童貞守って世界を救え! ~興奮するほど強くなるけどヤッたら即・雑魚キャラ転落~

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第1話:世界最強の童貞、誕生。

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 目の前で、抜けないはずの剣が、まるで熟れた果実を枝から外すかのようにあっけなく俺の手の中に収まっていた。  

 錆び付いて台座と一体化していたはずの鉄の塊が、今は太陽の光を反射して、直視できないほどの黄金色の輝きを放っている。

「……抜けた」

 思わず漏れた自分の声が、聖堂の高い天井に反響して戻ってくる。俺の背後で、村の長老が杖を床に落とした。乾いた木音が静寂を破り、彼は震える指で俺が掲げた剣を指差した。

「おお……おおお! 予言は真実であったか! 二十歳の誕生日に、不純なる情欲を一切知らぬ『清浄なる魂』を持つ者が現れた時、聖剣エクスカリバーはその真の主を認める……!」

 長老の感激に満ちた叫びを聞きながら、俺は内心で複雑なため息をついた。  

 確かに俺は二十歳だ。そして、今日この瞬間まで、女性の手を握ったことさえ数えるほどしかない。だがそれは、高潔な精神からくる修行の成果などではない。ただ単に、この辺境の村に同年代の女子が一人もおらず、野良仕事と剣の素振りに明け暮れる毎日を過ごしていた結果に過ぎない。

「アルトよ、お前こそが世界を救う勇者だ。その剣がある限り、お前は無敵。あらゆる魔法は霧散し、あらゆる刃はお前の肌を傷つけることすら叶わぬだろう」

 長老が這いつくばるようにして俺の足元に跪く。  

 俺は恐る恐る、聖剣の重みを確かめた。驚くほど軽い。まるで自分の腕の一部になったかのような一体感がある。試しに、聖堂の隅に置かれていた、魔物除けの分厚い石柱に向かって剣を横に一閃させた。  

 手応えは皆無だった。

 しかし、一秒後。  

 巨人の胴体ほどもある石柱が、重力に従って滑るように上下に分かれ、轟音を立てて崩落した。断面は鏡のように滑らかだ。

「……マジかよ」

 これが、勇者の力。  

 俺の体に満ち溢れるこの全能感は、確かに本物だった。視界が研ぎ澄まされ、数キロ先を飛ぶ羽虫の動きすら捉えられるような感覚。だが、その力の源泉について、長老はさらに重要な「条件」を付け加えた。

「ただし、忘れるな。その力は、お前の心が『純真』であることの証。もしもお前が、特定の女性に対して『愛』を抱き、その肉体と結ばれた時……聖剣の加護は失われ、お前はただの人間、いや、ゴミ虫以下の無力な存在へと成り下がるであろう」

 その言葉を聞いた瞬間、俺の股間が、勇者の力とは別の意味でキュッと縮み上がった。  

 つまり、こういうことか。  

 俺が世界最強でいられるのは、俺が「最強の童貞」である間だけ。  

 魔王を倒すその日まで、俺は一生、女の子とイチャイチャすることも、甘い夜を過ごすことも許されない。もしそれを破れば、その瞬間に俺は雑魚キャラに転落し、世界は滅びる。

「……ウソだろ」

 思わず本音が漏れたが、長老はそれを「使命の重さに震えている」と解釈したらしい。「なんと殊勝な……!」と涙を流している。

 その夜、俺は村の自警団が総出で用意してくれた宴を早々に抜け出し、一人で夜風に当たっていた。  

 背中には、布でぐるぐる巻きにした聖剣。  

 空を見上げると、二つの月が冷ややかに俺を見下ろしている。  

 明日には、王都からの使いが来て、俺は魔王討伐の旅に出ることになるだろう。  

 世界を救う。それは、物語の中の英雄たちが成し遂げてきた素晴らしい偉業だ。だが、その代償が「永遠の賢者タイム」を強要されることだなんて、誰が想像しただろう。

 カサリ、と。  

 背後の茂みで、乾いた葉が擦れる音がした。  

 今の俺の耳は、どんな小さな物音も逃さない。

「誰だ?」

 俺は反射的に、まだ慣れない足運びで振り返った。  

 そこには、月の光を浴びて、この世のものとは思えないほど美しい女性が立っていた。
 
 透き通るような白い肌。夜の闇を溶かし込んだような深い紫色の長い髪。そして、薄い絹のドレスから溢れんばかりに主張する、柔らかな双丘。彼女が歩くたびに、その肉感的な曲線が、月光の下で挑発的に揺れる。  

 「……あ、あの……村の人ですか?」

 俺の問いかけに、彼女は応えない。  

 代わりに、その赤い唇を妖しく歪め、ゆっくりとこちらへ歩み寄ってくる。  

 鼻を突いたのは、むせ返るような甘い花の香り。それだけで、俺の脳髄がしびれるような感覚に襲われた。
 
 彼女の瞳は、吸い込まれそうな深い紅。  

 「初めまして、勇者様。……いいえ、まだ『勇者の卵』かしら?」

 鈴を転がすような、甘く、低い声。  

 彼女は俺の目の前で足を止めると、細い指先を俺の胸元に這わせた。  

 布越しに伝わる彼女の体温が、熱い。  俺の理性という名の防壁が、初戦にして早くもミシミシと音を立てて悲鳴を上げるのが分かった。

「……お、俺に、何か用ですか」
「ええ、そうよ。私はサキュバスのルル。魔王様からの伝言を預かってきたわ」

 彼女は、俺の耳元まで顔を寄せると、熱い吐息と共にこう囁いた。

「『殺すのは忍びないから、抱いてあげるわ』……ってね」

 その瞬間、俺の背中の聖剣が、まるで警告するかのように鈍く脈打った。    

 世界最強の勇者としての初陣は、剣を振るうまでもなく、俺の「股間」をターゲットにした、あまりにも過激な急襲によって幕を開けたのだった。
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