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淫魔だという事実が発覚してからというもの、いすかは人間性が
薄れていっている気がしてならなかった。
『ダメ…、やっぱり若波の…足りない。ってか俺もアイドルとして活動しなきゃいけない
なんて、聞いてない。』
レッスンは、ほぼ毎日あるし。体が俺よりも細く筋肉の量も足りてない
いすかは、疲れやすい。基礎体力が足りていないのだろう。
俺が見ている限りでは、ダンスも悪くないけど地道な基礎トレーニングとか
例えば、ランニングとかもいすかは苦手なようだった。
「アイドルになるかどうかは、お前の意志だけど。まぁ、やる気ないんだったら
さっさち辞めてくれ。俺は、そんなに士気下げるような奴とは一緒になんて活動
したくないし」
いすかの甘え癖を、この辺で何とか矯正してやりたいのは、やまやまなんだけど。
ちょっと、言葉がキツイとすぐに拗ねてしまうから。
同い年を叱咤するってのも、結構難しいものがある。
『そんな言い方、しなくても…よくなぁい?』
いすかは、タオルで首筋の汗を拭いている。
頑張っているのは、俺も知っている。だからこそ簡単に弱音を吐かないで
一緒に頑張っていきたい。
俺の想いが、まっすぐ正しく、いすかに届けばいいのに。
「…いすか、汗すごい」
更衣室で、いすかはベンチに座って屈みこんでいる。
『今日、ずっと…脚が痛くって…』
「はぁ!?何で何にも言わなかったんだよ…見せてみろ」
いすかは、足首の辺りを恐らくは無意識にかばっている。
『だって、若波が横で頑張ってるのに…俺も頑張らなきゃって、思うよ』
そういう問題じゃないだろうに。誰が、痛みを我慢してまで続けろと言うのか。
いすかの、足首の辺りをそっと手を添えながら見てみる。腫れては無い。
「脚に負荷がかかってるのかな…、トレーナーさんに連絡して、いすかはレッスンの
内容を変更してもらおうか。歩けそう?」
『力を入れなければ、ゆっくりだけど歩けるよ。』
「我慢させてたんだな…、ごめんな。いすか。酷い事言って」
大丈夫、といすかは頼りなく笑ってみせるが、見るからに落ち込んでいる。
当たり前だろう。俺も、いらん追い打ちをかけてしまった。
いすかのバッグを代わりに持って、ゆっくりと歩くいすかに合わせて歩く。
使うあての無かったサポーターが、俺のバッグに入っていたから
いすかの足首に装着してみた。少しは、歩きやすくなったとは言うものの
壁伝いに歩いている。
俺は、いすかの前に立って背を向けて屈み
「おんぶするから、ほら…」
『俺、重いよ~』
ふふっといすかは笑っている。
「軽いだろ。ほら、いすか…早く」
いすかは、気恥ずかしそうに笑いつつ俺の背に背負われた。
あ…、本当に軽い。
『俺の事、嫌わないで…若波』
「なんで俺が、お前を嫌うんだよ?」
『若波、さっき怖かったから…俺が足引っ張ってるのは確かだけど。』
「いや、嫌いじゃないからあんな…言い方にしたんだ。ごめんな。」
『そう、なの?』
「俺は、ついついお前の事甘やかすし。可愛さに流されて、何でも許しそうになるから。」
『ぁ~、でも確かに…。若波は俺に甘いよね。俺は、嬉しいけど』
「怠けてる訳ないんだよな。俺と同じ事してるんだから、結構な運動量だし…でも
いすかにとっては、オーバーユースだったり、オーバートレーニングにもなりかねない。
もっと、プランを考え直さないと。」
『俺が、相方なんて…無理があるよね?』
寮に帰って来て、部屋の中に入り、リビングの椅子の上にいすかを降ろした。
「大丈夫か、いすか…」
『ありがとう。ごめんね…俺、汗くさかったカモ…』
「全然、むしろ多分いすかのフェロモンのせいだと思うけど、良い匂い過ぎて
途中で膝からくず折れそうになった。」
いすかは、両手で顔を覆って視線をきょろきょろさせて
『やっぱり…?途中から何か若波が様子変わったなぁて思ってたから。』
「汗まで、そういう仕掛けがあるのかよ。」
