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シェルター
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「まさか、本当に君が参加してくれるとはな……」
正志は意外そうな視線をむける。その先には、ふてくされたような顔をした星美がいた。
「勘違いしないでよね。魔人類に協力するのは、大破滅から一人でも多くの人を救うためなんだからね。まだ私は君のハーレムに入るなんて決めてないんだからね」
腕を組んで睨みつけてくる星美。
「あ、ああ……わかったよ」
「いや~ツンデレ。いいものですなぁ」
たじたじになる正志を見て、麗奈は面白そうに茶化した。
「それで、シェルターとやらはどうなっているの?」
「あ、ああ。すでに建設が始まっている」
そういうと、正志は富士山の麓にあるシェルター建設現場に星美たちを連れて行った。
「シェルターというから、秘密基地みたいなものを想像していたけど、実際はただ穴をほっただけだよね」
星美はがっかりしたように言う。確かに彼女がいうとおり、深い穴の底には、人が一人入れる程度のスペースに区分けされている、蜂の巣のような区画しかなかった。
「仕方ないだろ。これくらい簡潔にしないと、とても百万人もの大人数を収容できないんだから」
それらの個室には、既に何体かの繭がある。桃井杏と最初に正志に従った女子生徒たちだった。
「彼女たちは何しているの?」
「繭の中で仮死状態になって、意識だけを仮想世界『エデン』に飛ばしている。そうして、大破滅が起こっている間をここで過ごしてもらうつもりだ」
正志はそう説明した。
「何年くらい地下にいることになるの?」
「そうだなぁ。現人類がほぼ絶滅して、人間に乱獲された生物の数が増えて、汚された地球環境が回復するまでだから、ざっと30年ぐらいかな」
それを聞いて、麗奈がちょっと顔をしかめた。
「30年もかぁ。出てきたらオバサンになっていそう」
「心配するな。繭に入っている間は一歳も年をとらないから」
それを聞いて、星美と麗奈もほっとする。
「キミたちには、ネットで呼びかけてなるべく多くの人を説得して、ここにつれてきてほしい。」
それを聞いて、二人は頷いた。
「わかったわ。私たちに任せて」
こうして、星美たちによる『悪魔教』の布教が始まるのだった。
ネットでは、ある動画が拡散され、話題になっていた。
「大破滅の真実」と題された動画は、魔人類たちに襲われた学校の生徒たちに直接送りつけられ、真実が伝えられる。
「魔人類たちが行っているソウルウイルス拡散は、これから起こる大破滅に対してのワクチン接種なのです」
動画には、誰もが知っているトップアイドルの笹宮星美が現れ、悲痛な表情でそう訴えかけていた。
動画が進むと、ある日突然老若男女関係なく大勢の人が怪物化し、人々に襲い掛かる映像が映し出される。怪物に襲われた人も、また新たな怪物になっていた。
「これは地球が人類を間引きするために作ったウイルスです。人体の精神プログラムに作用するコンピューターウイルスのようなものなので、物理的方法では検知できません」
星美の言葉に、視聴者たちは恐怖を煽られる。
「しかし、事前に魔人類たちに効果を薄められたソウルウイルスを注入された人は、怪物に襲われても免疫が作用して怪物化しません」
それを聞いて、襲われた生徒たちはほっとする。
「とはいえ、文明も秩序も崩壊するのですから、外の世界が危険なことにはかわりません。大破滅を避けたい方、今の生活を捨てて新しい世界に行きたいと思う方は、私たち悪魔教に連絡してください」
連絡先が表示され、動画が終わる。
それを見た者の反応はさまざまだった。
「やっぱり星美は『正志の女』だったんだ。私たちをだまそうとしているんだわ」
弓や『超人類』を無邪気に信奉している生徒たちは、この警告を嘘だと思って無視してしまう。
しかし、中には別の反応を示す者もいた。
「あの襲撃は、ワクチンだったんだ」
「どうせ今の世界に生きていても、いいことないしなぁ。学生時代はいじめや受験競争に苦しめられて、就職してもブラック企業でこき使われるだけの人生だろうし」
トップアイドルだった星美までが悪魔教に参加したことで、これまでためらっていた「負け組」の生徒たちも覚悟を決める。
かなりの人数の生徒たちが「悪魔教」に接触し、個人情報を連絡してきた。
そして、悪魔教に接触してから数日-
暗い顔をした少女が学校帰りの道を歩いていると、見知らぬ少女に声を掛けられた
「田村美晴さんですね」
「は、はい。あなたは……?」
眼鏡をかけた大人しそうなその少女は、黙って美晴に近づき、耳元でささやく。
「『信徒(サタニスト)』の山村理沙と申します。このままだまってついてきてください」
こうして一人ひとりひそかに接触して、富士山麓のシェルターに連れていく。
魔人類の襲撃で日本社会が混乱している中、ひそかに行方不明になる少年少女が増えていくのだった。
