【完結】クズ男と決別した私の未来は輝いている。

カシスサワー

文字の大きさ
19 / 87

第19話【執着】

 ――なにが不満なんだ!
 ――生活のすべてを面倒見てやると言っているのに。

 幸の反抗的な態度に、圭吾は苛立っていた。

「片桐、幸に探偵をつけろ。行動を逐一、俺に報告しろ」

「えっ……? 西村さんに探偵をつけるんですか? なんのためにですか?」

 会社も辞め、恋人関係も終わったはずの相手に探偵をつける――。
 意味がわからず、片桐は思わず問い返した。

「なんのためって……あいつに、俺が必要だってことをわからせるためだ」

 その答えに、片桐はさらに困惑する。

「とにかく、今日から幸の行動を監視しろ。さっさと探偵に連絡を入れろ」

 社長命令に逆らうことができない片桐は、西村幸の身を案じながらも、圭吾の指示に従うしかなかった。

 探偵を雇ってから、わずか二時間後。

 西村幸に関する最初の報告が圭吾のもとへ届いた。

「社長。西村さんは、社長名義のマンションからすでに引っ越されて、今は友人宅に身を寄せているそうです」

「……幸が、マンションを出た?」
 圭吾の眉がわずかに動いた。

 何も言わずに出ていった――その事実が、妙に胸をざらつかせる。

 生活の面倒を見てやると言ったのに、その提案を拒み、完全に自分の管理下から離れようとしている。

「友人宅って、まさか男じゃないよな」

 圭吾の声には、明確な苛立ちが滲んでいた。

「いえ、違います。山川洋子さんという女性のところだそうです」

「山川洋子……」

 圭吾は、その名を口にしながら記憶をたどった。

 何度か幸の口から聞いたことがある。
 親子で美容室をいくつも経営しており、美容業界では母親がかなりの有名人だと。

 もっとも、 黒田ホールディングスと比べれば格は違う。

 だが、念のために、どれほどの影響力を持つ人物なのか――確認しておく必要はある。

「……片桐、興信所を使って山川洋子の素性を調べろ」

 命令の声は低く、威圧的だった。

 片桐は一瞬、言葉を失う。

「山川さんを……ですか?」

 さすがに、それはやりすぎではないか――心の中でそう思った。
 だが、圭吾の表情には一切の迷いがない。

「幸に近しい人間は、誰であれ調べろ。……いいな?」

 社長の鋭い眼差しに射抜かれ、片桐は黙ってうなずくしかなかった。
 心の奥では、どうしようもない違和感が膨らんでいく。

 別の女性と婚約しているというのに、どうしてここまで西村幸に固執するのか。

 ――これは、恋でも愛でもない。
 ただの、執着だ。

 そう思いながらも、圭吾の命令に背くことなど、片桐にはできなかった。

 彼は重く息を吐き、机の上の電話を手に取る。
 そして、興信所へと依頼の連絡を入れた。

 数日後、山川洋子に関する報告書が届いた。

 圭吾は報告書を読み進めながら、眉をひそめる。

「洋子の祖母が、西園寺財閥総師の妻と姉妹だと……。もし洋子に何かすれば、
 西園寺財閥が動く可能性があるのか。……山川親子には関わらない方が賢明だな……」

 西園寺財閥は、古くから続く名門財閥で、国内外に広大な資産と政治的コネクションを有している。

 経済界・政治界・上流社会に幅広い影響力を持ち、黒田ホールディングスよりも「格」が上だ。

 さらに、財閥内部は極めて保守的で、家名や格を重んじる。
 下手に手を出せば、足をすくわれかねない存在である。

 洋子と幸が住んでいるマンションから、二人一緒に追い出そうかとも考えたが、
 それをすれば西園寺財閥の怒りを買う可能性がある。

 結局、圭吾は、山川洋子には関わらず、幸に関することだけを妨害することにした

感想 57

あなたにおすすめの小説

フッてくれてありがとう

nanahi
恋愛
【25th Anniversary CUP】にて、最終ランキング3位に入りました。投票してくださった皆様、読んでくださった皆様、ありがとうございました! 「子どもができたんだ」 ある冬の25日、突然、彼が私に告げた。 「誰の」 私の短い問いにあなたは、しばらく無言だった。 でも私は知っている。 大学生時代の元カノだ。 「じゃあ。元気で」 彼からは謝罪の一言さえなかった。 下を向き、私はひたすら涙を流した。 それから二年後、私は偶然、元彼と再会する。 過去とは全く変わった私と出会って、元彼はふたたび──

今さらやり直しは出来ません

mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。 落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。 そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました

cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。 そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。 双子の妹、澪に縁談を押し付ける。 両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。 「はじめまして」 そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。 なんてカッコイイ人なの……。 戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。 「澪、キミを探していたんだ」 「キミ以外はいらない」

この別れは、きっと。

はるきりょう
恋愛
瑛士の背中を見ていられることが、どれほど幸せだったのか、きっと瑛士は知らないままだ。 ※小説家になろうサイト様にも掲載しています。

仕事で疲れて会えないと、恋人に距離を置かれましたが、彼の上司に溺愛されているので幸せです!

ぽんちゃん
恋愛
 ――仕事で疲れて会えない。  十年付き合ってきた恋人を支えてきたけど、いつも後回しにされる日々。  記念日すら仕事を優先する彼に、十分だけでいいから会いたいとお願いすると、『距離を置こう』と言われてしまう。  そして、思い出の高級レストランで、予約した席に座る恋人が、他の女性と食事をしているところを目撃してしまい――!?

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。

112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。  ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。  ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。 ※完結しました。ありがとうございました。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。