その眼を開け

ルカ

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終わりは突然に

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「もう朝か…」
窓から差し込む太陽の光が朝を告げているが少し認めたくない気持ちに囚われた。
二度寝でもするかと思案していると

「秀人そろそろ起きないと遅刻するわよー!」

母である瞳の一声に意識が覚醒していく。

「分かってるー!」

とりあえず聞こえるように返事をして学校へ通うため制服へと着替える。
学校指定のブレザーへと着替え終わり、1階にあるリビングへ降りるといい匂いが漂っている。
瞳特製のフレンチトーストと挽きたてのコーヒーを飲みそれらが身体に染み渡っていく。

「やっぱり母さんのフレンチトーストとコーヒーは美味いね。」

「あら、ありがとう♪」

ハートが飛んできそうなウインクに多少苦笑いしつつ母の料理に感謝していると、

「そうそう、今晩は久しぶりにお父さん帰ってくるわよ♪」

「戻ってくるのか…珍しいね。
研究が終わったか、はたまた煮詰まって息抜きで帰ってくるのか…」

(…まあ息抜きってところだろうなぁ…)

秀人の父である和人は考古学者であり世界を飛びまわることも多い。
そのうえ日本にいても自身の研究室に籠っているため、家にいることの方が稀なのだ。

「とりあえず学校に行ってくるよ。」

そう言うと秀人はバッグを手に取り玄関へと向かう。

「行ってらっしゃい、気をつけて行ってくるのよ。」

瞳が食器を運びながら声をかける。
いつもの平和な日常を背中に感じながら、秀人は家を出た。

「おはよー!相変わらず怠そうな顔してるのね。」

毎度の事ながら少し呆れた顔で沙夜が話しかけてくる。
沙夜は幼馴染でクラスメイト、そのうえ家も隣ということもあり行動を共にすることが多い。
こうして毎朝待っているのもいつものことなのだ。

こうして始まるいつもと変わらない朝。
授業もいつも通り真面目に受け、昼食もいつものように沙夜を含めたクラスメイトと食べる。
そして何事もなく迎える放課後…

(父さんを迎えにでも行くか…)

いつもの日常と違うとすれば気まぐれに和人を迎えに行こうと思ったこと。
今までであれば家で帰宅するのを待っていたのだが、
今日は和人の研究室を覗いてみたいという好奇心が秀人を和人の研究室へと向かわせた。

和人が勤めている研究所は目黒区にある為家からもそこまで遠いというわけではない。
学校からもさほど時間がかからずに到着した。
小さい頃から何度か来ているため、
秀人は特にアポを取ることなく入ることが出来るようになっている。
和人が忘れ物をして秀人がよく届けに来ていたという別の理由もあるのだが。

「秀人です。父に会いに来ました。」

顔パスとはいえ一応受付で来ていることを伝えておく。
前に1度入れ違いになったこともあるからだ。

「あら、秀人久しぶりね。
お父さんなら今会議に出ていると思うから研究室で少し待っててね。」

「綾姉ありがとう。」

受付のお姉さんにしては随分フランクに話しかけてくるのだが、
小さい頃によく遊んでもらっていた為綾姉改め綾香とは今でもこのような感じなのだ。

綾香との挨拶も終わり和人の研究室へ向かう為エレベーターに乗る。

(父さんの研究室は4階だったな…)

ここの研究室は敷地面積が東京ドーム5個分というもう無駄にデカイ広さを誇るのだが、
和人の研究室は4階全てというこれまた広いものとなっている。
そのおかげで迷うことはないのだが何度来ても落ち着かないのである。

「ここはデカすぎるんだよ、まったく…」

呆れ半分疲れ半分といった声で愚痴を漏らす。
和人の研究室では基本和人1人で研究している為、今は秀人1人となっている。

「何か面白いものでもあるかな…」

退屈しのぎになるような物があればと、和人のデスク周りを物色する。
デスクの上には資料と思しき紙が散乱していて秀人は少し苦笑いする。

(よくこれで仕事が出来るな…)

デスクの上に研究中の物を出しっぱなしというわけでもないだろうということで、
引き出しを調べていく。
引き出しの中にはこれまたあらゆる物が詰め込まれている。
…その中で3つ目の引き出しを開けた時、秀人は違和感を感じた。
この引き出しだけ物が何も入っていないのだ。

(中に何も入ってないにしては綺麗すぎる…)

中に何も入っていないのなら頻繁に開ける必要はなく塵や埃が少なからず溜まっているはずである。

「ということは……こっちじゃないか…んー…
おっ、あった!」

引き出しの底を調べ次に側面を調べたが何もない。
しかし、上を調べてみると鍵がテープで貼ってあるのを見つけた。
こんな隠し方をしている鍵が重要でないはずがない。

この部屋で鍵があるのは隣の研究室しかない。
これは以前から来ている秀人は既に知っている。
鍵を取り隣の研究室の方へと向かうなかで昔のことを思い出していた。

『なんで父さんの研究室には鍵を掛けてるものがあのドアしかないの?』

『当然の疑問だね、秀人。
それは父さんが鍵を掛けることがあまり好きじゃないからだよ。』

----(そういやそんなこと言ってたっけ)

思い出に少し苦笑いしているうちにドアまで辿り着いた。
ゆっくり鍵穴に先ほどの鍵を差し込み回すと開いた。
緊張しつつもドアを開けると中は意外と狭く10畳ほどしかなかった。
しかし、その中で明らかに異様で研究対象であろう物が鎮座していた。
それは中央のデスクの上で薄く発光していた。
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