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デート当日

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久しぶりのデートに、スーツを着て私は家を出る。
待ち合わせは、図書館の近くのカフェだった。私の行きつけだと言うと、清川さんは
『実は、そうじゃないかと思っていました。』
と、メッセージが届いた。

今日は車ではなくて、電車での移動になる。
清川さんは、電車通勤らしく
毎朝あのラッシュに揉まれているのかと
思うと、考えただけで頭が下がる。

携帯には、メッセージが届き、
『もう着きます』と。

数日前の衝撃的な、告白を聞いた私は
半分は冗談として受け止めている。
今日これから出逢う清川さんを
見れば、そんな疑問などはすぐに
解決する事だろう。

『ごめんなさーい、藤野さん…、はぁ…お待たせしてしまいました?』

小走りの姿だけで、既に可愛い。
清川さんは、初夏らしい爽やかな色の
ワンピースを着ていた。
「綺麗ですよね、清川さん。なのになんで男だなんて冗談を?」

『冗談と思うのはご自由にどうぞ?でも僕はホントに男なんです。』
「女装、男子ってやつですか?」
『…こんなとこでお話しする内容でもありませんし、後できちんとお話しましょう。』

私は清川さんの言葉に促されて、カフェの店内に入りカウンターでオーダーを通して
テラス席にエスコートした。
『気が引けちゃうけど、藤川さんと一緒なら…心強いですね。』

私は、椅子に綺麗に座る清川さんを
見つめて。やっぱりまだ、疑問が消えない。
『こら…、見過ぎですよ?』
くすくす笑いながら、清川さんに
注意をされると私は、提供されたアイスコーヒーのグラスに手をかける。

テーブルの上に置かれた、アイス用のグラスと
ホット用のカップ。
「あれ?温かいのですか」
『はい…、こっちの方が私は落ち着くんです。』

ん?今、私と言った?
店に入る前は私には『僕』と言ったのに。
気を使っているのだろうか?

とても細かな気遣いに、私はすっかり
感心して。これ以上言及するのは
やめておこうと思った。
ちゃんと後で、話してくれると言っていた事だし。
しばらくは彼女といるつもりで
気分に浸ろう。

仕草も所作もやっぱりどこか
女性っぽいかもしれない。
駄目だ、気になり過ぎて目で追うばかりだ。

『もう、逢えないかと思ってたので…誘ってくれて信じられませんでした。』
「誘いますよ、清川さんは祖母の…あの人一倍見る目の厳しい祖母に認められたんですからね。
素晴らしい人なんでしょうね。」

『私は…何の取り柄もなくって。たまたま、お婆様が、お友達になって下さったのが純粋に嬉しくて』

穏やかな笑顔で、清川さんはブラックの
コーヒーを飲む。 
可愛い飲み物じゃないのがまた、
ギャップがあって良い。

「祖母の縁ですよ、本当に…私としてはとても大切に思っています。なので、ディナーもご一緒にどうですか?」
『ごめんなさい…、私、その、夕方には家に帰らなくちゃいけなくて。弟に夜ご飯を作らなきゃなんです。』

弟さんがいるのか。それは初耳だ。
やっぱり性格が良い。
益々、惹かれていく。
「そうですか、残念です。今度からはランチでお誘いします…良いですか?」
『でも、夕方まではお付き合い出来ますからね…ランチ、良いですね。
私普段からあまり外食に出ないので、楽しみです。』

カフェを出て駅裏の周辺に、と言われて
なんとなく嫌な予感がした。
清川さんは、ホテルの看板を探している。
『説明しやすい場所が、他に見当たらないので…』
慣れてるのか?と思いながら私は清川さんの
後ろ姿を見て次第に不安になって来た。

「本当に、いいんですか?そんな大切な事を私に話してくれると?」
『はい、僕の方は決意は固いです。藤野さんがどう思われるのかは分かりませんが…』

こんなに言われれば、やはり最後まで聞くべきだろうと思い。
ギャップさんと、とあるホテルに決めて
部屋を選んで入室した。

ドッと疲れた。
ベッドに仰向けになって倒れ込むと
清川さんが、含んだ笑みを浮かべながら
私の体に跨り下腹部辺りで留まり
ゆっくりと私の手を握った。

馬鹿みたいに、ドキドキしている。
スカートの中に手を導かれて、
固唾を飲む。
『ほら、確かめるんでしょ?丞茂さん』
「ぁ…、」
すす、っと手が多分下着に触れている。
柔らかい膨らみを指に感じる。

確かにこれは女性にはない器官だ。
『ん…っ♡』
「エロい声…」
『だって…っ、僕さっきからずっとがまんしてたから…ぁ…ん』

手のひらで性器を、柔らかく刺激すると
『ぁは…っ、服よごれちゃぅ…』
私はスカートを捲り上げた。
その後はスルスルと、清川さんが
綺麗に脱いだ。

上半身は女性物のキャミソールを着ていて、
胸の突起のせいで、少し生地が浮いていた。

「違和感が無くて驚いてる…」
『僕、この顔のせいで悪戯されそうになったり、何度もあるから。いっその事女の子として産まれたかった。でも、どちらでも無くて。やっぱり男としての今の自分を否定できなくて。』
女性物のショーツから、見える膨らみが
妙に淫靡だ。
「女の子になって欲しいなんて、言わないよ。私は今の清川さんが…とても魅力的だと思うから。」

『えっちは、まだ知らないから…安心してね?丞茂さん』
全然知らなさそうに思えないのが不思議だ。

「ちゃんと聞いてなかったけど清川さんは、私の事をどう思ってる?」
『…僕、好きでも無い人に体を見せたりしません!』
ちょっと拗ねた表情がまた可愛いらしい。
「時間はまだ夕方まではあるから、少し…いいかな?」
私が清川さんを抱き締めると、
キスがしたくなる。

清川さんも、それは同じだったらしく
少し顔を傾いで唇を重ねた。
キスで酔えるんじゃ無いかと思うくらいに
心地良くて、夢中だった。
小さな舌がたどたどしくて、微笑ましい。
キャミソールの上から胸の突起を
掻くと、吐息が漏れる。

ちゃんと感じてくれている。
ショーツを脱がせて、お尻に手を這わせると
清川さんは唇をゆっくり離し
『丞茂さん、挿れたいの…?』
潤んだ目で聞かれると、頷くしかなかった。
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