2 / 2
後編
しおりを挟む
家に着くと、ポストに一通のチラシが入っていた。
それは、見覚えのある文字が並ぶ便箋と一緒にはさまっていて、チラシと便箋はホッチキスで繋がっている。あて名書きなどはなかった。
「来るんなら連絡くれればよかったのに……」
目の前にいない相手に向けて独り言ちると、成実は自室へ向かいながらスマホを取り出した。
すると、ちょうどそのとき、通知が入る。
わたしは思わず振り返って、いないのを確認した。
あまりにタイミングがドンピシャすぎる。
ドキドキを抑えるように深呼吸すると、メッセージアプリを開いた。
通知の相手は予想どおり。大親友からだった。
“チラシの治験、付いてきてくれない?”
彼女からのメッセージはそんな感じの内容で、地図も付いていた。
チラシを見ると、どうやら新作メガネの治験が行われるらしい。
一枚めくって便箋を見ると、『一緒に行ってくれる大親友募集中!』と書いてあった。
ふっと笑みが漏れる。
彼女らしいクマといちごの描かれたファンシーな便箋に、でかでかとそんなことが書いてあるものだから、それだけでなんだか肩の力が抜けたような気がした。
「最新の高性能メガネか……」
支援を受ける身でそんなものを買っている余裕などない。
が、治験ならばお金がかからないどころか、むしろ少しのお礼金が出るらしい。
わたしは気づくと、おっけーと書かれたポップでかわいらしいスタンプを押して送信していた。
【終】
それは、見覚えのある文字が並ぶ便箋と一緒にはさまっていて、チラシと便箋はホッチキスで繋がっている。あて名書きなどはなかった。
「来るんなら連絡くれればよかったのに……」
目の前にいない相手に向けて独り言ちると、成実は自室へ向かいながらスマホを取り出した。
すると、ちょうどそのとき、通知が入る。
わたしは思わず振り返って、いないのを確認した。
あまりにタイミングがドンピシャすぎる。
ドキドキを抑えるように深呼吸すると、メッセージアプリを開いた。
通知の相手は予想どおり。大親友からだった。
“チラシの治験、付いてきてくれない?”
彼女からのメッセージはそんな感じの内容で、地図も付いていた。
チラシを見ると、どうやら新作メガネの治験が行われるらしい。
一枚めくって便箋を見ると、『一緒に行ってくれる大親友募集中!』と書いてあった。
ふっと笑みが漏れる。
彼女らしいクマといちごの描かれたファンシーな便箋に、でかでかとそんなことが書いてあるものだから、それだけでなんだか肩の力が抜けたような気がした。
「最新の高性能メガネか……」
支援を受ける身でそんなものを買っている余裕などない。
が、治験ならばお金がかからないどころか、むしろ少しのお礼金が出るらしい。
わたしは気づくと、おっけーと書かれたポップでかわいらしいスタンプを押して送信していた。
【終】
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
甘そうな話は甘くない
ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
「君には失望したよ。ミレイ傷つけるなんて酷いことを! 婚約解消の通知は君の両親にさせて貰うから、もう会うこともないだろうな!」
言い捨てるような突然の婚約解消に、困惑しかないアマリリス・クライド公爵令嬢。
「ミレイ様とは、どなたのことでしょうか? 私(わたくし)には分かりかねますわ」
「とぼけるのも程ほどにしろっ。まったくこれだから気位の高い女は好かんのだ」
先程から散々不満を並べ立てるのが、アマリリスの婚約者のデバン・クラッチ侯爵令息だ。煌めく碧眼と艶々の長い金髪を腰まで伸ばした長身の全身筋肉。
彼の家門は武に長けた者が多く輩出され、彼もそれに漏れないのだが脳筋過ぎた。
だけど顔は普通。
10人に1人くらいは見かける顔である。
そして自分とは真逆の、大人しくか弱い女性が好みなのだ。
前述のアマリリス・クライド公爵令嬢は猫目で菫色、銀糸のサラサラ髪を持つ美しい令嬢だ。祖母似の容姿の為、特に父方の祖父母に溺愛されている。
そんな彼女は言葉が通じない婚約者に、些かの疲労感を覚えた。
「ミレイ様のことは覚えがないのですが、お話は両親に伝えますわ。それでは」
彼女(アマリリス)が淑女の礼の最中に、それを見終えることなく歩き出したデバンの足取りは軽やかだった。
(漸くだ。あいつの有責で、やっと婚約解消が出来る。こちらに非がなければ、父上も同意するだろう)
この婚約はデバン・クラッチの父親、グラナス・クラッチ侯爵からの申し込みであった。クライド公爵家はアマリリスの兄が継ぐので、侯爵家を継ぐデバンは嫁入り先として丁度良いと整ったものだった。
カクヨムさん、小説家になろうさんにも載せています。
カウントダウンは止められない
柊
ファンタジー
2年間の「白い結婚」の後、アリスから離婚を突きつけられたアルノー。
一週間後、屋敷を後にするが……。
※小説になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しております。
【短編】花婿殿に姻族でサプライズしようと隠れていたら「愛することはない」って聞いたんだが。可愛い妹はあげません!
月野槐樹
ファンタジー
妹の結婚式前にサプライズをしようと姻族みんなで隠れていたら、
花婿殿が、「君を愛することはない!」と宣言してしまった。
姻族全員大騒ぎとなった
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる