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第1章

1.俺、樹海に放置プレイ…?

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 「……ここどこだ?」

 俺の名前は五十嵐湊叶いがらしかなと。ブラック企業に務める独身アラサーサラリーマンだ。今日も朝まで残業コースだったのでコンビニに晩飯ばんめしを買いに行った。眠そうな店員がレジをしているコンビニで、割引シールを貼られたおにぎりとカップ麺を買って店を出た所までは覚えている。それから会社に戻ろうとして…。

 ……そうだ!車にかれたんだった!
 電灯も少ない裏道を歩いてたら、急に猛スピードの車が後ろから走ってきて『ドンッ!』と。暗くて見えてなかったのかノーブレーキだったし全身めちゃくちゃ痛かった。それから俺はそのまま気を失ったのか?

 とにかく状況を整理するべく俺は周りを見渡した。だが、右も左も上もしか見えない。高さ15メートル以上はありそうな木々が月明かりも見えないほど生い茂っている。どうやらここは森の中のようだ。
 なんだ?運転してた奴は人をいちまって焦って樹海じゅかいにでも俺を捨てたのか?あまりにも酷くね?
 俺はいたやつを心の中で恨みながらも、森を抜けるべくを頼りに歩き出した。

「何でずっと森なんだよーー!!!!」

 そりゃ森だからでしょうね!分かっちゃいるけど叫ばずにはいられなかった。俺の体感的に2時間くらいは歩いてるはずなんだけど川音も聞こえなけりゃ、道路や電灯も見つからない。

 そういや車にねられたにしては体がピンピンし過ぎている事にようやく気づいた。誰だ今「今更かよっ!」てツッコんだやつは!ツッコんだ人はきっと関西人なんだろうな、知らんけど…。
 なんてどうでもいい事を考えながら歩いていると、近くの茂みがガサガサッと揺れが飛び出してきた!

「ヴゥゥ~!グルルルル……」

 飛び出してきたは俺に向かって低い唸り声をあげ、威嚇している。そして月明かりに照らされてその声の正体が現れた。白い毛並みの犬?いや、俺が知っている大型犬よりも明らかに大きい。これは狼だ!

「グゥゥ~、ワンワン!!」
(何処から来た、お前は何者だ!!)
「……は?」

 俺は思わず気の抜けた声を上げてしまった。
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