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本編

 54話 ある昼下がり

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「はい、じゃあ今日の授業はここまで!一樹、号令を頼む。」
と先生に言われ、僕は号令をかける。
「規律!礼。」
『ありがとうございました。』
こうして4限目の授業が終わりお昼休みになった。
「いやぁ、もうすっかり夏だな。」
と和人が話しかけてくる。
「そうだな。外からの蝉の鳴き声も聴こえるし、夏真っ盛りって感じがするな。」
「じゃあさ、俺の言いたいことわかるよな?」
「…当たり前だろ。何ヶ月同じ学校に通ってると思ってんだ?」
「ほう、じゃあ答えてみろよ。」
と挑戦的な目で僕を見てくる僕は軽く息を吸うと、
「なんで扇風機だけしかつけてないんだよ!あっついわ!」
と叫んだ。
「正解!ということで俺から提案がある。」
と和人が悪戯っぽい笑みを浮かべてこっちを見てくる。
「…昼、屋上で食わないか?」
「屋上か…う~ん…」
「え?迷う必要なくない?私は賛成だけど?」
と美希乃が弁当箱をカバンから取り出しながら言う。
「私も。こんな蒸し暑い中ここまでくっつかれると流石に清を感じたくなるからね…もう!良いかげん離れなさい!!」
「もう、冷たいですよ。お姉さま。そんなことおっしゃらずに。今日こそ一緒にお昼食べましょうよ~。」
「は、早く移動しましょ!ね?一樹!」
「へ?あ、うん。」
「じゃ、じゃあ私先に行っておくから!じゃ!」
「あ、まってくださいお姉さま!どこへ行かれるのですか~!」
とあっという間に目の前から二名人が消えた。
「…じゃ、行きますか。」
というと。
「せやな。」
「うん、準備できてるよ~。」
と2人からそう帰ってきたので僕らは屋上に上がった。
「う~ん、ここまで綺麗に青空が広がってると気持ちよさを感じるなぁ…」
「まあ日陰にいないと確定で汗だくになるけどな。」
「まあでも日陰だと風も入るし教室よりだいぶ涼しいよね!」
と美希乃がいうが、
「そうね。風は涼しいのだけど…」
と真由が隣を見る。隣には真由ガチ恋勢の葉月がいた。
「お姉さま、お姉さま、この卵焼き食べて見てください!お姉さまんためを思って、」
「た~ベ~な~い。何盛られてるかわからないし、一樹の卵焼きの方が美味しいから。」
「で、ですがっ!」
「あ、あと良いかげん離れてくれる?そろそろ嫌いになるわよ?」
「……」
「聞こえてるの?」
「…はい、すみませんでした…」
と言うとすごすごと離れた。
「本当、一樹君すごいよね。よく3つも4つもお弁当作れるよね。ぶっちゃけ何時間ぐらいかかってるの?」
と美希乃が話しかけてきた。
「どうした?お前が料理の話をするなんて珍しいな。」
と和人が驚いたように声を上げた。
「そうだな。お弁当自体は昨日の晩御飯を適当に詰めてあとは適当に卵焼きとかをくるくるして切って詰めるだけだから大体1、2時間ぐらいかな?」
と言うと、
「な、なるほど…今度私もやってみようかな?」
と美希乃は言った。
「でも美希乃って確か料理できなかったよね?どう言う風の吹き回しだ?」
と聞くと、
「あはは、き、気分だよ気分。」
とはぐらかされた。
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