菅原一月短編集R-18

菅原一月

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本の虫

本の虫は君のために羽化する。

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北村悟。17歳。
本を読みながら、寝転がっている時が一番の幸せ。


スズメがピヨピヨ。ぽかぽか暖かな日のHR。
スゥー。スゥー。

「――転校生の――。――美鈴さんだ。」

スゥー。スゥー。


……こら。北村何寝てんだ。
隣の武蔵野くん(おそらく)に腕をつつかれる。

うおあっ!
俺は急な目覚めに思わず席から立ち上がる。
椅子の引きずる音が、ギギッと鳴った。

「!!」


クラスの皆の視線が自分に集まり、俺はボサボサになった髪の毛を慌ててひっぱる。

どうやら教室のよう。
窓際の日当たりがとても良くて、ついつい睡魔に誘われてしまった。今日も。
昨日、Michael Faraday伝記を夜遅くまで読んでしまったからかもしれない。
ちなみに、 Faradayは今日「電気学の父」と呼ばれる19世紀の偉大な科学者である。

ベンゼンの発見・塩素の液化・電解の法則・電磁誘導の法則など業績に枚挙はないが、何よりも超人的な科学者なのにも関わらず、労働者階級の出身で、正式な科学教育を受けていないが、長く努力を積み重ね、それを惜しげもなく後続こうぞくに教えた。

そして、何よりも僕が彼を好きな理由は、清貧を好み、平和を愛し、教育熱心であったことで――



きれい。



俺は、目を奪われる。
抱きしめたくなるような華奢な上半身に相反し、女の色気をかもし出す女性らしい腰周りに長く伸びる足。
バンビみたいな可愛い顔なんだけど、目はまっすぐ前を向いて――

「じゃあ、北村の後ろでいいか。」

スカートが粋に揺れる。
颯爽とバランスの良い手足が動き出す。
彼女以外の、すべての景色が停止してみえた。


ドクンッドクンッ。
バクバクなる心臓を押さえ、ふらりと椅子に腰をかける。


まっすぐな目は俺を一瞥し、くすっと笑う。
顔中に血が上ってくる。俺は頬をパチっと叩いて冷静を装う。




今、思い返すと一目ぼれだった。

彼女の名前は、国立美鈴さんと言う。
なんて、カッコイイ苗字なんだろう。
本で顔を隠しつつ、ボサボサの前髪の間から、彼女をちらちら観察する。


「なーんだ。先約がいたんだねー。」



その日は、お日様の陽でポカポカの屋上に寝転びながら、ちょっと格好良くて憧れている坂口安吾の『白痴』を読んでいた。程よく風がなびいて、読書日和だった。

屋上は、滅多に人がこない。

だから、吃驚した。
油断していた俺に話しかけてきた人物が、憧れの国立さんだったことに。


なかなか返事をしない俺を見下ろして、国立さんは爽やかに笑っている。僕の上には彼女の影が被さる。


「活字好きなの?」

質問を繰り出した彼女は、笑ったまんまだ。
初めて……彼女に話しかけられた。嬉しくて、たまらない。


「う…うん。好き。」
質問の内容が、YES・NOしか答えられない。

「そっかぁ。実は私も推理小説や警察小説が好きなんだぁ。」
そういって、国立さんは指を折りながら、何人か作家をあげる。

あ。俺の知っている作家さんだ!!
国立さん、本読んでいる所みたことないけど、話を聞いていると色々な作家さんの本に手を出している様子。

「ーーーでも、どこの本屋さんにいっても売ってなくて…。」

そういう国立さんを父の希少本コレクションをエサに、俺の家(詳しく言うと父の書庫)に来ても良いよ、むしろ来てよアピールをする。

「北村んち、いってみたい。」


その日は午前中授業で、お互い予定がなかったので、一緒に俺の家に向かう。
俺のちょっと後ろを彼女がついてくる。
彼女の視野に少しだけでも、自分がはいっているという事実に、背中が焼けるように熱くなってくる。

