ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上

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九章

王都 6

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 にしても、かなりの視線を感じる。
 一応、街の外ではあるのだが。
 門を出てすぐ側。
 森との間に広がる草原だからね。
 視線がよく通る。
 こんな所に飛竜が降りてきたらそらそうなるか。

 一口に視線とは言っても、内容はさまざま。
 門番なんかは明かビビってたけど。
 まぁ、いざとなれば戦わなきゃならんし。
 無理もないか。
 この街でドラゴン便使うやつなんていほぼ居ない。
 せいぜい領主が本当に急ぎの時に使うかどうか。
 その程度の数じゃね。
 一目で判断できないだろうし。
 警戒するのも頷ける。

 それに比べ、住民たちは呑気なものだ。
 壁の外には出て来てないが。
 それでも門のすぐ内側に集まっている。
 兵士と同じでドラゴン便だとは分かってなさそうだけど。
 飛竜なんてそう見るものでもないしね。
 他の魔物ならともかく、ここまでくると現実味が無い。
 認識が麻痺しているのかもしれない。
 前世でも似たようなの見たことあるな。
 犯罪とか災害とか。
 危険な場所に集まって、結果被害が拡大するとかいう。
 野次馬根性猛々しい。
 いや、俺も住人の立場なら野次馬してた可能性大だが。
 それはそれ、これはこれである。

 完全に注目の的だ。
 ま、仕方ない。
 これで目立つなってのが無理な話なのだ。
 ノアとの件で既に手遅れ感もある。
 転移バレでギルドやら国の注目を買う方がめんどくさい。
 誰が用意したのかってのも。
 薄々勘付かれてるだろうし。
 この方向なら許容してもいいかな。
 せいぜい、また受付嬢に絡まれる材料が増えたぐらいだ。

 ……それが狙いでは?
 だとしたら、ノアなかなかの策士である。
 自信なさ気だったあの頃とは大違い。
 良いのか悪いのか。
 完全に外堀を埋めに行かれてる気がする。
 ま、一線超えた時点で手遅れ説。
 別に束縛してくる感じもないし。
 匂わせみたいな物だ。
 これぐらいなら別に不都合もないからね。
 可愛いものだ。

「ロルフ様でお間違い無いですか?」
「はい」

 飛竜の背中から青年が降りてきた。
 調教師なのだろう。
 ドラゴン便の御者さん。
 結構なエリートだ。
 強さで言えば、英雄の領域一歩手前ぐらいの実力かな?
 魔力量的にもそれぐらい。
 冒険者で言うならB程度って所か。
 うちのギルド長と同等。
 ……そう思うと大した事ないように感じる。

「何か、身分を証明するものはお持ちですか?」
「これで大丈夫かな?」
「ありがとうございます。確認いたしました」

 身分証を求められて、とりあえず冒険者カードを提示した。
 これぐらいしかないし。
 Dランクのカードなんて証明になるのか微妙な所だが。
 普段ならともかく。
 ドラゴン便なんて高級品だし。
 ただ、そこら辺はノアの方から事前に伝えてくれていたのだろう。
 問題なく受理された。

 ま、他にも容姿とかも聞いてるだろうしね。
 そこと合わせて。
 事前に伝わってるのと同じなら十分って事なのだろう。

「このまま出発してしまって問題ないですか?」
「大丈夫です」

 今着いたばかりだが、もう行くらしい。
 飛竜の体力ならそんなものか。
 どこから来たのかは知らないけど。
 休憩は不要。
 飛ぶ事自体は大して疲労もしないのだろう。

 御者に促され、車内に乗り込む。
 流石に背中に乗ったりはしない。
 危ないからね。
 なかなか豪華な内装。
 普段使うような安い乗合馬車とは大違いだ。
 座席もふかふかしてるし。
 ソファーなような感じ。
 これなら腰を痛めることもないだろう。

 まぁ、貴族とか豪商とかがメインのお客さんだろうし。
 値段も値段だからね。
 そこらへんもしっかり気を使っているのだろう。

「飛び始めだけ少々揺れます。お気をつけください」

 それだけ言うと、少ししてふわりとした浮遊感。
 もっと揺れるものだと思っていたが。
 本当に少しだけだな。
 羽ばたいてこそいるけど、羽で飛んでる訳じゃないしね。
 メインは魔法。
 羽は空中でのバランスを取っているに過ぎない。
 だから、だろうな。
 仮に羽で飛んでいたなら車内でもみくちゃになってた。

 ぐんぐんと高度を上げていく。
 街が見える。
 もうかなり下。
 全体を見下ろすように。
 小さな街だ。
 いや、他と比べればこれでも大きいんだけど。
 少なくとも、港町や温泉街よりは。
 前世と比べるとって話。
 どうしても街全体を壁で囲う必要があるから。
 魔物が危ないし。
 規模も小さくなってしまうのだ。

 空を飛ぶというのは気持ちがいい。
 自分で飛べない訳ではないが。
 それとこれとは話が別だ。
 ゆったりと腰掛け、窓の外を眺める。
 贅沢なひと時だ。
 この速度なら王都まで数時間もかからないだろう。
 便利な乗り物である。
 値段的に普段使いしようとは思わないけど。

 多分、この利便性は前世を超えてると思う。
 滑走路とかいらないし。
 飛行機よりよほどお手軽。
 あ、でもヘリって選択肢もあるのか。
 経験ないからなぁ。
 どっちにしろ。
 庶民の乗り物じゃはないって点では同じだな。
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