追放された転送者は、天空王となって世界に復讐する

大沢 雅紀

文字の大きさ
5 / 28

運送都市トラベル

しおりを挟む
俺は『天空のオーブ」を操作して、天空界を移動させる。
目的地の上空に到達すると、映像板で地上の様子をみた。
「懐かしいな。運送都市トラベルか……」
俺は誰もいなくなった天空界から、地上を見下ろしながらつぶやいた。
眼下にひろがる町は俺の故郷で、世界中の転移士たちの根拠地となっていた。
転移士とは都市間を瞬間移動して人を運ぶ仕事である。大量の物は運べないが、彼らを利用することで人の行き来が手軽にできていた。
「それじゃ、いくか」
トラベルの上空に天空城を待機させて、俺は地上に向かって転移した。

トラベルは世界中の旅人が集まる都市である。転移士による人の運搬で大いに栄えていた。
「さて、この町の人々は俺を歓迎してくれるかな?」
俺は期待半分、恐れ半分で懐かしい町に入っていった。
「本当に変わらないな。昔のまんまだ」
俺は子供のころから知っている道を歩いて、自宅に戻る。
「アルセーヌ商会」という看板自宅兼商会の事務所になっている大きな建物に入っていった。
「ただいま。今帰ったぞ」
受付をしている事務員に声を掛けたが、冷たい目でにらまれた。
「誰だ。偉そうに」
「誰だとはなんだ。そういえばお前の顔は見たことないな。俺が旅に出ている間に新しく雇われたのか?まあいい。叔父さんを呼んで来い」
受付の男の対応を不快に思いながらも、主人の度量で諭してやった。
「叔父さんとは誰だ」
「俺がいない間、代理として商会を任せていたアルセーヌ・ルコルだ。商会主のアルセーヌ・ルピンが帰ってきたと伝えろ」
噛んで含めるように伝えてやると、ようやく事務員の男は慌てだした。
「し、少々お待ちください」
事務員は奥に引っ込み、上司を連れてくる。
その上司は俺を見るなり、顔をしかめた。
「……商売を捨てて、町から逃げ出したお坊ちゃまが、いまさらなんの御用で?」
『大きな口を叩くもんだな。父上が生きていたころは丁稚のつかいっぱしりだった癖に。叔父さんは商会の所有者に対する礼儀も教えていないのか?ジョージ君よ」
俺は煽ってやったが、ジョージは慇懃無礼に一礼した。
「今の私はルコル様の腹心の部下として、商会の支配人を務めさせていただいております。いかに先代の息子とはいえ、失礼なお客様はお通しできませんな」
「客だと?俺はの商会のオーナーのはずだが?お前どころかルコル叔父ですら、俺の使用人にすぎないはずだろうが?」
「何をおっしゃっているのやら。そんな寝言はベッドの中でつぶやいていただきましょう」
ジョージは薄ら笑いを浮かべて言い放った。
ああ、やっぱりな。恐れていたことが起こったか。
思えば、俺の持つ力「転送」スキルが発現した時、これで俺は特別な存在になったんだと思い上がり、諌める父を置いて勇者についていってしまったんだ。
旅の途中、父が死んだと聞いてパーティを離脱しようとしたが、便利な足がなくなると困るという理由で勇者は帰郷を許さなかった。
やむなく叔父のルコルに相続手続きを任せたのだが、見事に財産をのっとられたらしい。
まあ、今の俺は天空界を支配する天空王だから、その程度の財産なんて惜しいとは思ってなかったんだがな。
ちゃんと敬意を持って俺を迎えたら、商会くらいくれてやったんだ。
沈黙した俺を、ジョージは調子に乗ってバカにしてくる。
「ふふ。間抜けですな。勇者パーティからあなたが追放されたことも知っておりますよ。われわれのように地道に商売を励むといったこともせずに、ホイホイと家を捨てて根無し草になったあげく、ご主人様に捨てられるとは。今のあなたはホームレスですか?」
「いや。こんな家なんて犬小屋にしか思えないほどの城をもっているけど」
俺が事実を言ってやったら、ジョージは哀れんだ顔で説教を始めた。
『嘘はおやめなさい。私は昔からあなたが気に入らなかった。優しい両親に恵まれて、裕福で、転移という特別なスキルまで持っていて。そんなあなたが……くくく……あっはっはっは」
ジョージは高笑いすると、ドアを指差した。
「さっさこの町を出てお行きなさい。拾ってくれた先代のご恩に免じて、王国への通報は勘弁して差し上げます。その代わり、二度とここにはこないように」
「そういうわけにはいかねえよ。とりあえず、お前はむかつくからこの商会から追放だ。『オクル』」
俺はジョージに向けて黒い玉を放つ。彼の姿は一瞬で消えていった。
「さて、叔父さんに会いに行くかな」
俺は執務室に転移するのだった。