「国立さん。どうぞ。」
母が手掛けたイングリッシュガーデンを通り過ぎ、こじんまりとしたlibraryに到着する。

重厚感のあるステンドグラスドアを開けると、そこは本の虫にはたまらない。パラダイス。

となりの国立さんの本の虫だったようで、横顔には、好奇心でキラキラした目が輝いている。


「触っちゃ――いけないものってある?」
そう聞いて、彼女は書庫の奥に進んでいく。

「大丈夫。ただ、もろそうな本は優しく触って。」
コクンと頷いて、彼女は手をのばす。

「これ、30冊しか増刷されなかった!」
彼女が手に取ったのは、知っている人は教育関係者の古本好きだけであろう薄緑色の本であった。

うおお。その本のこと知っているの!?
俺は吃驚した。今まで、この本のことを知っている人は父しか会った事がない。
実は、希少価値の高い本で、マイナーなのにも関わらず1万円以上で取引されている良本である。

もしかしたら、国立さん、古本も好きなのかなぁ。

「ほぉ。国立さんって、なんか変わっているね。」
俺も古本屋いくけど、同い年ぐらいの子なんて全然みないもんな……。


「そうかな。」
と痒くなさそうな程よく日焼けした頬をポリポリかいて、彼女はいうが、もう頭の中が本でいっぱいなのだろう視線は定まらない。


「その本、俺も読んだけど、なんだか鼻水たれよーが、いたずらしようが神から与えられた人間は大切な子という文章は、なんだか俺の人間観を少し変えたかも。」
俺が先ほどの本について、そう述べると、彼女も目を見開く。父の図書は、残念ながらすべて既読である。
彼女は、嬉しそうに目を細め、俺にこう返す。


「私も、この本を読んで。どんな人間でも愛されるべきって安心したんだ。」


それからも、二人でたくさんの書物を前にして色々な話をした。
いつの間にか目の前にある書物よりも、国立さんとの話しに夢中になって、時間を忘れた。

小さな照明では心もとないぐらい、外は暗くなってきている。

「あ、北村。親心配するから、私帰る。」
そう彼女が思い出したように言うと、なんだか名残惜しくてたまらなかった。


こんなに話が合う人と出会ったことはなかった。

ベッドに座り、今日一日を振り返る。

綺麗なだけじゃなくて、チャーミングで、俺と同じで活字が好きで。


その日の夜、俺はドキドキして眠れなかった。



それからの学校生活は、2倍も3倍も楽しかった。
大好きな国立さんと本の虫である俺との、本の話。楽しくないはずがなかった。



「あの場面は、本当に怖いのは人間の心って思ったよね!」

そう二人で盛り上がる。今年ホラー小説大賞を受賞した小説について盛り上がる。
ページ数は上下巻合わせて1000ページを越える大長編である。国立さんは、当然読んでいて二人で人間の業の深さについて、意見を交わす。


俺は、読書数だけはおそらく同年代の誰にも負けないから、オススメの一冊を彼女に貸し出す。
そうすると彼女は、その日のうちに絶対それを読み終えて、ニンマリと返却してくれる。


そんな俺でも、あまり読まない分野がある。
恋愛物である。


「これ、すっごく良いから!!北村。」
いつからか、呼び捨てで呼んでもらえるようになった。
そして、俺は国立さんから差し出された可愛らしいパステルカラーの表紙のそれを急いでカバンにしまう。



俺は、ベッドに横になり借りた本を読む。
た、確かに、面白いが。
国立さんから借りた本の内容は、いい年齢をした生きるのになれた男性のもとに、がさつでボーイッシュな女の子が押しかけてきた話。

すっごい。なんていうか。なんで、こんなにキス描写がエロいんだよ…っ!!



数日後、俺は本を彼女に返す。
「国立さん。これ。」

本を受け取り、最後まで読んだか確認して彼女は、冷やかすような目で俺に問う。

「どうだった?」

「なんか、エロ小説より断然エロかったです!」
俺は、そういって早足で逃げさる。

どうやら俺は彼女に、からかわれたようだ。


そんなこんなで、彼女と本とともに、穏やかな日々は瞬く間にすぎた。



だけど、そう。あの日を境に俺と彼女の関係は変わっていったんだ。


「国立さん、どうしたの。屋上じゃないと話せないこと?」

国立さんは、大きく息を吸って吐く。


「北村くん!!
ずっと、あなたのことが好きでした。付き合ってほしい。」

えええええ。
ああああ。ってええええええっ???

