オッサンと、鬼神(後に嫁)

あきすと

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試したい衝動

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今回のゲスト

御坊 蛍
とある地方の守護職。
傍若無人、自信家で自己肯定感満載っぽい
熱い心の持ち主。
お目付け役の、大和と仲良し。











嫁が…職場に来た。
と、内線で呼び出しをくらったのは昼少し過ぎた頃。

「だから、来るなっての…。たまーに忘れた頃に来るよな?美祢。」
長椅子に、人形さんみたいのが弁当抱えて座ってる。

『忘れた癖に。お弁当。朝のは俺が食べるからさ、お店で出すお惣菜いくつか入れてきたから、食べてみて。じゃあ、俺店戻るから。』

確かに、今日は弁当忘れてった。
朝から、近くで事件があって慌ててすっ飛んでったから。そんなの考えてる暇も余裕も無かった。

美祢の隣に立ち、弁当を
押し付けられて
どこか、不機嫌そうな美祢の背中を見送った。

「…ありがとうな。」

様子がおかしく見えたけど、機嫌悪くなったのは
俺のせいだろうか?
美祢、怒ると怖いからな…。
帰ったら、ちゃんと
ありがとうしとこ。

職場に顔出すな、とは確かに何度か注意はしたんだが
美祢は、優しい性分で
忘れ物は必ず届けてくれる。
『困ったりしてないかと、心配になる。』
らしい。

前に何度か、仕事の帰りに
偶然一緒になる事があっただけで心底嬉しそうにしていた。
よく分からないが、美祢は外で俺と別々になっていて
会う事を喜ぶ。
そんな、四六時中では無いが…だいたいは一緒に家でも過ごしているのに。

寂しがり屋なんだろう。
そんな美祢が、やっぱり
可愛く映る。

考えれば考えるほど…
やっぱりさっきのは
良くなかったな。
はぁ、気が重い。

どうやって、ご機嫌伺いしようか。
ガシガシ頭を掻きながら、美祢が座ってたトコに腰を下ろす。

持ってきてくれた
まだ温みがある弁当を開けた。
…相変わらず料理上手いよな。彩りも綺麗だし。
なんだか、食べる前から
胸がいっぱいだ。

美祢の愛情を感じない日
なんて無い。
『帰って来る誰かを待つのも、苦じゃないよ。そんな人がいるだけで…幸せだ。』

心なしか、鼻の奥が
ツーンとしたような気がしたが、いつもより時間を掛けて昼食をとった。

一世紀程、一緒にいる。
幕末の頃より心身共に少し大人になった美祢。
本人は、どこも変わっていないつもりなんだろうが
そんなワケが無い。

第一、男から女へと
転生している。
昔から群を抜いて可愛かったのが、女へと変わってしまうとどうなるか?

自分の理性と毎日戦う羽目に…。
後、案外胸があるから
時々目のやり場に困る。

美祢は、確実に俺の弱点だ。
美祢の前世は、昔惚れて居た姫で、次はいがみ合ったりしていた上司と部下。しかも、同性…。

そして、ついに男女として
結ばれるかと思ったら

『は?なんでそんなのいるの、俺は男だぞ。』
いつだったか
胸が大きいんだから、
ちゃんとサラシを巻きなさいと注意したら、鼻で笑われたっけ。

俺はお前のお母さんかよ…。
あの頃に比べたら今は
かなり身体に気を使うようになってきたらしく。

もともと綺麗だった
珠のような肌は、白く
ハリがあって柔らかい。
よく頬を撫でる時に、むきたまごみたいにスベスベだと感心する。

ダメだ、美祢の事で頭がいっぱいだ。

出来る事なら、追いかけたかった。





帰宅後、俺が美祢を待つ側になるのは珍しい。
もう、九時をまわってる。

何かあったんだろうか?
心配だ。
店の片付けが大変なんだろうか。
連絡も、よこさないなんて。
「やばい…携帯充電切れてた。」
もしかしたら、連絡はしてても繋がらなかったから?
もう少し待ってみよう。

『ふふっ、蛍ってば。そんなのバレたら安芸怒るよ?』

来た‼︎
玄関で声がした。
誰か、一緒なんだろうか。
笑い声がする。
『どうぞ、上がって上がって。』
廊下を歩いてくる誰か。

だ、誰だ?
『こんばんは~、安芸。久し振りやな。』

御坊 蛍&…!
何であいつが、美祢と…
『はぁ、ただいまぁ。ごめん、遅くなっちゃって。あ、安芸さ~携帯充電切れしてない?通じなくてこんな時間になっちゃったよ。』
「お、おかえり。蛍、いらっしゃい。」

『飲むぞ~!』
イマイチ状況が読めないが、多分どこかで偶然会ったんだろな。

「美祢、さっきは弁当ありがとうな…助かった。」
『あっ、まだ開けないでよ、蛍!グラス用意するから。』

普通に無視か。
美祢よ……。

蛍は遠慮なく座卓の前に
堂々と座った。
「こっちに来るなんて珍しいな、仕事か?」

『いや、美祢に会いに来た。』
え…。何この青年。
「へぇ~…美祢は、可愛いからなぁ。」

自分の家なのに
めちゃくちゃ居心地悪いんですが。

『嘘ばっか!違うよ、お店に顔出してくれたの。…はい、じゃあ乾杯しよっか。』
台所から、美祢がグラス三つと肴を持ってきて
卓上に並べる。

とんでもなく、流されてる気がするが。ここは、和やかになるなら…。

「まさか、こんな遠くまで来てくれたのか。有難い話だな。」
乾杯を済ませて、各々の
ペースで飲み始める。
『次は、大和と来るつもりなんだよ。今日のは下調べみたいなトコ。』

