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第一章:あの日、再び
双子のような
しおりを挟むーー7年前。
生まれ育ったリビ山で【黒の誕生】に、巻き込まれ…
…俺はここ、ミタ山に移り住んだ。
今、歩いているこの道。
ジャアナの街に下る大きめの道から、森の中に分岐するこの細い道。
”ある人”に会うために…
…俺はこの道を、7年間で何度通ったことだろう。
「あっ!ヨウ、おはよ~!今日も暑いね~。」
その”ある人”こと。
”ヒマリ・プリマナ”は、
道を歩いてくる俺に気付き、笑顔で挨拶をしてくれた。
「おー、おはよ。
そういえば今日、誕生日だよな。…おめでとう。」
俺はいつも、ヒマリを前にすると…
…嬉しい気持ちが、顔に…すぐ、出てしまう。
そんな自分が恥ずかしくて。
気持ちが、バレてしまいそうで。
つい、いつも、
ぶっきらぼうになってしまうのが、悩みだった。
そんな俺の態度にも…
ヒマリは、笑顔で答えてくれる。
「わあ、覚えててくれたんだね!
さっすがヨウ!ありがとう~!」
そんなヒマリを見て…
…アオ兄の言っていた、”愛しいあの子”。
あながち、間違っていないと、思った。
ヒマリは、俺にとって…
…本当に、愛おしい存在なんだ。
「ほら、いつまでも道に立ってないで。
ヨウも、こっちにおいでよ。」
ヒマリは天使のような笑顔で、
俺を、自分のいる玄関横のベンチに誘ってくれた。
腰までフワフワに伸びた金色の髪が…
夏の日差しで、今日はより一層、キラキラと輝いて見える。
うん、今日のヒマリも、優しいし…最高に、かわいい。
「あれ、ヒマリ…
…”チカラ”、使ってるのか?」
ありがたく、ベンチに腰掛けようと近付いた時。
ヒマリの大きな瞳が、薄く色付いているのに気付いた。
”発現者”が”チカラ”を使う時ーー
ーたとえばアオ兄は、その瞳に、深い緑色をまとわせるがー
ヒマリのカラーズは、赤みがかった黄色だ。
まさに今、その大きな瞳には、
赤みがかった、黄色のきらめきが見て取れる。
「うんっ!マッピと、遊んでたんだ。」
それが合図だったかのように…
…ヒマリのオーバー、”マッピ”が。
ヒマリの後ろから、ひょっこりと姿を現した。
「マッピも、おはよう。」
俺が挨拶をすると、少しだけ微笑み。
頭を下げて、恥ずかしそうに…サッと、ヒマリの後ろに戻ってしまった。
「マッピったら、本当に恥ずかしがり屋さんなんだから。」
誰に似たのかな~と、ヒマリは嬉しそうに呟き。
背後のマッピに、笑いかける。
「チカラが目覚めてから、たった一週間だよな。
それでもう、”ヒト型”に発現できるなんて…。
…ヒマリって、やっぱすごいよな。」
心からそう思い。
俺は照れることなく、自然とヒマリを褒めていた。
「えっ、そんなことないけど…。
えへへ、ヨウに褒められると、なんだか嬉しいな。」
そう言って、照れ笑いするヒマリの表情は、先程のマッピにそっくりだった。
一週間前、初めて見せてもらったマッピは、
今朝のリュウマと同じ”手のひらサイズ”の”コアラ”だった。
しかし、今のマッピは…
俺より少し背の低いヒマリと、対して変わらない体格で。
さっきの表情といい…大きな耳と、あと黄色がかっていることを除けば、ヒマリそっくりな”双子の妹”といった感じだった。
「まだまだ長い時間は、発現してあげられないんだけどね。」
そう、寂しそうにつぶやくヒマリを見て。
マッピは首を、ブンブンと横に大きく振る。
(…きっと、『謝らないで』って、伝えてるんだよな。)
ヒマリも、そのヒマリのオーバーのマッピも、
本当に2人とも優しくて…、愛おしい。
そんな、優しいまなざしを向ける俺に気付き、
マッピは照れ笑いを浮かべながら。
ヒマリと俺に交互に手を振って、笑顔で消えていった。
「マッピを呼ぶことはできるけど…
…その、能力が…まだ、分からなくって。
私はこれから、みんなのために…
マッピを、どう役立てていけばいいのかなぁ…?」
寂しげな表情のまま、不安そうに問いかけられる。
発現者じゃない俺は…
ヒマリになんて、声をかけてあげられるだろう?