まって、なんて言った?Pardon? 

ずっと、あなた。今、目の前に俺しかいない。あなた好き。と言うことは俺が好き。
嘘だ。
そんなはずはない。

だって、俺にとって彼女は、砂漠に咲いた一輪の花のような。暗闇の中の唯一の光り。
つまりは、綺麗で、聡明で、チャーミングで。

頭の中がぐちゃぐちゃになる。


学年でも、クラスでも、人一倍、いや数倍キラキラ輝いていて。

そんな彼女が、俺みたいなボサボサ頭の、容姿もどちらかというと不可の根暗男を好きなはずがあるのだろうか。

もしかして、これはいつものからかいか?

「く、国立さんが、お、俺とそんなはずはない。」

マイナスの掛け算がプラスなはずはないのである。

「く、国立さん。からかわないで。国立さんのような今時の女の子みたいに可愛い子が俺のこと好きなはずないじゃん!!」

そう。俺と同じように本を愛する彼女は、俺と違って飛びっきり可愛くて。そんな彼女が俺みたいなダサイ本の虫なんて好きなはずがない。

俺は、信じていた彼女に試されたこと。
なんだか、そのことが辛くて、その場を立ち去る。



今になって、思うとなんで俺は逃げたんだろうと思う。

俺に告白してくれた彼女の顔は、真剣だった。

そして、告白してくれた彼女を避けた意気地なしの俺。
仲直りしたかったけれど、揺さぶられた俺の奥で燻っていた恋心は急に目覚め、意識しすぎて話しかけられなかった。


友人ではなく、男として彼女を見る俺が、友人に戻ることなんてできない。





ガタンゴトン。
電車の車輪が レールの継ぎ目を通過する音。通勤時間の小さな揺れを、俺は嫌いじゃない。




今日は、彼女に初めて出会った日に気候が似ていた。

なんで、あんな風に接してしまったのだろう。
そう気付いたのは、卒業してすぐだった。

例え、からかわれても良かったんだ。
あちらが恥ずかしがるぐらいに、開き直るべきであった。

もし、あの時逃げなければ、今彼女とどんな本で盛り上がっていただろう。

思い出す悲しそうな彼女の顔。

慰めてあげたかったけれど、欲望にまみれた俺の手で、彼女に近づくのがこわくて。


でも、自分は彼女が欲しくてたまらない。今も。


自信が持てないこと。
そのくせ、心を解き放つことができなかったこと。

それが俺の後悔。


俺は、高校を卒業した後、工学系の大学に進んだ。
そこで、唯一無二の親友と出会う。

やつの名前は、栗山哲という。
だいぶ年上の声優みかりんの大ファンで、声優ネタだけではなく、幅広い知識と明るい性格で話していてとても楽しい。 
くるんくるんにワックスで髪をオシャレに立てている栗山に、俺は何で、そんなに身だしなみに気を使っているの?と聞く。

「俺、いつ、みかりんに会っても、恋してもらえるようにベストでいたいんです!」

そう返事をした栗山は、まるで恋をしたばかりの青年のようで、そのひた向きな姿をみると足りないパーツがはまった気がする。


それから、俺は変わった。
いつ、彼女に、国立さんにあってもいいように自分を整える。

まずは、猫背を直した。
髪の毛も、おしゃれな美容室にいって切った。
俺は、その帰り全身の映る鏡を買った。

出てはいないけど、筋肉がついていない腹。
運動をしよう。腹筋マシンを購入する。

眉毛ももう少し、整えた方がいいかもしれない。
整え方が分からない俺は、はじめてファッション雑誌を購入した。

嗚呼。
彼女は、今どのように成長しているだろう。
昔からバンビのような可愛らしい顔なのに、妙に大人の雰囲気を漂わせた子だった。

おそらく、昔よりもさらに、綺麗になっているのだろう。

そう考えると、億劫な運動も、小難しいお洒落を頑張れた。

ちょっと、見れる体になってきて。
髪の毛を切って、雰囲気も分かるようになってきたからか、女性によく食事に誘われるようになってきた。

しかし、どの女の人と話しても、あの時の――

国立さんと話した時のような興奮や感動はなかった。




ガタンゴトン。


席が開いたので座る。


目の前にいる女性に目を奪われる。
優しい色合いのパステルカラーのフォーマルスーツ。
スーツスカートからは、出ている脚は上品に閉じられている。
その女性が手にしている本は、以前俺が国立さんに貸したままになっている本だった。