シェルター完成の目途がつき、悪魔教による布教の効果もあって、少しずつ収納する人数も増え始めていた。
「そろそろ、国民も弓たちの無力さに気づき始めたころだろう。大破滅も近い。いまなら女たちをシェルターに勧誘しても、案外誘いに乗る奴がいるかもしれない」
そう思った正志は、部下たちに気に入った女たちの誘拐を許可した。
「いいんですか?」
「ああ。悪魔教による信徒も増えているが、このままのペースだと我々の子を産むべき女たちが足りない。もはや、悠長に相手を説得している時間はない。同意できなければ力づくでも誘拐してきていい」
正志は、大魔王にふさわしく傲慢に言い放った。
「大破滅が始まったら、日本、いや世界規模で大混乱になる。その前に、自分の好きな女を確保しておけ」
そう言われた部下たちは、大喜びで知り合いや憧れていた女子の所へ走っていった。
「さて、俺はどうするかな」
親しい女はすでに悪魔教に入信している。少し考えた末、正志はある少女を迎えに富士山近くの街に行った。
正志は平凡なアパートのチャイムをならす。
「はーい。どなたですか?」
そんな明るい声と共に出てきた飯塚香は、正志を見て涙を流して抱き着いてた。
「待たせたな。迎えに来たぞ」
「正志さま……やっぱり生きていたんですね」
「ああ。俺たち魔人類は、使命を果たすまで何度でもよみがえる。たかだか『神』の僕である『高人類』たちなんかに、滅ぼされたりしないさ」
正志は抱き着いてきた香を、慰めながらつぶやく。
奥から出てきたパイロットは、そんな二人を見て複雑な顔をした。
「正志君。生きていたのか。君が娘を迎えに来たということは……」
「ああ。大破滅までもう時間がない。すでにシェルターは完成しつつある。俺たちの手下になった財閥や建設会社、ヤクザたちの手によってな」
それを聞くと、パイロットは正志に向かって深々と頭を下げた。
「……娘を頼む。新しい時代に生き残らせてくれ」
「ああ、娘はしっかりと預からせてもらう」
正志はパイロットの目をしっかりと見て、言い放つ。彼からは、娘のことを真剣に想っていることが伝わってきた。
「お父さん……」
「香。泣くんじゃない。この数か月、親子の時間を過ごせて本当に楽しかった。これが今生の別れとなるだろうが、新しい世界でも元気で生きて行ってくれ」
パイロットはそういって、香の頭を撫でる。
不憫に思った正志は、せめてもの慰めの言葉を投げかけた。
「今生の別れとは限らないぜ。あんたには調整したソウルウイルスを感染させているから、怪物化は避けられるだろう。俺たちが目覚めるのは30年後だ。それまで大破滅から生き残ることができれば、娘とも再会できるだろうぜ」
「ははは。ありがとう。せいぜい頑張ってみるさ。私は元自衛隊員だ。それなりに武器を調達する伝手も持っている。なんとかあがいて、大破滅に抗ってみせよう」
パイロットは苦笑して、手を差し出してきた。
「そういえば、あんた、名前は?」
「飯塚修だ」
「そうか。覚えておくよ。娘は任せろ。必ず、大破滅から守り通して見せる」
修と正志はがっしりと握手を交わすのだった。
正志は意外そうな視線をむける。その先には、ふてくされたような顔をした星美がいた。
「勘違いしないでよね。魔人類に協力するのは、大破滅から一人でも多くの人を救うためなんだからね。まだ私は君のハーレムに入るなんて決めてないんだからね」
腕を組んで睨みつけてくる星美。
「あ、ああ……わかったよ」
「いや~ツンデレ。いいものですなぁ」
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そういうと、正志は富士山の麓にあるシェルター建設現場に星美たちを連れて行った。
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「仕方ないだろ。これくらい簡潔にしないと、とても百万人もの大人数を収容できないんだから」
それらの個室には、既に何体かの繭がある。桃井杏と最初に正志に従った女子生徒たちだった。
「彼女たちは何しているの?」
「繭の中で仮死状態になって、意識だけを仮想世界『エデン』に飛ばしている。そうして、大破滅が起こっている間をここで過ごしてもらうつもりだ」
正志はそう説明した。
「何年くらい地下にいることになるの?」
「そうだなぁ。現人類がほぼ絶滅して、人間に乱獲された生物の数が増えて、汚された地球環境が回復するまでだから、ざっと30年ぐらいかな」
それを聞いて、麗奈がちょっと顔をしかめた。
「30年もかぁ。出てきたらオバサンになっていそう」
「心配するな。繭に入っている間は一歳も年をとらないから」
それを聞いて、星美と麗奈もほっとする。
「キミたちには、ネットで呼びかけてなるべく多くの人を説得して、ここにつれてきてほしい。」
それを聞いて、二人は頷いた。
「わかったわ。私たちに任せて」
こうして、星美たちによる『悪魔教』の布教が始まるのだった。
ネットでは、ある動画が拡散され、話題になっていた。
