リボルバー・ジャズ

マルゾンビ

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第1話 -相棒-

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これは、あまりにもひどい状況だろうな。

あのクソッタレ共、
使えるものは全部使うって感じの容赦の無さ、
嫌いじゃないが人間じゃあない。
俺は肩と脇腹に銃弾を1発貰ってる、
要らないプレゼントをどうもありがとう。

ダイナマイトで吹き飛んだ家屋や教会は、
火を上げながら朽ち果てるまで熱を放射し続ける。
ギャングってのはここまで獣か?

この小さな田舎町は畜産と金属加工業で、細々と平和に暮らしていた。
馬や羊、牛を入れる小屋はそりゃデカい。
金属加工はペンダントトップなんかを作ってた。
町の後ろに真っ白な教会があり、
その道すがらバーや保安官の居る…。

やめた、ぶっ壊れた町の説明するほど今は暇じゃない。
俺は右手に握っていたリボルバーの弾を確認した、
でも確認したところでどうと言う事はない、
何故かって?勝てる見込みがまるでないからだ。

俺一人に向こうは8人。

おい、娼婦がボスの言うことを聞かないからみんなを殺すだと?ふざけてるのか?
Barで気持ちよく酒飲んでてそんな胸糞悪い状況を黙ってられるほど俺は気が長くない。

あんな可愛い女抱けなかったのは残念だが、こんな状況じゃ言ってられないな。
今その女を馬に乗せてボスが引き上げの準備をしてる。

一瞬しかチャンスはないが、
野郎を殺せる自身がある。

俺は家の壁だったであろう瓦礫に身を隠しながら腰を預けている。

こりゃー、刺し違えるか…。

そう考えていたら、嗚咽と共に口一杯に血が込み上げてきた。
「痛てぇーじゃねーか、クールってもんじゃないな。」
脇腹の傷が血を流し続けてた。

このクソな展開に弾はたった2発だけ、割れた鏡を使い向こう側の最後の確認をする。

するとどうしたもんか、右手に生温い感触がある、
俺は"それ"を払いのけて、銃口を向けた。
それは猫だ、黒い猫。
「冗談は止めろ、デカい声が出ちまうところだったじゃないか。」

呼吸を整えると何故か俺は持っているものを置き、猫を抱きかかえた。

「よー、お前も怪我してるのか?
痛そうだな、俺もだ。
おいおい、右足にガラスが刺さってるじゃねーか。」

本当はそんなことをしている時間はない、
俺はここで死ぬだろう、この猫も、多分娼婦も。

俺はそれでもいい。

何故か笑みが溢れた、
シーっと猫が鳴かないよう宥める。
チチチと俺は舌を鳴らし、
奴らがここから去るのを待った。

全く、こんなにカッコ悪い負け試合は初めてだ。

次はないぞ、"スライリー"、ボーイ。

俺は血で濡れた手で巻きタバコを作り、
ゆっくり煙を嗜んだ。
奴らの蹄鉄の音がリズムを刻みながら遠ざかって行く、
俺の相棒は黒いリボルバーだけだったが、こいつも連れて行くか。



次回に続く。
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