今の俺が、言えることーー
ーーー「…あ、あのさ!
今日の誕生日会、6時からだろ。
その…前に、言いたいことがあるんだ。
5時半に、いつものでっかい切り株のとこ。
1人で…来てくれないかな。」
…ミッション、1つ目
”ヒマリを告白する場所に誘う”を、実行した。
…うん、
何とも計画とは…違ったタイミングになった。
もっと良い雰囲気で、誘おうと思ってたのに…。
「えっ?言いたい…こと?誕生日会の前に?」
チカラについての悩み相談中、
という、変なタイミングで誘ったせいで。
本来の意味は、1ミリも伝わっていないらしかった。
「あー…まあ、チカラについて!
大事なこと、だからさ。
…2人だけで、話がしたいんだ。」
話の流れ的に、
”チカラに関すること”ってしといた方が自然か。
…嘘をつくのは少し、罪悪感があったけど
「そっか!アオバ君もいるし、ヨウも物知りだもんね!」
悩ましそうにしていた顔に、
花が咲いたような笑顔が戻ってくる。
この笑顔が見られただけで。
俺の罪悪感は、跡形もなく消えていった。
そんな、ヒマリの笑顔に見入っていると
「おう、ヨウじゃないか!街に用事か?」
突然、背後から、
大きすぎる声で話しかけられた。
「うわっ!シゲ叔父さん!いつからいたの?!」
声をかけてきたのはヒマリの父で、
死んだ俺の父さんの親戚でもある、シゲル・プリマナ叔父さんだった。
「さ~あ、いつからだったかねぇ。」
ヒマリとは似ても似つかない…シゲ叔父さんの、怪しげな笑顔。
無意識に、後ずさりしてしまう。
(…まさか、約束のこと…。聞かれてたんじゃ...。)
「そっ、そうそう!街に用事があるんだった~。」
居心地の悪さを感じた俺は、
明らかに不自然なまま話題を切り上げて。
そそくさとヒマリたちに背を向けた。
「ワハハ!夕方までにはちゃんと戻ってこいよ。
あと、たっっぷり腹をすかして来ること!」
シゲ叔父さんはいつものように、豪快に笑いながら言う。
「ヒマリ以外に、俺がご馳走様を振る舞う、
年に一度の貴っ重~な日、なんだからな!」
親子2人で、「「ね~!」」と声を重ね。
仲良さげに見つめ合い、笑い合う。
ヒマリは7年前、リビ山の【黒の誕生】で、
母親を亡くしているから…。
…今は、2人だけの家族だ。
…俺たち兄弟と、同じ。
「お父さんったら、今日のためにね、
森でたっくさん、食材を集めてたんだよ!
ふふふっ。楽しみだなぁ~。
…あ!下で、アザミたちに会ったら、
『み~んなまとめて、お腹すかして来てね』って、伝えてね。」
ヒマリは嬉しそうにそう言って、
「いってらっしゃい!」と、笑顔で手を振ってくれた。
「分かった。ちゃんと伝えとくよ。
じゃあまた…夕方にな。」
俺も軽く、手を振り返して。
愛しいあの子に、(5時半、約束の場所で…。)と呟いた。
細道を戻り、山を下る大きな道へと合流する。
「よっし!1つ目のミッション、クリア!!
残るはあと1つー!おぉー!」
誰もいない山道で、再度気合を入れ直し。
勢いよく、山を下り始めた。
ーーー【黒の再来】まで、あと7時間11分ーーー
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