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第1章

28.昇格試験(ソル視点②)

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 試験当日ギルドに向かうと今回試験を受ける少年が待っていた。ミナトというらしい。俺達は軽く挨拶を済ませると早速試験会場となる森に向かうことにした。

 森につき試験について説明をする。説明を終え質問が無いか聞くと、ミナトがと言い出した。普通テイマーならば従魔と協力して魔獣を狩る。その方が魔獣の居場所を教えてくれたり、挟み撃ちにして捕まえやすくなるからだ。まぁ本人が言い出したことだし好きにやらせてみるか。

 その後アイテムバッグを渡し試験を開始した。通常のEランク冒険者であれば昼までの3時間で2、3匹捕獲できればいい方だ。しかもこれはでの話。個人であれば1匹捕まえられるかどうかも怪しい。なんせ初心者だからな。
 
 そんな事を思っていると、ミナトが目を閉じて詠唱を始めた。その隙に俺はミナトに「」をかける。
 ……あれ?効かない。ミスったのか?そう思いもう一度「」をかける。今度はちゃんと出てきた。

 ・名前   
   ミナト (18歳)   人族   Lv.20
・職業   
   テイマー
・スキル   
   火魔法Lv2、水魔法Lv2、地魔法Lv2、風魔法Lv2、無属性魔法Lv3、アイテムボックスLv2、鑑定Lv2
 
 体力(HP)   500/500
 魔力(MP)   500/500
 攻撃力(STR)   400
 防御力(DEF)   350
 幸運(LUK)   600

 初心者にしては高いステータスだが、何もおかしなところは無さそうだ。それにアイテムボックスと鑑定持ちとはパーティーのポーターとして引っ張りだこになるだろう…。

 俺がステータスを見ていると、目を開けたミナトがどこかへ歩き出した。どこに向かうつもりだ?初心者の森とは言えど行き当たりばったりで魔獣に出会ったりしないぞ?そう思って後ろをついて行くこと5分…。

 魔獣がいた。あれは「ディアール」という鹿の魔獣だ。これは偶然か?まぁいい。その後どうやってそいつを捕まえるのか俺が観察しているとミナトが魔法を…?
 なぜ疑問形かというと俺には見えなかったからだ。だがミナトが何か呟いたあと魔獣が倒れたのだ。何だ今の魔法は!?
 俺が驚いている事に気づいてないミナトは、その魔獣をマジックバッグに入れると再び歩き出した。俺は慌ててそれを追う。それにしても、ここは森の中なのに段々とミナトの動きが速くなっている。それに気配も薄い。

 ん?何かしゃがみこんだぞ。何をしているんだ?俺はミナトが持っていた草を「鑑定」する。

 ・コールドハーブ(無毒)
 風邪薬を作る時に使用する苦味のある薬草。

 あれは採取依頼にある薬草か?あ、アイテムバッグにしまった。またどこかに歩いていくな~。今度は木の実も摘んでる。

 また歩いた先には魔獣がいてミナトは1発で仕留めていく。それがしばらく続き、まだ1時間程だが余裕で合格出来る分の魔獣をミナトは狩っていた。俺としてはまだミナトの行動を見ていたいが、そろそろマジックバッグの容量が心配だ。そこで俺はミナトに声をかけた。

 「もうストップだ!試験はこれにて終了とする。」
 それを聞いたミナトは何だか悲しそうにしている。不合格だと思ったのか?これだけの捕獲数と戦闘能力で不合格だったら誰も上にあがれないぞ…。分かってないのか?俺は安心させるように言葉を続けた。

 それを聞いたミナトは元気を取り戻し、俺に挨拶をして解散した。

 俺はこれから今自分の目で見たことをギルマスに報告しなければならない。俺の報告を聞いてギルマスはどんな反応をするかな?驚くだろうか?と、そんな事を想像しながら軽い足どりで街まで戻るのだった。

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