終わらない夢の続きを

前原 湊

文字の大きさ
上 下
1 / 4

夢の始まり

しおりを挟む
 人はどうして生きているんだろう。
 どうせ歳をとったり事故や病気ですぐに死んじゃうのに。

 せっかく迎えに行っても、命乞いをしてさっさと逝ってくれない。本当に迷惑極まりない。人間は神サマに生まれなかった残念なやつなのに。

「さーて、今日も仕事行きますか!」
 元気よく声を張り上げてソファーから立ち上がったのは、少し長めのブラウン髪で、白のTシャツの上からパーカーを羽織った青年…いや、初見では高校生か中学生に見間違うほどの童顔をもつ男子だった。
「仕事ってもすぐに終わるだろ?なんでそんなにテンション高いんだ?」
 スーツを堅苦しくないように着崩して水色基調のノートを持った、こちらは少し大人びて見える青年が声をかけた。
「だってさ、取る瞬間がたまらないだろ?あんなに騒ぎまくってた人間が安らかに逝ってくれるんだから。…えっと、今日は誰だろ?」
「こらルーチェ、あんまり楽しんでやってると怒られるぞ?」
 ルーチェ、と呼ばれた青年はポケットから緑のノートを取り出してパラパラとページをめくった。
 彼らが持っているのは人間の生死を左右させるノートだ。文庫本くらいのサイズで、中にはビッシリと時刻や死因、どうやって命を助けるのか等が書かれている。
 今日もまた一人彼らによって振り分けられる命があることだろう。
しおりを挟む

処理中です...