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進むべき道
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魔王とアウィスとキティを連れて森に出る。何かゲートのようなものがあるのかと思ったが、気が付いたら周りの景色が変わっていた。
「どういうことなの…?」
「この森は生き物を惑わすからな」
魔王はそう言って、すたすたと迷いなく歩き始める。
「え、魔王様、方向分かるんですか?」
「魔王様の魔法の一つに、自分が進む道がはっきりと見えるというものがありますにゃ」
キティが言う。
「この魔法があったからこそ、魔王様は絶対的な君主として魔界の頂点に君臨し続けて
いるのです」
アウィスの言葉に、ミスティは相槌を打った。
「私の理想をかなえるために最適な道が分かるんだ」
魔王は振り返りもせずにそう言った。
結界のない部分から、簡単に王国に乗り込むことができた。
防御結界と『境界の森』は、魔法を遮断する効果がある。そのため森の中や国外からではワープを使うことができないが、国に入ってしまえばあとはワープで王の元まで簡単にたどり着けるのである。
長距離のワープを使える魔法使いは限られているが、ミスティは天才だ。
四人まとめて王城までワープするのも余裕だった。
「王!ただいま戻りました!」
突然現れたミスティの高らかな宣言に、王はびくりと身体を震わせる。
「な、なんだミスティか…って、なんだ、お前の周りにいる物騒な男たちは」
「魔界から連れてきました」
ミスティの言葉に、王は一瞬ぽかんと口を開けて、それから大声をあげて笑いだす。
「魔界だって?そんなものが存在するわけ…」
王の言葉の途中で、魔王が魔法を使った気配が感じられた。
「な、何をした…」
「拘束魔法」
ぶっきらぼうに魔王は答える。
「それから、人を馬鹿にしたら死ぬ魔法もかけたから」
王は苦々しい顔で魔王を見る。
「ばかな、そんな魔法があるわけ…」
「ばかって言ったね」
王は苦しそうにもがいた。死にそうな姿に、ミスティは焦る。
「ちょ、ちょっと魔王様!王を殺すなら私にやらせてください!」
魔王は答えなかった。やがて、王を苦しめていた魔法は解除されたようだった。
「ふ、ふざけるな…」
「アウィス、キティ」
魔王は二人の名を呼ぶ。
すると、二人は突然見たこともない獣に変身した。
「え…え?!」
その姿に戸惑うミスティ。王は恐れおののいて震えていた。
アウィスは翼の生えた鷲頭の獅子、キティは真っ赤な毛皮を逆立ててうなる巨大な化け猫の姿になっている。
「私はいつでもお前を殺せる。お前の護衛はお前を守る気もないし」
確かに。奇襲とはいえ、いつまで経っても護衛がこないのは不思議だ。
まあ、護衛たちも私と同じくらい働いていたから、疲れててそれどころじゃないんだろうけど。
「ミスティ」
魔王に名を呼ばれ、ミスティはつい「はい!」と返事をする。
「お前の好きにしろ。ただし殺すな。殺すなら私がやる…お前の手を汚してはならない」
ミスティは頷いて、それから国王につかつかと歩み寄った。
そしてまずは魔法で国王の頭をつるっぱげにする。
「や、やめろ聖女ミスティ!なんてことをしてくれたんだ!」
国王も自分の頭が涼しくなったことに気が付いたらしい。
「あんたは国王クビ!もう用無しよ!これからはこの可憐な魔王様がこの国の王になるんだから!」
突然国王に指名された魔王は困惑する。ミスティはそれから、国王の頭から王冠を奪い取って投げ捨て、その頭に魔法をかけた。
その魔法は、国王の禿げ頭を常に光で照らし出して目立たせる呪いであった。
「あんたには王冠よりもこっちのほうがお似合いだわ」
何がなんだか分からぬ国王は、涙目で「なんでもするから殺すな」と命乞いをする。
「はー!すっきりした!ずっとこうしてやりたかったのよ!この無能ゴミクズお荷物国王め!」
国王を玉座から蹴落として、ミスティは満足気に笑った。
「魔王様、二人で魔界とこの国をおさめましょう。人と魔族の共存を目指しましょう。たくさん大変なことはあると思いますが」
ミスティは玉座の前で、魔王をまっすぐ見つめている。
「私たちなら、きっとうまくやれます。私は魔王様のことが大好きだし、魔王様が愛するものをすべて愛しますから」
魔王は、自分の進むべき道をはっきりと見ることができる。
その矢印は、迷いなくミスティへと続いていた。
「魔王様も私を信じてください」
魔王は静かに目を閉じる。脳裏に浮かぶのは、700年も前に出会ったジョアンの姿。