胸が一回ドキンとなった。
俺は、おそるおそる視線をあげる。


!!
国立さんだ。

ゆったりと巻かれた優しげなカール。
相変わらずバンビみたいな綺麗な顔。
そのくりくりとした瞳は真剣に目の前の本を読んでいる。


白い頬を、静かに涙が伝う。


ねぇ。国立さん。何故、泣いているの?







「鶯原~。」
静かに音も立てず泣いていた彼女は、突然本を畳み席をたつ。
どうやら、彼女の降車駅らしい。


俺も、すぐ立ち上がり、彼女の後を追いかける。

相変わらず颯爽と歩く彼女に近づき、彼女の手を掴む。


彼女は、急に手を掴まれたことに驚き、何故か分からず首をかしげている。
頭の横には、はてなはてなが出ていそうだ。

でも、驚きのためか、彼女の涙は止まったらしい。


「美鈴……。」
俺が、彼女の名を呼ぶと、俺の声に聞き覚えがあったのか驚いたような顔をする。


そして、比較的周りに響く大きさで「北村?」と叫んだ。

俺は何だか、俺の名を呼ぶ彼女が愛おしくて仕方がなくて、彼女をこの胸に抱きしめる。

驚いて、彼女は先ほどまで読んでいた俺が貸していた本を駅のホームに落とす。


拾った本は、確かに彼女に俺が貸した本で。
この本を、今の今まで大切に持っていてくれたの?
決して、悲しい話ではないのに、なんで泣いていたの?

もしかして――

もしかして、俺を想って泣いていてくれたの?

「ねえ。美鈴。これ…期待していいの?」
ただ、分かるのは。
もう。彼女を離したくないってこと。



俺は国立さんの手をとり、オールドジャズが流れる落ち着いたBarに連れて行く。
最初は動揺している様子だった彼女も次第に落ち着いてきたからか、以前のように言葉を発してくれる。
相変わらず彼女は、たくさんの本を読んでいて。
とても、幸せそうにそのことを話す。

ペンダントライトの穏やかな光。

とても魅力的な彼女。


「北村と話すのは、本当楽しい。」
俺も。


「これからも、読書友達でいたい。」
そう彼女が、続けていった時、俺は自分の中の何かが崩れ落ちてくる気がする。

嫌だ。
友達でいい?そんなのは嫌だ。



俺は、飲みやすくて尚且つアルコール度数の高めなカクテルを勧める。
彼女は、それを警戒もせず飲む。

4杯目のカクテルで彼女の目はアルコールでとろんとした目になる。

美鈴……。俺の部屋、行こう?そう囁いて、俺は千鳥足の彼女を自分のマンションに連れて帰る。


ファッション雑誌を読み漁ったソファに彼女を座らせる。
自分の部屋に、彼女がいるなんて。すごく不思議で。夢をみているようだった。


彼女は無防備に、小さな唇からスゥースゥーと寝息を立てている。
座った時に、膝丈のスカートはめくれ、太ももがちらちらと見える。スカートごしでも分かる。彼女のとても女性らしい腰周り。ワイシャツがスカートにインしているからか、豊満な胸が強調してみえる。