「大破滅の真実」と題された動画は、魔人類たちに襲われた学校の生徒たちに直接送りつけられ、真実が伝えられる。
「魔人類たちが行っているソウルウイルス拡散は、これから起こる大破滅に対してのワクチン接種なのです」
動画には、誰もが知っているトップアイドルの笹宮星美が現れ、悲痛な表情でそう訴えかけていた。
動画が進むと、ある日突然老若男女関係なく大勢の人が怪物化し、人々に襲い掛かる映像が映し出される。怪物に襲われた人も、また新たな怪物になっていた。
「これは地球が人類を間引きするために作ったウイルスです。人体の精神プログラムに作用するコンピューターウイルスのようなものなので、物理的方法では検知できません」
星美の言葉に、視聴者たちは恐怖を煽られる。
「しかし、事前に魔人類たちに効果を薄められたソウルウイルスを注入された人は、怪物に襲われても免疫が作用して怪物化しません」
それを聞いて、襲われた生徒たちはほっとする。
「とはいえ、文明も秩序も崩壊するのですから、外の世界が危険なことにはかわりません。大破滅を避けたい方、今の生活を捨てて新しい世界に行きたいと思う方は、私たち悪魔教に連絡してください」
連絡先が表示され、動画が終わる。
それを見た者の反応はさまざまだった。
「やっぱり星美は『正志の女』だったんだ。私たちをだまそうとしているんだわ」
弓や『超人類』を無邪気に信奉している生徒たちは、この警告を嘘だと思って無視してしまう。
しかし、中には別の反応を示す者もいた。
「あの襲撃は、ワクチンだったんだ」
「どうせ今の世界に生きていても、いいことないしなぁ。学生時代はいじめや受験競争に苦しめられて、就職してもブラック企業でこき使われるだけの人生だろうし」
トップアイドルだった星美までが悪魔教に参加したことで、これまでためらっていた「負け組」の生徒たちも覚悟を決める。
かなりの人数の生徒たちが「悪魔教」に接触し、個人情報を連絡してきた。
そして、悪魔教に接触してから数日-
暗い顔をした少女が学校帰りの道を歩いていると、見知らぬ少女に声を掛けられた
「田村美晴さんですね」
「は、はい。あなたは……?」
眼鏡をかけた大人しそうなその少女は、黙って美晴に近づき、耳元でささやく。
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こうして一人ひとりひそかに接触して、富士山麓のシェルターに連れていく。
魔人類の襲撃で日本社会が混乱している中、ひそかに行方不明になる少年少女が増えていくのだった。
シェルター完成の目途がつき、悪魔教による布教の効果もあって、少しずつ収納する人数も増え始めていた。
「そろそろ、国民も弓たちの無力さに気づき始めたころだろう。大破滅も近い。いまなら女たちをシェルターに勧誘しても、案外誘いに乗る奴がいるかもしれない」
そう思った正志は、部下たちに気に入った女たちの誘拐を許可した。
「いいんですか?」
「ああ。悪魔教による信徒も増えているが、このままのペースだと我々の子を産むべき女たちが足りない。もはや、悠長に相手を説得している時間はない。同意できなければ力づくでも誘拐してきていい」
正志は、大魔王にふさわしく傲慢に言い放った。
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「ああ。大破滅までもう時間がない。すでにシェルターは完成しつつある。俺たちの手下になった財閥や建設会社、ヤクザたちの手によってな」
それを聞くと、パイロットは正志に向かって深々と頭を下げた。
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「ああ、娘はしっかりと預からせてもらう」
正志はパイロットの目をしっかりと見て、言い放つ。彼からは、娘のことを真剣に想っていることが伝わってきた。
「お父さん……」
「香。泣くんじゃない。この数か月、親子の時間を過ごせて本当に楽しかった。これが今生の別れとなるだろうが、新しい世界でも元気で生きて行ってくれ」
パイロットはそういって、香の頭を撫でる。
不憫に思った正志は、せめてもの慰めの言葉を投げかけた。
「今生の別れとは限らないぜ。あんたには調整したソウルウイルスを感染させているから、怪物化は避けられるだろう。俺たちが目覚めるのは30年後だ。それまで大破滅から生き残ることができれば、娘とも再会できるだろうぜ」
「ははは。ありがとう。せいぜい頑張ってみるさ。私は元自衛隊員だ。それなりに武器を調達する伝手も持っている。なんとかあがいて、大破滅に抗ってみせよう」
パイロットは苦笑して、手を差し出してきた。
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(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
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