その時、携帯は止まっていた。

ナルミです。

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その時。携帯は止まっていた。

その時、携帯は止まっていた。

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鬱陶しい仕事終わりに見上げた青空からの陽射しが、これから始まるであろう夏の到来を感じさせるのは、
陽の長さのせいか。
何度この感覚を味わっても新鮮に感じるのは、場所か、時間か、はたまた気のせいか。
まだ、20数回目の夏だってのに。

駅に向かう商店街を歩きながら、このまま帰るのは、

「勿体ないぜ!」

と、太陽さんがってる気がして、取り敢えず酒でも飲みながら語り合いたいな、なんて
友達に連絡を取ってみようと携帯に手を伸ばして、その手を止める。

あ。携帯止まってたんだっけ。

気楽な学生ってコトもあるけど、学生だって気楽じゃないんですよ。
バイトしてても、お小遣いってたかが知れてますし。
そりゃぁ、後先考えずに遊びまくったし、過去の自分も恨みますけど、
「その時は、それでよかった!」なんて自分を無理やり納得させたりしながら、
未来の自分に、ツケを回してたんですよね、きっと。

さて、手元にある「ご利用停止のお知らせ」を見ると、まぁ1万程で携帯が復活する模様。
さて、手元にある財布を覗くと、福沢さんがお一人様いらっしゃる模様。

うーん。
バイトの給料日まであと、一週間。
今すぐコンビニに駆け込んで払えば、携帯は復旧するが、手持ちゼロで呑めない語れない。
さて、どうしたものか。

そんな事を考えながら駅前まで来ると、目の前にパチンコ屋さんが見えちゃいました。

「あ、これか!」

どーせ、このままだったら携帯も復旧しないし、ここはひとつ賭けに出で見るのもアリなんじゃない?
なんてココロの奥でアクマが囁いております。

十代の頃によく行った公営ギャンブルのひとつ。
しかし、あまりにも諭吉さん1人では心細い軍資金。
給料日まで諭吉さん一人で いけるこの状況を悪化させるわけにはいきません。
目的は、諭吉さん1人残して、携帯を復活させる事。
即ち、諭吉さん2人にすれば良いってコトですよね。

「ハネだ!」

ココロの悪魔が囁いた…と言うか、はっきり申し上げました。
「ハネ」とは、一般的にパチンコは(1998当時)単純に数字が揃えばアタリってヤツと、
役物と言う、物理的ギミックのvゾーンを目指すタイプの、大まかに分けて2種類ある内の後者の方。
前者の、数字が云々の方は、確率抽選なので、「運」の要素が強いが、
後者の「ハネ」は、釘や役物「ギミック」の癖に影響されることが多い。
当時、打ち止めシステムがまだ残っており(それ以前はもっとメジャーだったが)
ある一定の出玉が出るとその台は打ち止めとなり、解放するまで打てなかった。
打ち止め台の素晴らしいところは、そのある一定の出玉が出たと言う証拠なので、
その台を解放する事は、即ち、「デキが良い台」と言うことになる。
しかし、「ハネ」は投資金額が少なくて済む一方、リターンも少ないと言う現実もあるが。

その、「打ち止め台」を見つけて解放してもらい、いざ、勝負!
流石の解放台。落としも釘も、寄りも役も素晴らしいじゃねぇか…

果たして、パチンコ屋を出た時にはすっかり夜の帳が降りていた。
ほぼ、満月の横に光る金星が美しい。
ああ、こんな夜は気の合う仲間と酒を飲みながら語り合いたい気分だな。
そして、おもむろにジーンズの後ろポケットにある携帯に手を伸ばす。


その時、携帯は止まっていた。
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