『いいなぁ、待ってるよ。二人の為に美味しいご馳走たくさん作るからね。』

ほろ酔いしてる美祢が、
嬉しそうに笑う。
『美祢って、可愛いよな。』
「……。」
蛍は、まだそんな酔ってなさそうだが。
『蛍は、カッコいいよ~強いし。』

『美祢は、会う度に女らしくなってく。自慢の嫁だよな?安芸。』

そりゃあもちろん。
『安芸は、そんな風に思ってくれてないもん。さっきだって…さっきだって…』

マズイ。
美祢の瞳が、涙で
うるうるしだしてる。

だから、酒飲ますの嫌なんだよ…。
『え…。大丈夫かぁ?喧嘩したとか?』

蛍も、なんとなく
不穏な雰囲気に気付き始めた。
「喧嘩は、していない。ただ、ちょっと邪険にしてしまったんだ。悪かった。せっかく届けに来てくれたのに。」

『み、美祢…っ?大丈夫か?』
さすがに心配した蛍が
そっと隣で泣き泣きの美祢の頭を撫でようとした手を払いのけた。

「…あぁ、すまん。蛍。」
参ったな、美祢がいじけると長引く。
『蛍は、俺の頭触っちゃダメ。』

「こら、蛍は美祢を心配してるんだろ。あっ、それ以上酒は飲むな!」

バッ、と手にしていた酒の缶を奪い取る。
『説教するな、偉そうに~!安芸なんか……の癖に』

今、ものすごく聞くに堪えない言葉が美祢から放たれて…確実に蛍もドン引きの様子だ。

本当ね、どうしましょう。

「美祢…美祢、」
『…ん?…っ』


『わぁーお…安芸やるなぁ。』
俯いていた美祢を、上向かせて唇を重ねた。

いや、もうこれくらいしか
思い浮かばなかったってのが正直なところ。

「…」
そっと、距離を取ると
美祢は言った。

『いつか…またあんな風に言われるのかなって思ったら寂しくって…』

やってしまった、やってしまった。
美祢の言葉が、胸に刺さる。
俺まで、傷付いた気分だ。

「そんな…俺が美祢に、職場に来るなって言うのはお前が可愛いからだ。嫁だって言えばいいんだろうが、歳も離れてるしな。妙な勘繰りをされたくないから。なるべく他の人間に美祢は見せたくない。美祢を好きにならない奴なんて、いないから。」

ぐすっ、と鼻をすすってる美祢も当たり前に可愛い。
それだから、俺は俺で
不安なんだ。

『お熱いことで…邪魔しちゃ悪いからそろそろ帰るかな。』

「蛍、すまん。帰りはどうするんだ?宿は?」
美祢に、かまけてて蛍
そっちのけになっていた。

『安芸、俺は大人だから平気だって。しっかり美祢の傍に居てやんなよ。』

「また、遊びに来てくれ。大和にも宜しく…」
『そのままで良いから、美祢、またな?』

チラッと、美祢が蛍の方を見て頷く。

なんとも、間が悪かったよな、蛍も。
「気を付けて帰れよ?」
『ん。そんじゃ、続けて下さい。』
あっけらかんと笑って
玄関に向かう蛍。

「こら、美祢。」
『何だよ、安芸。』

「可愛いなぁ、美祢は。蛍居るのに我慢できなかったのか?」
むぎゅ~っと抱きしめて
いっぱい頭を撫でる。

『我慢、しなきゃダメなのに…飲んでたら出来なくなっちゃった。』

これで、一切計算が無い
美祢だから怖い。
「なっちゃったって、…。美祢の唇かたち綺麗だよなぁ。下唇が特に可愛い。」

『…ん。安芸専用だよ。』
酔っ払って取り乱してたのが落ち着いて、それがかえって生々しく感じる。

「まさか…。」
柔らかい。
熱を帯びた口内も
手を握る指先も、触れた先から熱く馴染んでいくような不思議で心地いい感覚。

『…っは、』
息継ぎすら、惜しいと
思ったのは美祢も同じだろう。
「美祢…?」
確認するように、目を合わせれば…パッと逸らされてしまった。
『しっ、しないよ?こんな飲んだ後にするなんてヤだ。』

美祢は、そうかもしれないが。俺からすれば、あれは飲んだ内にも入らない気が…。

まぁ、本人がそう言う訳だし。

「別に、そんな風では無いと思うけど。美祢次第だから今日は無し。じゃあ、先に風呂入らせて貰うわ。」

『うん。俺は、ここ片付ける。』
やっとこさ立って、座卓の周りやグラスを片付ける美祢。
その間に、風呂に入らせて貰い、一人になると
またもや色々考える。

どれだけ長年一緒にいても
いまだに、目を見張るような潔癖さを見せ付けられる。
堕ちきらない、その
いっそ卑怯な程の純情さを
本当なのかと…疑いたくなる自分が、酷く汚い気がして嫌だ。

焚き付けられて、直前に
水をぶっ掛けられて。
その繰り返し。

美祢が、近くて遠い。
だからこうして、今でも
感情に来るんだろう。
一喜一憂できる。

こうやって、今
風呂から上がって行ったら
もう、さっきまでの美祢じゃない。

それでも、毎晩
美祢の髪を撫でて眠るんだろうけど。
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