彼女に触れたい。
理性より、本能が打ち勝って。

俺は、ワイシャツに窮屈に隠された彼女の胸を開放する。
ボタンを一つ一つはずして出てきたのは、刺繍が可愛いブルーのブラジャーに包まれた日焼けしない白い胸。

すご。きれいだ。

誰も触れてはいけないような、そう。神聖な領域だった。

でも、俺は。もう、壊れてしまって。
自分で、彼女を埋め尽くしてしまいたくてたまらない。

柔らかいのに、はりがある乳房。この胸の先はどうなっているのだろう。

そこには、桃色の小ぶりな乳首があった。
すごい。かわいい。

俺は、激情にかられるようなに乳首にむしゃぶりつく。
 
「ひゃ…は…うっ…。」
そのいじらしい乳首を舌で転がすと、彼女の口から寝息ではない可愛らしい声が漏れる。
もしかして、感じてくれているのだろうか。


俺はもうどうしようもない気持ちになり、彼女の服を脱がせる。
そして、華奢でありながらも、女性の色気を発するいやらしい腰つき、つんと上向きのおっぱい。

この世のものとは、思えないぐらい。きれいだ。美鈴。

ボクサーパンツを脱ぐと、俺の一物は、彼女の素肌が近くにいるのを感じ取ってか、さらに大きく膨らむ。

小さい乳首を、俺がたくさん舐めて大きくしたい。
俺は、そう思い乳首を舐め、甘噛みする。

「…ひゃうんっ。」

「へ…へっ…。きたむらぁ。」
そう俺の名を呼ぶ彼女の目は、異性をみる女の目で、俺の心は安堵する。

「なんで。読書友達になろうなんていうの?」

「だ、だって、久々に会えて、本について話せて楽しくて。これからも話したいって。」

「じゃあ、なんであの時、俺に告ったの?もうあれ以降、平常心になれなくて、美鈴のこと女としてみていたの必死に誤魔化していたのに。」


「あの後から、美鈴をみると意識しちゃって。駄目だった。」
一度、意識しだすとそれは止まらなくて。


そう。想像の中で、何度彼女を押し倒し、抱いたか。

「でも、さっき俺の貸した小説を大切そうに読んで泣いている美鈴をみて、やっぱり諦められないと思った。」

「俺、いい男になったでしょ?」
努力したのは、君のため。


「俺に夢中になって……。」
そういって、俺は覚醒した彼女を押し倒す。




俺は、優秀な雌である彼女に、いかに自分が優秀な雄であるか見せ付ける。

彼女が可愛らしく喘声をあげた部位を、丁寧に舌でなぞっていく。

「美鈴ちゃん。昔、エロ小説あそびで渡してきたじゃない。俺、それにあること全部美鈴ちゃんにしたいと思っていたから。」


そして、その時渡された本のヒーローのように、僕は彼女をこの腕に閉じ込めていたくなるほど狂おしく恋焦がれている。

「はへ……だめらよぉ……。」

「ああいう本を男に渡したら、どうなるか身を持って教えてあげるね。」
俺は、彼女の柔らかそうな太ももを触る。


そして、太ももの、その奥へ。

くちゅる。くちゅ。

「濡れてるね…感じてくれたんだ?」
彼女の秘部からは、とめどなく蜜がこぼれている。

俺はそのこぼれた蜜をすくい、舐めとる。
初めて、舐めたのだけど、意外と大丈夫だ。というか、愛おしい彼女のものだからか、少し美味しく感じられる。


「ふぅんっ…らめ、らめ。いっちゃうよ。いっちゃう。」
まだ、お酒が残っているのであろう舌足らずな彼女は、逝ってしまったのだろう腰をびくんびくんさせている。


かわいい。
すげぇ、かわいい。

「らめよ。感じやすくなってるから。」
愛液を意地悪くすする俺を止めるが、その言葉も、髪の毛を掴む手も抑止力にはなっていない。

どうぞ。思う存分感じて。


涙目で、再度逝きそうになっているのだろう。懇願してくる彼女に意地悪したくてたまらない。

「うわぁ。また逝っちゃったの?美鈴ちゃん。可愛すぎる。」

意地悪っていうか、繋がりたい……。

しかも、何も隔てず。


俺は、凶暴にそそり立ち白い粘液こぼす一物を、可愛らしい花弁に宛がう。


ズブッ。ズブブ。

「はへ。…ああっあ!」

彼女が急にきた圧迫感からか、辛そうな声を出す。

ああ。
やば。
たまらないわ。


ねっとりと絡みつく肉壁。蜜口は、その癖しっかりと根元を銜え込んで離さない。
