魂を裁くモノ。

うさはら

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魂を裁くモノ。

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今日もまた忙しい。
ここは人がひっきりなしにくる役所。
と言っても人ではなく、人だったもの。いわゆる魂。
生前の行いを鑑みて、死後の行先を決める場所で、私は魂を精査して振り分ける審査官、という仕事をしている。

カウンターに陣取って、一人ひとりきっちり精査する。
その人の生まれてから死ぬまでの善と悪。
どんな人でも少なからず悪い部分はあるもので、だからと言って
全員が地獄に送られるわけではない。
行先は地獄、転生(現)、転生(異)、転生(人外)そして天国。
救いようのないものはどこにも行かず、消滅となる。
それをここで判断するのだ。

今日の一番目は、前世では重罪を犯して死刑になった者。
調べてみると、すでに二回現世に転生していた。
一回目の生でも人を殺めたが、更生の余地ありとして転生したのだ。が・・転生後も人を殺めていた。しかもずいぶん残酷な犯罪だったようだ。
二回目の転生でも強盗、殺人、などかなり悪質だ。
これはダメだな。もはや更生の余地なし。消滅・・っと。

次は・・政治家か。最初は改革に燃えて一生懸命働いていたけど、
いつの間にか欲にまみれて堕落し、国民に貢献することなく年老いて人生を終えた。
とは言え一回目の人生としてはなかなか上り詰めた方ではある。
前世の行いは記憶には残らないが、力を入れた分野は得意分野として魂に残る。
研究者として名を上げた者、スポーツ選手として名を上げた者、
政治家として名を上げた者・・。

前世の行いに現世の行いが積み重なるから、理解が早くて
行動も迷いがない。だから芽が出るのが早いし成長も早い。
何回も転生して同じ分野に打ち込むと、それだけ大きな結果を
出しやすくなるのだ。
なので人生一周目は何の経験もないから平凡な人生になりやすい。
失敗も多いから、比較的苦労することも多くなる。

一週目でここまで上り詰めるのはまれなのだ。

この者の次の人生には期待したい。現世に転生、っと。
こんな感じでサクサク振り分けていく。
そうやって仕事を進めていくと、ちょっと珍しい魂がやってきた。
「異世界・・元勇者?」
この魂はもう転生七回目の死なんですか。
最初は異世界で生まれ、異世界で凡人のまま生を終えた。
二回目は異世界で剣に目覚め、剣士として成長するも不慮の
事故で死亡。

三回目は現世に転生。と言っても戦国時代の日本だが。
ここでは剣士としての記憶が生きたのか、剣に秀でた武将として名を遺したようだ。そして天寿を全う、と。

四回目は功績を認められて再び現世に転生。ここでも剣士なのだがすでに泰平の世となった日本。刀は帯刀しているが切り合うことなどほぼない世界。やはり剣術に秀でており、指南役として活躍したようだ。

五回目は再び異世界。
こちらは戦乱の世となっていて、持ち前の剣術を見出されて最前線
で活躍。ただし剣と魔法の世界だったため、集団より突出したところを魔法で狙い撃ちされて死亡。

六回目の転生は現世の日本。
時代はすでに戦後となっており、剣は実用的なものではなく武術の一つだった。
やはりこの世界でも剣術に目覚め、武道の世界において名を遺した。
まだまだ名声が続くと思われたが、道路に飛び出した子供をかばって交通事故で負傷。以後、剣を振れなくなって自暴自棄になり自殺。

その境遇を惜しんだ前担当者により、異世界に再び転生、そこで勇者として活躍し、魔王を打倒して平安の世を勝ち取った。

以降は世界中から賞賛され、天寿を全うするまで幸せな生涯を送った、とのこと。

「これは・・なかなかすごい経歴ですね。っと、これはもう天国行ですね」
この仕事をしているといろんな人の生き様を見ることができる。
善人、悪人、報われる人、そうでない人・・。
そしてふと思う。自分が死んだらどうなるんだろうか。
他人の人生を裁く自分は善人なのか、悪人なのか。
死んだらどこに行くのか、そもそも前世はあるのか。

・・・・考えても仕方ない。

今はとにかく魂の選別を急がないと。
目の前の仕事に戻ると、背後に人の気配がした。
ああ、私の上司だな。

私の後ろで立ち止まったので、何か用なのかと後ろを振り向いた。
カメラが後ろを向き、上司の姿を確認する。
「二十三号は順調に魂を裁いているな。特に問題なし、と」

私の背中についているモニタを覗き込みながら、安堵したようにうなずいた。
「それにしても、魂の選別をコンピュータにやらせるなんて倫理的にどうなんだろうな。数は裁けるようになったけど納得しにくいな・・。そういえば二十一号のプログラム、もうアップデートは終わったかな?」

私は再び前を向き、次の魂を裁くべく仕事に戻っていった。

次の魂はどんな生き様だったのだろう。思わず熱くなるCPUに
放熱ファンが唸りを上げて冷却を促すのだった。
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