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第1章 悪役令嬢がメイドに至るまで
曲がり角なんて作ってはいけない。
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「どこに消えたんだよ。あんな事件が起きた所なのに一人になるなんて、刺客の一味だと疑って欲しいのか襲って欲しいのか」
ぼそぼそと呟く美少年が一人。一定の速さで、黙々と廊下を歩いていた。
美少年は未だに、捜している人物と出会えていなかった。布を被った謎の人物を抱えた騎士が、その場で待つようにと言ったというのに。どこへ行ったのか。
怒りを抑えている為か、後ろから、徐々に距離を詰めてくる長髪の人物に、美少年は気付かない。
はぁ、と可愛らしい唇から溜め息が漏れ出る。
美少年は王城を歩き回り疲れていた。これも、一人の医師の所為だ。苦手な人を態々捜し回るなんて苦境だが、これも殿下の命だ。仕方がない。王太子直々の命なんて光栄だ。
はぁ、と美少年が何度目か、数えたくもない溜め息を吐いたと同時に、背中に不自然な気配を感じた。
疲れで注意が散漫になっていたのだろうか。
美少年は反射的に振り向いたが、時すでに遅し。
これも、あの医師の所為だ。だいたい、なぜ自身が迷子になる人物だと自覚しない。何度迷惑を掛ければ気が済むんだ。お前は医者だろう。緊急事態を考えないのか。
なぜ一人になりたがる。寂しがり屋の癖に。お供や先輩医師、重鎮まで吹っ切って迷子になるなんて、意味が分からない。いったい何がしたいんだ。
美少年が相手の姿を目に入れた時には、もう逃げ場はなくなっていた。柔らかそうな、淡い紫の髪が視界に入る。
美少年の前には麗人の体。左右には麗人の長い腕があり、美少年の背中は固い壁に触れてしまっている。
身長差もあり逃れることはできない。
本当に、麗人は何がしたいのか。
せめてでも抵抗しようと、美少年は麗人の視線から逃れるように顔を背けた。
「それは君もでしょう。もしかして……私に襲って欲しかったのかな」
初め、何の話か分からなかったが、どうやら美少年の独り言を聞いていたようだ。さて、どこから聞いていたのか。
麗人は色気たっぷりに囁きながら、片手で軽く美少年の顎を掴み自分へ向けさせると、自らの端正な顔を近付けた。
黄金の瞳と、銀を帯びたピンクの瞳が交差する。
麗人の卵形の顔が、美少年の淡い瞳に映った。
固まってしまった美少年を目にした麗人は、首を傾げると、目を細め、美麗に微笑んだ。
それを目撃する精悍な男が一人。
曲がり角なんて、作ってはいけない。
ぼそぼそと呟く美少年が一人。一定の速さで、黙々と廊下を歩いていた。
美少年は未だに、捜している人物と出会えていなかった。布を被った謎の人物を抱えた騎士が、その場で待つようにと言ったというのに。どこへ行ったのか。
怒りを抑えている為か、後ろから、徐々に距離を詰めてくる長髪の人物に、美少年は気付かない。
はぁ、と可愛らしい唇から溜め息が漏れ出る。
美少年は王城を歩き回り疲れていた。これも、一人の医師の所為だ。苦手な人を態々捜し回るなんて苦境だが、これも殿下の命だ。仕方がない。王太子直々の命なんて光栄だ。
はぁ、と美少年が何度目か、数えたくもない溜め息を吐いたと同時に、背中に不自然な気配を感じた。
疲れで注意が散漫になっていたのだろうか。
美少年は反射的に振り向いたが、時すでに遅し。
これも、あの医師の所為だ。だいたい、なぜ自身が迷子になる人物だと自覚しない。何度迷惑を掛ければ気が済むんだ。お前は医者だろう。緊急事態を考えないのか。
なぜ一人になりたがる。寂しがり屋の癖に。お供や先輩医師、重鎮まで吹っ切って迷子になるなんて、意味が分からない。いったい何がしたいんだ。
美少年が相手の姿を目に入れた時には、もう逃げ場はなくなっていた。柔らかそうな、淡い紫の髪が視界に入る。
美少年の前には麗人の体。左右には麗人の長い腕があり、美少年の背中は固い壁に触れてしまっている。
身長差もあり逃れることはできない。
本当に、麗人は何がしたいのか。
せめてでも抵抗しようと、美少年は麗人の視線から逃れるように顔を背けた。
「それは君もでしょう。もしかして……私に襲って欲しかったのかな」
初め、何の話か分からなかったが、どうやら美少年の独り言を聞いていたようだ。さて、どこから聞いていたのか。
麗人は色気たっぷりに囁きながら、片手で軽く美少年の顎を掴み自分へ向けさせると、自らの端正な顔を近付けた。
黄金の瞳と、銀を帯びたピンクの瞳が交差する。
麗人の卵形の顔が、美少年の淡い瞳に映った。
固まってしまった美少年を目にした麗人は、首を傾げると、目を細め、美麗に微笑んだ。
それを目撃する精悍な男が一人。
曲がり角なんて、作ってはいけない。
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