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プロローグ〜開幕〜
第十八話
しおりを挟む「お嬢、本当に菫達はいるのでしょうか?」
菫達がいる場所へと向かっている途中、七が秋花に聞いてきた。
「確信はありません。でも、四郎のヒントに忠実に従うなら、私にはここしか……」
秋花が向かったのは、御殿から十数キロ離れた場所にある、天狗界にある唯一の鍾乳洞。
現世の名所のような美しさはない、ごくごく普通の小さい洞窟であるが、冬である今の季節は氷柱がなって氷穴と化している。
いつから出来た物なのかは詳しくは分かっていないが、一応代々天狗達が管理を行なっている場所である。
洞窟の入り口付近には誰の気配も感じない。
慎重に少しずつ足を進め、洞窟の中へ入っていく。中では、水滴が滴る音と秋花の靴音の反響音以外、音は聞こえない。
外が暗い影響で洞窟の中も暗い為、明かりも持っていない今、七の夜目を頼りに進んでいる状態だ。
・
・
・
氷穴に入って暫く経ったと思う。もうすぐ中盤に差しかかるくらい感覚だが、依然誰かがいる気配はしない。
(もしかして、ハズレ?)
そう思ったその時、七が突然足を止めた。
「お嬢、誰かいます」
七曰く、洞窟の曲がり先で人影のような者が動くのを見えたらしい。
「背中に乗って、身をかがめてください」
秋花を乗せて、七は人影を追うように問題の曲がり角まで一気に進んだ。そして、壁に沿って様子を伺うようにゆっくりと顔を出すと、通路の真ん中に人影が立っていた。
「ようこそ!」
歓迎の声は、間違いなく四郎の声だった。
秋花の姿が見えると、彼は持っていた提灯に火を灯した。
いるのは四郎一人だけ。それも武器になるような物は何も身につけていない。
「菫達は?」
「こっちこっち」
四郎に手招きされて、さらに洞窟の奥へと進んだ。
案内されるまま四郎の後ろを着いていくと、洞窟最奥の一番広い空間に出た。
「菫!」
「お嬢! 無事でよかった! ごめん、今手が離せないんだよ! 輝、消毒寄越しな!」
「お嬢との感動の再会なのに、骨牌の手当に邪魔された」
「悪かったなぁ!!怒」
そこには、連れ去られた妖達の他に、四郎の仲間である烏合が全員いた。
が、不思議なことに、連れ去られた者達は誰一人として拘束されておらず、それどころか監視されている様子もなかった。天狗は天狗で他愛ない話をして時間を潰しており、妖は妖で負傷者の手当てをしていた。
「さすが秋花、大正解! 良かったね~、みんな無事だよぉ」
「何故、四郎兄はここを選んだのですか?」
「秋花の髪留めを見て……かな?」
それは、未だ秋花が使っている烏水の着物の切れ端のこと。
「三郎坊……いや、今は太郎坊かな。秋花は、やっぱりここでの太郎坊との思い出が一番楽しかったんだね」
「さあ、どうでしょう。楽しかったというより、私には、ここに来た時の思い出が一番印象に残っていました。なんせここで初めて、私は兄者と人間の遺体を遺棄したので」
懐かしそうに、秋花はそう語った。
「そうだよ。人の世から攫われ、僧正坊に召し抱えられた人の娘の死体をここに捨てていた。女の子に事後処理させるなんて、あの時は烏水の配慮の無さにびっくりしたよぉ」
「私は、百足の正体が彼女達であったことの方が驚きでした」
秋花が告げる天狗の闇に、四郎は笑顔を見せた。
全ては、この洞窟に関する出来事が、この騒動の始まりを物語る。
「立ち話しもなんだから、少しゆっくり話そうか」
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