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俺が酒カスになったのには、ワケがあった。
とにかく現実が嫌で、嫌で。
物心ついた時から世界を斜に構えて
見ていた。
親も酒カスだったから、俺もきっと
似た様な流れを汲んでるんだと思う。
それだって、本当は死ぬほど嫌だ。
嫌じゃなかったのは、誰かからの優しさ。
こんな酒カスに手を差し伸べてくれる
神みたいな存在感が今でも世界にはいるの
かと思うと、生きている事も良いなぁと思える。
隣の部屋の守岡さんだって、その1人だ。
ここのアパートに住んで、もう
2、3年経つけれど。
部屋の前でも世話になり、玄関先でも
助けられ。部屋まで間違えたりして
迷惑をかけまくってる。
なのに、なんで守岡さんは引っ越さないのかとしばらくは不思議で怖かった。
まぁ、後にちゃんと下心があった事に
俺もかなり驚きはした。
普段着はどこか異国感のある装いをして
暮らしている守岡さん。
ちょっと長めの緩いウェーブがかった
髪型が色気を引き立てている。
パッと見、近寄りがたいのに話してる
雰囲気は優しくて。
瞳の奥が子供みたいだと思った事があった。
初めてこのアパートに越して来た時、
守岡さんはベランダで煙草を吸っていた。
休日の朝から、束ねた髪に眼鏡。
春先だから綿入れを着ていた。
俺の姿を見て、察したらしく
へらりと笑ってくれた。
印象は良かった。
荷物をあらかた運び込んだ後に、
隣人の部屋に挨拶に行った。
小さな菓子の紙袋を下げて、チャイムを
鳴らす。
緊張した。俺より年上の同性と
近距離でのコミュニケーション。
アレコレ考えてる暇に、隣人は玄関を
開けて顔をのぞかせた。
『あ、さっきの…』
「あの、隣に越して来た…豊島です。ちょっとバタバタしててご迷惑をおかけしますが、『大丈夫。気にしないから。わざわざご挨拶にありがとう。エーと、守岡です。よろしく。』ぁ、ハイ!よろしくお願いします!」
紙袋を勢いよく渡して、反応を見る事なく
自分の部屋へと戻って来た。
「はぁー…なんかあの人、昔の文豪?みたいだな。」
さほど文豪を知りはしないけど。
でも何となく、独特の雰囲気が俺の知る
イメージと妙にマッチした。
思い出すのは、酒でやられて帰って
昏倒しかけてる時に隣の部屋の守岡さんと
玄関前で鉢合わせして、そのまま吐きそうに吐けない俺を介抱してくれた事。
吐くのが怖いのは子供の頃から変わらない。
なので余計に苦しくて辛くて
どうしようも無くなる。
リビングに倒れ込むオレを見かねた
守岡さんが
『洗面所借りるよ。』
と言ってすぐには帰って来た。
とにかく現実が嫌で、嫌で。
物心ついた時から世界を斜に構えて
見ていた。
親も酒カスだったから、俺もきっと
似た様な流れを汲んでるんだと思う。
それだって、本当は死ぬほど嫌だ。
嫌じゃなかったのは、誰かからの優しさ。
こんな酒カスに手を差し伸べてくれる
神みたいな存在感が今でも世界にはいるの
かと思うと、生きている事も良いなぁと思える。
隣の部屋の守岡さんだって、その1人だ。
ここのアパートに住んで、もう
2、3年経つけれど。
部屋の前でも世話になり、玄関先でも
助けられ。部屋まで間違えたりして
迷惑をかけまくってる。
なのに、なんで守岡さんは引っ越さないのかとしばらくは不思議で怖かった。
まぁ、後にちゃんと下心があった事に
俺もかなり驚きはした。
普段着はどこか異国感のある装いをして
暮らしている守岡さん。
ちょっと長めの緩いウェーブがかった
髪型が色気を引き立てている。
パッと見、近寄りがたいのに話してる
雰囲気は優しくて。
瞳の奥が子供みたいだと思った事があった。
初めてこのアパートに越して来た時、
守岡さんはベランダで煙草を吸っていた。
休日の朝から、束ねた髪に眼鏡。
春先だから綿入れを着ていた。
俺の姿を見て、察したらしく
へらりと笑ってくれた。
印象は良かった。
荷物をあらかた運び込んだ後に、
隣人の部屋に挨拶に行った。
小さな菓子の紙袋を下げて、チャイムを
鳴らす。
緊張した。俺より年上の同性と
近距離でのコミュニケーション。
アレコレ考えてる暇に、隣人は玄関を
開けて顔をのぞかせた。
『あ、さっきの…』
「あの、隣に越して来た…豊島です。ちょっとバタバタしててご迷惑をおかけしますが、『大丈夫。気にしないから。わざわざご挨拶にありがとう。エーと、守岡です。よろしく。』ぁ、ハイ!よろしくお願いします!」
紙袋を勢いよく渡して、反応を見る事なく
自分の部屋へと戻って来た。
「はぁー…なんかあの人、昔の文豪?みたいだな。」
さほど文豪を知りはしないけど。
でも何となく、独特の雰囲気が俺の知る
イメージと妙にマッチした。
思い出すのは、酒でやられて帰って
昏倒しかけてる時に隣の部屋の守岡さんと
玄関前で鉢合わせして、そのまま吐きそうに吐けない俺を介抱してくれた事。
吐くのが怖いのは子供の頃から変わらない。
なので余計に苦しくて辛くて
どうしようも無くなる。
リビングに倒れ込むオレを見かねた
守岡さんが
『洗面所借りるよ。』
と言ってすぐには帰って来た。
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