執務室ではでっぷりと太った男が、金勘定をしていた。
「ぐふふ……我がアルセーヌ商会はますます繁盛している。いずれ私はこのトラベルの領主になってやる」
「ちっさい夢だな。ルコル叔父さん」
夢中になって金を数えているルコルの後ろに転移して、声を掛けてやる。
振り向いたルコルは、まるで化け物に遭遇したような驚いた顔をした。
「ル、ルピン」
「久しぶりだ。今ジョージに聞いたんだが、あんたは俺の財産をのっとったそうだな」
俺が指摘すると、ルコルは焦った顔をした。
「な、なんのことだ!言いがかりはやめろ!」
「まあ、確かにジョージが嘘をいっているのかもな。だから自分の目で確かめる」
俺は手のひらを金庫に向けると、転移の力を解き放った。
「オクル」
手のひらから出た黒い球は、分厚い鉄の金庫の扉をあっさりと貫く。
「ひ、ひいっ!」
悲鳴を上げる叔父をほうって置いて、俺は中に入っていた書類を確認した。
「この建物の所有者、ルコル・アルセーヌ。商会のオーナー、ルコル・アルセーヌ。銀行預金の口座名義人、ルコル・アルセーヌ……」
いや、いっそ感心するね。親父の財産のすべてが叔父のものになっているよ。
「そ、それは名義だけのものだ。この商会は今でもお前のものだ。許してくれ。いや、許してください」
俺は怯えて土下座するルコルに向けて、右手を差し出した。
「ゆ、許してくれるのか?」
「そんな訳ねーだろ。バカが。俺の目の前から消えろ!」
俺は叔父の手を握ったまま、転移の力を解放した。
いきなり周囲の光景が変わって、ルコル叔父は驚く。俺たちは背丈ほどもある草が生い茂る場所に来ていた。
「こ、ここはどこだ?」
「ロンダルギニア台地さ。台形に盛り上がった丘で、他の土地から隔絶されている。ここには他の土地とは違った進化をした魔物が生息しているらしい」
まあ、俺も良く知らないんだけどな。勇者ときたときは、伝説の剣を手に入れた後はさっさと転移したし。
叔父がうろたえていると、先に送られていたジョージが近寄ってきた。
「だ、だんな様。ここには化け物がたくさんいます。早く逃げないと」
ジョージが指差す方向には、巨大な二本足で立つトカゲみたいな魔物がいた。
大きな口からは、涎がたれている。
「ひ、ひえっ!なんだあれは!」
「あれはティラノトカゲといって、凶暴だぞ。奴に狙われたら最期、どこまでも追いかけてくる。まあ、俺は「転移」で逃げられるんだけどな」
俺がそういうと、二人は土下座して頼み込んできた。
「こ、ここから逃がしてくれ!頼む!」
「お坊ちゃま、失礼な態度をとって申し訳ありません。お願いですからトラベルに戻してください」
鼻水流しながらすがり付いてくるので、蹴飛ばしてやった。
「断る。せいぜい俺を裏切ったことを後悔するがいい。じゃあな」
俺は転移してトラベルに戻る。最後にみた光景は、涎をたらしながらティラノトカゲがこっちを向くところだった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

処理中です...