『こればっかりは、どうにもできないんだよ。シャワーで流せば、かなり落ち着くとは
思うんだけど。』
「先に入るか?」
『ん、俺は若波の後にする。』
いすかは、甘え上手で俺の心を見透かしているのかと思う瞬間がある。
互いが高め合える相手だと認めながら、相手がつまづけば手を差し伸べて
また、同じ場所からスタートする。
俺は、それが当たり前だと思っている。
か細い体を酷使しつつ、黙って俺に合わせてくれていたのは他の誰でもない
いすかなのだ。
シャワーを頭から浴びて、ゴチャゴチャする頭の中を整理したくて。
リビングに戻ると、いすかは疲れた体を椅子にあずけて居眠りしている。
あどけない顔で、うっすらと口が開いている。
可愛い…猫みたいだ。何でだろうか、指を入れてみたくなる。
「……」
ドキドキしながら、いすかの唇に人差し指の先をゆっくり差し入れる。
…ぅあ、今、舌に指が触れた。
ゾクッとする感覚。
『んん…、っ…む…』
舌がもにゅ、と動いて指の腹を味蕾が優しく撫ぜる。
「ぇろ…、」
いすかが目を覚まして、ぱ、と口が開いた。
『なにしてんの~?』
「俺、やっぱりいすかは、エロいと思う。」
俺は、慌てて指を抜き去ったけど。
『えぇ…、何の事?』
いすかは、伸びをしてゆっくりと立ち上がり浴室に歩いて行った。
翌日、いすかは整形外科を受診してから、トレーナーとの話し合いの結果
少し練習量を抑えて、脚に負荷のかからない範囲のトレーニングやレッスン内容へと
変更がなされた。
疲労骨折になっていなくて良かった。
もどかしかった。確かに目の前にある目標、やるべき事はもう分かっている。
俺が、いすかを引っ張り上げるなんて思い上がりだったのだろうか。
満身創痍、ただ明らかなのは俺はいすかと、いずれはステージの上に立ちたいのだという
揺るがない想いがある。
『俺が言うのも、なんだけど…これも経験だから。』
「そうだな。俺は、本当にあと少しでいすかを…壊しかける所だった」
マネージャーを挟んでの話し合いが、事務所の小会議室で行われた。
薄れていっている気がしてならなかった。
『ダメ…、やっぱり若波の…足りない。ってか俺もアイドルとして活動しなきゃいけない
なんて、聞いてない。』
レッスンは、ほぼ毎日あるし。体が俺よりも細く筋肉の量も足りてない
いすかは、疲れやすい。基礎体力が足りていないのだろう。
俺が見ている限りでは、ダンスも悪くないけど地道な基礎トレーニングとか
例えば、ランニングとかもいすかは苦手なようだった。
「アイドルになるかどうかは、お前の意志だけど。まぁ、やる気ないんだったら
さっさち辞めてくれ。俺は、そんなに士気下げるような奴とは一緒になんて活動
したくないし」
いすかの甘え癖を、この辺で何とか矯正してやりたいのは、やまやまなんだけど。
ちょっと、言葉がキツイとすぐに拗ねてしまうから。
同い年を叱咤するってのも、結構難しいものがある。
『そんな言い方、しなくても…よくなぁい?』
いすかは、タオルで首筋の汗を拭いている。
頑張っているのは、俺も知っている。だからこそ簡単に弱音を吐かないで
一緒に頑張っていきたい。
俺の想いが、まっすぐ正しく、いすかに届けばいいのに。
「…いすか、汗すごい」
更衣室で、いすかはベンチに座って屈みこんでいる。
『今日、ずっと…脚が痛くって…』
「はぁ!?何で何にも言わなかったんだよ…見せてみろ」
いすかは、足首の辺りを恐らくは無意識にかばっている。
『だって、若波が横で頑張ってるのに…俺も頑張らなきゃって、思うよ』
そういう問題じゃないだろうに。誰が、痛みを我慢してまで続けろと言うのか。
いすかの、足首の辺りをそっと手を添えながら見てみる。腫れては無い。
「脚に負荷がかかってるのかな…、トレーナーさんに連絡して、いすかはレッスンの
内容を変更してもらおうか。歩けそう?」
『力を入れなければ、ゆっくりだけど歩けるよ。』
「我慢させてたんだな…、ごめんな。いすか。酷い事言って」
