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5章 寂れた村の雑貨屋で運良く旅の行商人と出会い、開拓のための種を手に入れたのなら
第11話
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セリカは、荷を括りつけた馬の手綱を握りしめていた。
数少ないセリカの持ち物である馬の背には、魔獣の牙や角と素材と魔石が積まれている。
隣を歩くアルトは、風に乱れる髪を気にも留めず、どこか楽しげな足取りで荒野を進んでいた。
空は鈍色の雲を引きずり、風は冷たく、枯れた草が音もなく擦れ合う。
道中は思ったほど危険ではなかった。
四体のゴーレムたちが、まるで忠実な兵のように二人の周囲を守っていたからだ。
岩のような拳が襲いかかる魔獣を一撃で粉砕し、土煙とともに散らす。
その光景にセリカは息を呑んだ。
「……まるで、神話に出てくる古の守護者ね」
「神ってやつは、案外、石と土でできてるのかもな」
アルトの口元に浮かんだ笑みは、土埃の中にかすかな誇りを滲ませていた。
やがて、目的地――小さな村の外れに辿り着く頃、ゴーレムたちは静かに膝をつき、土と砂とに還っていった。
コアに宿る魔力が尽きたのだ。
セリカはその光景を見つめながら、改めてアルトの造るゴーレムの有用さと、同時にその“脅威”を実感していた。なんとしてでも、この力を手に入れたいと。
不毛の大地……イーヴェル辺境の近くにある村だけあって、まるで時間に取り残されたように寂れていた。
家々は傾き、家畜の姿も少ない。道の中央には干からびた車輪が転がっている。
セリカは万が一、自身の素性を知る者がいることを恐れ、顔を布で覆い隠した。
その手がわずかに震えていたのは、冷えた風のせいばかりではなかった。
「想像した以上に、寂れているというか……辺鄙な村ですわね」
「こんな辺境の地に村があるだけでも奇跡だよ。ここで暮らす人がいるのも凄いよな」
村の少し端に、ひとつだけ灯のある建物――雑貨屋があった。
二人が中へ入ると、埃と干し草の混じる匂いが鼻をくすぐった。
「おや、あんたは。たしか、あの辺境の新しい領主様でしたかな」
古びた声が店の奥から響いた。皺だらけの老店主が顔を上げ、アルトを見つめている。
以前、辺境へ向かう途中でこの村に立ち寄った時のことを、覚えていてくれたのだろう。
「ああ、そうだよ。覚えてくれて嬉しいよ」
「なんだい。やっぱりあの辺境地から逃げ帰ろうとしているのかい?」
「いや、そうなんじゃないよ。この素材を買い取って貰おうと思って、遥々ここまでやってきたんだよ」
アルトは袋を開き、魔獣の牙や角、そして魔石を机の上に並べた。
だが老店主は首を横に振り、手を払う。
「あー悪いが、魔獣の素材は買い取れんよ」
「え? どうして?」
「うちじゃ使い道が無いからな。魔石だって、ここらじゃ買う理由も無いからな」
「な、なるほど……」
アルトは唇を噛んだ。
その表情に言葉はなくとも、セリカには焦燥と無力が滲んで見えた。
沈黙が落ち、埃がゆっくりと空気の中を舞う。
そのとき――。
古びた戸口が軋み、陽気な声が冷たい空気を切り裂いた。
数少ないセリカの持ち物である馬の背には、魔獣の牙や角と素材と魔石が積まれている。
隣を歩くアルトは、風に乱れる髪を気にも留めず、どこか楽しげな足取りで荒野を進んでいた。
空は鈍色の雲を引きずり、風は冷たく、枯れた草が音もなく擦れ合う。
道中は思ったほど危険ではなかった。
四体のゴーレムたちが、まるで忠実な兵のように二人の周囲を守っていたからだ。
岩のような拳が襲いかかる魔獣を一撃で粉砕し、土煙とともに散らす。
その光景にセリカは息を呑んだ。
「……まるで、神話に出てくる古の守護者ね」
「神ってやつは、案外、石と土でできてるのかもな」
アルトの口元に浮かんだ笑みは、土埃の中にかすかな誇りを滲ませていた。
やがて、目的地――小さな村の外れに辿り着く頃、ゴーレムたちは静かに膝をつき、土と砂とに還っていった。
コアに宿る魔力が尽きたのだ。
セリカはその光景を見つめながら、改めてアルトの造るゴーレムの有用さと、同時にその“脅威”を実感していた。なんとしてでも、この力を手に入れたいと。
不毛の大地……イーヴェル辺境の近くにある村だけあって、まるで時間に取り残されたように寂れていた。
家々は傾き、家畜の姿も少ない。道の中央には干からびた車輪が転がっている。
セリカは万が一、自身の素性を知る者がいることを恐れ、顔を布で覆い隠した。
その手がわずかに震えていたのは、冷えた風のせいばかりではなかった。
「想像した以上に、寂れているというか……辺鄙な村ですわね」
「こんな辺境の地に村があるだけでも奇跡だよ。ここで暮らす人がいるのも凄いよな」
村の少し端に、ひとつだけ灯のある建物――雑貨屋があった。
二人が中へ入ると、埃と干し草の混じる匂いが鼻をくすぐった。
「おや、あんたは。たしか、あの辺境の新しい領主様でしたかな」
古びた声が店の奥から響いた。皺だらけの老店主が顔を上げ、アルトを見つめている。
以前、辺境へ向かう途中でこの村に立ち寄った時のことを、覚えていてくれたのだろう。
「ああ、そうだよ。覚えてくれて嬉しいよ」
「なんだい。やっぱりあの辺境地から逃げ帰ろうとしているのかい?」
「いや、そうなんじゃないよ。この素材を買い取って貰おうと思って、遥々ここまでやってきたんだよ」
アルトは袋を開き、魔獣の牙や角、そして魔石を机の上に並べた。
だが老店主は首を横に振り、手を払う。
「あー悪いが、魔獣の素材は買い取れんよ」
「え? どうして?」
「うちじゃ使い道が無いからな。魔石だって、ここらじゃ買う理由も無いからな」
「な、なるほど……」
アルトは唇を噛んだ。
その表情に言葉はなくとも、セリカには焦燥と無力が滲んで見えた。
沈黙が落ち、埃がゆっくりと空気の中を舞う。
そのとき――。
古びた戸口が軋み、陽気な声が冷たい空気を切り裂いた。
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