故意じゃないであろう蠕動。ちゅぱちゅぱと嬉しそうに亀頭に口付けてくる子宮口…。

即座に果ててしまいそうになるぐらい、彼女の胎内は壮絶にエロかった。

「おなかあついよぉ……。」
性の喜びを感じ始めてしまった、快感に濡れた目でそういわれると、気が狂いそうになる。


「この奥に、びゅーびゅーして冷ましてあげるからね。」
自分でも眩暈がするほど、変態なことをいっている自覚はある。

「びゅーびゅー?」
そんな俺の変態な言葉を復唱して、もう理性が。

そう、と告げて俺は、激しく腰を動かし、エラのはった亀頭で子宮口をたたく。
彼女の膣奥をたたくと、射精を促すように根元からギュギュと膣内が蠕動していく。

「そんなに、物欲しそうにされたら……本気でかけちゃうよ?」
もう、思いの丈をぶつけてしまいたい。

「美鈴…美鈴は俺の事好きになってくれる?」
果てる前に俺が発した言葉は、以前の俺と同じなんだか自信のないものであった。


昔から好きだったよ。
「ばか。」
そう彼女は俺の背中をたたく。


気持ち良いだけじゃなくて、心が幸せに満ちる。

「美鈴。強引にでも俺のものにしちゃいたい。」
俺の。俺だけのものに。


今までも、自信が持てない自分が悪かった。

「強引に、北村のものにされたい。」

そう色っぽく俺を見つめる彼女をみて、頭に血が上るのが分かる。

俺が容赦ない動きで腰を突き出すと、彼女は両足で俺の腰を引き寄せる。

「…んあっあ!ふかっ…こわ。あんっ。」

「美鈴。こんなこと絶対他の男としちゃ駄目だから」

俺は最奥に亀頭を押し付け、牡の白濁液をしっかりと注ぎいれる。
彼女は、びゅーびゅーと生暖かい牡液がかかったのが分かったのか、身をひきつらせてビクンビクンと逝く。





ぴよぴよとスズメのなく声が聞こえておきると、彼女はやっと目を覚ました。
彼女の蜜口から精液があふれてくるのが分かる。
自分で出したものに照れてしまいそうになる。

しかも、追い討ちに俺の部屋をみた彼女に、ねぇ。もしかして私のためにかっこよくなってくれた?とからかわれてしまう。

ふふふ、と笑う彼女のその余裕が気に入らなくて。
俺なんて、こんなに余裕がないのに。

「北村は、まだ分かっていない?私のここも翻弄されているんだ。」
そう彼女は自分の白い胸を人差し指で指す。
柔らかな胸に人差し指が食い込む。

なんだか、そう言われても、どうしても俺の方が彼女に恋焦がれて、翻弄されてしまっている気がして彼女を抱きしめながら拗ねる。

「だったら、一生傍にいて。ちゃんと証明して?」

「うん。」

「分かってる?手始めに、ここに俺の赤ちゃん孕んで……。」

「うん。」
ええ。いいの?


というか、孕んでもおかしくないぐらい既に出しちゃったけど。

なんだか彼女は余裕そうである。
俺が好きなぐらい彼女に好きになって欲しい。


その後も続いた、再会の喜びと、俺の執着にまみれた濃厚な交わりで、最終的に腰が抜けた彼女にまたお泊りしてもらい、丁寧に送る。


ずっと忘れられなかった君にあえた。


そして、これからも――


彼女との本のやりとりは再びスタートした。
3冊かりて3冊返した頃には、彼女はやや不安げな顔で俺のマンションを訪れる。


「できちゃったかも。」
そう彼女がソファで気だるげに話したときに、俺は狂喜する心を抑えられなかった。
 
もしかしたら妊娠してしまっているかもしれない。それを見越してわりと早くから行動していた俺は、彼女に目を瞑って囁く。

素直に指示に従う彼女の、左手を持ち上げる。

「俺のお姫様。結婚して下さい。」

俺は得意気に、片膝をついて彼女のやわらかな手をとりキスをした。

本の虫は羽化した。


「うちの両親超厳しいから。北村歯食いしばっとくといいよ。」

こんなキメキメな時に、脅してくる美鈴ちゃんはやっぱりいじわるだ。
だけど、俺はそんな美鈴ちゃんが大好きで。彼女のためなら、いくらでも強くなり羽ばたけるような気がする。


この際、思い出になるぐらい殴ってください。ご両親様!


本の虫は羽化する。愛する君のために。
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