大丈夫、といすかは頼りなく笑ってみせるが、見るからに落ち込んでいる。
当たり前だろう。俺も、いらん追い打ちをかけてしまった。
いすかのバッグを代わりに持って、ゆっくりと歩くいすかに合わせて歩く。
使うあての無かったサポーターが、俺のバッグに入っていたから
いすかの足首に装着してみた。少しは、歩きやすくなったとは言うものの
壁伝いに歩いている。
俺は、いすかの前に立って背を向けて屈み
「おんぶするから、ほら…」
『俺、重いよ~』
ふふっといすかは笑っている。
「軽いだろ。ほら、いすか…早く」
いすかは、気恥ずかしそうに笑いつつ俺の背に背負われた。
あ…、本当に軽い。
『俺の事、嫌わないで…若波』
「なんで俺が、お前を嫌うんだよ?」
『若波、さっき怖かったから…俺が足引っ張ってるのは確かだけど。』
「いや、嫌いじゃないからあんな…言い方にしたんだ。ごめんな。」
『そう、なの?』
「俺は、ついついお前の事甘やかすし。可愛さに流されて、何でも許しそうになるから。」
『ぁ~、でも確かに…。若波は俺に甘いよね。俺は、嬉しいけど』
「怠けてる訳ないんだよな。俺と同じ事してるんだから、結構な運動量だし…でも
いすかにとっては、オーバーユースだったり、オーバートレーニングにもなりかねない。
もっと、プランを考え直さないと。」
『俺が、相方なんて…無理があるよね?』
寮に帰って来て、部屋の中に入り、リビングの椅子の上にいすかを降ろした。
「大丈夫か、いすか…」
『ありがとう。ごめんね…俺、汗くさかったカモ…』
「全然、むしろ多分いすかのフェロモンのせいだと思うけど、良い匂い過ぎて
途中で膝からくず折れそうになった。」
いすかは、両手で顔を覆って視線をきょろきょろさせて
『やっぱり…?途中から何か若波が様子変わったなぁて思ってたから。』
「汗まで、そういう仕掛けがあるのかよ。」
『こればっかりは、どうにもできないんだよ。シャワーで流せば、かなり落ち着くとは
思うんだけど。』
「先に入るか?」
『ん、俺は若波の後にする。』
いすかは、甘え上手で俺の心を見透かしているのかと思う瞬間がある。
互いが高め合える相手だと認めながら、相手がつまづけば手を差し伸べて
また、同じ場所からスタートする。
俺は、それが当たり前だと思っている。
か細い体を酷使しつつ、黙って俺に合わせてくれていたのは他の誰でもない
いすかなのだ。
シャワーを頭から浴びて、ゴチャゴチャする頭の中を整理したくて。
リビングに戻ると、いすかは疲れた体を椅子にあずけて居眠りしている。
あどけない顔で、うっすらと口が開いている。
可愛い…猫みたいだ。何でだろうか、指を入れてみたくなる。
「……」
ドキドキしながら、いすかの唇に人差し指の先をゆっくり差し入れる。
…ぅあ、今、舌に指が触れた。
ゾクッとする感覚。
『んん…、っ…む…』
舌がもにゅ、と動いて指の腹を味蕾が優しく撫ぜる。
「ぇろ…、」
いすかが目を覚まして、ぱ、と口が開いた。
『なにしてんの~?』
「俺、やっぱりいすかは、エロいと思う。」
俺は、慌てて指を抜き去ったけど。
『えぇ…、何の事?』
いすかは、伸びをしてゆっくりと立ち上がり浴室に歩いて行った。
翌日、いすかは整形外科を受診してから、トレーナーとの話し合いの結果
少し練習量を抑えて、脚に負荷のかからない範囲のトレーニングやレッスン内容へと
変更がなされた。
疲労骨折になっていなくて良かった。
もどかしかった。確かに目の前にある目標、やるべき事はもう分かっている。
俺が、いすかを引っ張り上げるなんて思い上がりだったのだろうか。
満身創痍、ただ明らかなのは俺はいすかと、いずれはステージの上に立ちたいのだという
揺るがない想いがある。
『俺が言うのも、なんだけど…これも経験だから。』
「そうだな。俺は、本当にあと少しでいすかを…壊しかける所だった」
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