二人が星美を押しとどめる。
 しばらく正志は頬をなでて沈黙していたが、星美に向き直った。
「そうさ。俺は悪魔さ。だからこそサタンに選ばれたんだよ。話は終わりだ。……わかった。好きにしていろ。もう何もしなくていいから」
「あんた……」
その表情を見て星美は言葉を失う。この上もなく悲しみをたたえた顔だった。

 重役室から出る三人。
「しかし、ホシちゃんって勇気あるよね」
「あんな怖い男にビンタするなんて。でも、胸がスーッとした!」
はしゃぐ二人。
(でも……あいつ悲しそうな顔をしていた。あんな酷い事をする奴なのに……なんで?)
星美の心から正志の顔が離れなかった。
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