『タピアならきっと、私以外の人間とも信じあえるから』
彼女の言葉を思い出し、魔王は静かにうなずいた。
「どういうことなの…?」
「この森は生き物を惑わすからな」
魔王はそう言って、すたすたと迷いなく歩き始める。
「え、魔王様、方向分かるんですか?」
「魔王様の魔法の一つに、自分が進む道がはっきりと見えるというものがありますにゃ」
キティが言う。
「この魔法があったからこそ、魔王様は絶対的な君主として魔界の頂点に君臨し続けて
いるのです」
アウィスの言葉に、ミスティは相槌を打った。
「私の理想をかなえるために最適な道が分かるんだ」
魔王は振り返りもせずにそう言った。
結界のない部分から、簡単に王国に乗り込むことができた。
防御結界と『境界の森』は、魔法を遮断する効果がある。そのため森の中や国外からではワープを使うことができないが、国に入ってしまえばあとはワープで王の元まで簡単にたどり着けるのである。
長距離のワープを使える魔法使いは限られているが、ミスティは天才だ。
四人まとめて王城までワープするのも余裕だった。
「王!ただいま戻りました!」
突然現れたミスティの高らかな宣言に、王はびくりと身体を震わせる。
「な、なんだミスティか…って、なんだ、お前の周りにいる物騒な男たちは」
「魔界から連れてきました」
ミスティの言葉に、王は一瞬ぽかんと口を開けて、それから大声をあげて笑いだす。
「魔界だって?そんなものが存在するわけ…」
王の言葉の途中で、魔王が魔法を使った気配が感じられた。
「な、何をした…」
「拘束魔法」
ぶっきらぼうに魔王は答える。
「それから、人を馬鹿にしたら死ぬ魔法もかけたから」
王は苦々しい顔で魔王を見る。
「ばかな、そんな魔法があるわけ…」
「ばかって言ったね」
王は苦しそうにもがいた。死にそうな姿に、ミスティは焦る。
「ちょ、ちょっと魔王様!王を殺すなら私にやらせてください!」
魔王は答えなかった。やがて、王を苦しめていた魔法は解除されたようだった。
「ふ、ふざけるな…」
「アウィス、キティ」
魔王は二人の名を呼ぶ。
すると、二人は突然見たこともない獣に変身した。
「え…え?!」
その姿に戸惑うミスティ。王は恐れおののいて震えていた。
アウィスは翼の生えた鷲頭の獅子、キティは真っ赤な毛皮を逆立ててうなる巨大な化け猫の姿になっている。
「私はいつでもお前を殺せる。お前の護衛はお前を守る気もないし」
確かに。奇襲とはいえ、いつまで経っても護衛がこないのは不思議だ。
まあ、護衛たちも私と同じくらい働いていたから、疲れててそれどころじゃないんだろうけど。
「ミスティ」
魔王に名を呼ばれ、ミスティはつい「はい!」と返事をする。
「お前の好きにしろ。ただし殺すな。殺すなら私がやる…お前の手を汚してはならない」
ミスティは頷いて、それから国王につかつかと歩み寄った。
そしてまずは魔法で国王の頭をつるっぱげにする。
「や、やめろ聖女ミスティ!なんてことをしてくれたんだ!」
国王も自分の頭が涼しくなったことに気が付いたらしい。
「あんたは国王クビ!もう用無しよ!これからはこの可憐な魔王様がこの国の王になるんだから!」
突然国王に指名された魔王は困惑する。ミスティはそれから、国王の頭から王冠を奪い取って投げ捨て、その頭に魔法をかけた。
その魔法は、国王の禿げ頭を常に光で照らし出して目立たせる呪いであった。
「あんたには王冠よりもこっちのほうがお似合いだわ」
何がなんだか分からぬ国王は、涙目で「なんでもするから殺すな」と命乞いをする。
「はー!すっきりした!ずっとこうしてやりたかったのよ!この無能ゴミクズお荷物国王め!」
国王を玉座から蹴落として、ミスティは満足気に笑った。
「魔王様、二人で魔界とこの国をおさめましょう。人と魔族の共存を目指しましょう。たくさん大変なことはあると思いますが」
ミスティは玉座の前で、魔王をまっすぐ見つめている。
「私たちなら、きっとうまくやれます。私は魔王様のことが大好きだし、魔王様が愛するものをすべて愛しますから」
魔王は、自分の進むべき道をはっきりと見ることができる。
その矢印は、迷いなくミスティへと続いていた。
「魔王様も私を信じてください」
魔王は静かに目を閉じる。脳裏に浮かぶのは、700年も前に出会ったジョアンの姿。
『タピアならきっと、私以外の人間とも信じあえるから』
彼女の言葉を思い出し、魔王は静かにうなずいた。
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