短編集

ふらっペ

文字の大きさ
2 / 6

うさウサ、うっさー!

しおりを挟む


着ぐるみを脱いだらそこは森の中でした、あ??

白いウサギの大きな頭が汚れるにも関わらず、ゴトリと落として周囲を見渡す。何処だここ。見慣れた鉄の車も電気を橋渡しする線もなく、なんか歩きにくいとか思ったら整ったアスファルトの道でもない。
何処なんだここ。もう一度、今度こそ声に出して呟いた。ちょっと怖いので着ぐるみの頭をヨイショと持ち上げ砂を払い、被り直す。外してみる。被り直す。ありゃ変わんねぇな。

気候はよく分からんが、少し暑い。もこもこしている素材の所為か熱は籠もるわ汗なんて皮膚中にこびり付く始末。白耳がへちゃる。
視界も悪いしやっぱ外そうかなぁとか考えたそんな時だった。


「うささん、なんかでっかいね。」
「、うさ、?」
「おめめも大きい、不思議。」


なんつー可愛い呼び方だぁおい。

内心ツッコミながら振り返るとそこには擦り傷だらけの小さな子供が居た。ぼろ切れを縫い合わせて作ったような、そんな服とは言い辛い布を身体へ巻き付けている。え、しかも草鞋だと??うわ手編みっぽい。まじかー。
ワンチャンいつの間にか森林浴にでも来ちゃったのかなとか現実逃避してたけど、その線を見事にぶっ壊してくれたこの男の子。んっんー、仮装にお祭り舞台劇。いやあの傷特殊メイクでもないし虐待とか?いや普通に報道問題だな??

あまりの唐突さにちょっと頭がついていかない。しかし暫く固まっていたら僕ね、ヤパっていうの。なんて少年が自己紹介しだしたので考えるのを止めた。
ヤパって何だよ、完全に漢字でもねぇよ。いやキラキラネーム、とかないよねぇそうだよねぇ、日本だといいな。


「ねぇ、どうして此処にいるの?」
「、」
「もふもふだねぇ」
「。」
「うさって言ってくれないの?」
「っう、うさうさ!うっさー!!」
「えへへ。」


だめだ、まけた。何かとは言わないが完全に負けた。

サービス精神で賃金も出ないのにパレードの真似っ子をしたら大層喜ばれてしまってさあ大変だ。バク転決めポーズにステップだんす!そうよ、私はうさ。ウサなのよ。うさ、ウサうさ~!と某大人気な電気鼠を真似て男の子に戯れる。
そうだ、少しでも情報を得ねば。こんな子供を利用するのはとても邪道であるが、いかせんどうしようも無いこの状況。おや、でもちょっと待てよ?私は自業自得でウサとしか喋れないぞ。どうしよっかな。


「おーい、ヤパ。どこにおる。」
「お父さん!」


遠くの方から聞こえてくる親の声に、私の事などそっちの気で走って行くヤパ少年。取り敢えずテクテクついて行ったらお父様から化け物!って言われてしまいました。そりゃそうだ。

木の棒で殴られそうになった所、ヤパ君が必死に止めてくれる。森の妖精さんだから乱暴はだめ!そう言った少年に違うけど助かった、なんてドキドキしながらもホッとした。ついでに正座しジャパニーズ土下座なるものを行えば、パパさんはゆっくりと木の棒を収めてくれる。いい人。いやドン引きされてましたがね。

ヤパ君も一応安心したようで、私達は雰囲気で笑い合う。しかしこの父上様ってば、此方を警戒しながら息子を抱き寄せ行くぞ、なんて言っちゃうので慌てて必死に引き留めた。逃がすものか生命線!おっと違う助けてください迷子なんです!


「な、妖精とやら、まさか私達を逃がさないつもりか!」
「う、うさぁ!?」
「違うよ、きっと構って欲しいんだよ。」


ああ日本語が恋しい。無駄に作った設定の所為でウサウサ言ってたら話が全然違う方に行くんですけど。しかし突然話し出したらそれこそヤパくんからも怖がられてしまいそうなので喋るなんて選択肢は初めから無かった。
身振り手振りで説明致す。えー、気が付いたらあるー日森の中~!私は人間、あなたも人間、とりあえず人のいる所へ一緒に行きたいウサうさウサー!

まぁ伝わりませんでしたよねはい。


「いや待てヤパ。もしや木を切り続けている事を怒っているのでは。」
「?」
「しかしこれは我らの生活の糧。これで許してもらえないだろうか。それに塚をたて、毎日添え物もする様に村の者へ伝えよう。」


深々と頭を下げられてしまってはもう対処しようが無い。とりあえず美味しそうなおにぎりを頂けたので思わずコックリ頷いてしまった私を誰か叱ってくれ。
まぁ話の流れからして後からついていけば集落か何処かに着くのだろう。ペコペコするお父様と何故かポカンとしているヤパ君に手を振って十数秒。よーし後でも追おうかな!!

しかし、残念ながら問題はここからであった。ものの見事に深い森素人な私はさっそく迷子になったのである。
日が暮れて、朝が来て、泣きながらおにぎりを少しずつ食べて数日間。やっとの思いで元の場所に戻ってきた頃には簡易的な塚とすぐ食べられる様な、調理されたての魚が置いてあった。

もしかしたらすれ違いであの親子が来ていたのかも知れない。落胆は勿論あったけれど、それでも久々の人間らしい食事に涙が出た。おいしい、おいしい。ちょっと生臭いけれど、とても美味しかった。
ウサギの頭をかぶり直して、しゃがみ込む。泥だらけになった毛並みはもう見るも無惨ではあるが、虫除け位には丁度良かったのだ。

だから決して、寒いとか。心細いだなんて思ってない。


「あれ、どうしたの?」
「、!」
「お水置き忘れたから慌ててもどってきたの!お魚食べてくれたんだね!」


ふんわり温かな、お日様の匂いがした。
がさがさと音がした時獣かと思って焦ったけど、まさか今一番会いたかったヤパ少年だったとはなんという巡り合わせだろうか。とことこ近寄ってきてくれて最早あまり触り心地の良くない、頭付近の毛並みを撫でられる。

うさ、ウサ。縋りつきたい気持ちを必死に隠してそう呟いた。思わず嗚咽を上げ、叫んでしまいそうな口をぎゅっと結ぶ。少年はそのまま私の手を引いて、ゆっくりと歩き出しながらウチにおいでよ!お父さんの誤解も解けてるよ!なんて続けてくれる。

正直、天使かと思った。



〈うさウサ、うっさー!〉
(あ、でもそろそろちゃんと喋ってくれないと困るよお姉さん)
(えッ)





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

異世界転生してしまった。どうせ死ぬのに。

あんど もあ
ファンタジー
好きな人と結婚して初めてのクリスマスに事故で亡くなった私。異世界に転生したけど、どうせ死ぬなら幸せになんてなりたくない。そう思って生きてきたのだけど……。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

処理中です...