7 / 10
7 メイド服とニーハイ☕
しおりを挟む
「みーやび、そろそろ出てってあげなよお」
更衣室に顔を覗かせたメイドの一人が、にまにまと中にいたみやびに声をかけた。
「きゃわっ……きゃわわ! 一日だけでもご褒美だよみやび! 眼福~♡」
「ねー咲、変じゃない?」
「あっ、待ってスカート。……よし、このぎりぎりの絶対領域が素晴らしい仕上がり」
「何それ?」
みやびは鏡の前でくるりと回り、自分の姿を確認している。メイド──咲は小さなテーブルに置かれたスマホの画面に写っていたくまちゃん🧸オムライスの写真に気づき、興味深そうにそれを見た。
「みやび、あのリーマンぽいおじさん……宮田さん? って何歳?」
「えっ、知らない。三十手前かな」
「宮っちの、どこが好きなのお」
「──別にっ、好きとかじゃないし。ていうか宮っちとか勝手に呼ばないで!」
鏡越しにみやびが咲を軽く睨みつけた。楽しそうにみやびを観察していた咲は、睨まれたことなど気にもせず、ふと思い出したように壁の時計を見る。
「ほらほらぁ、もう行こう? おじさん達のことだいぶ待たせてるよ」
「ねえ、本当にあたし変じゃない?」
「世界一可愛いから、もう行こ。ドリンク持って行ってあげないと!」
そろそろ食べ終わりそうなのを見計らってのタイミングだった。
「あっ、みやびがもし宮っちと結婚なんてしちゃったらさあ、……宮田みやび」
「変なこと言わないで」
「あっ婿養子に来て貰えば解決?」
「変なこと言わないでってば!」
嫌そうな表情のみやびの顔には朱が散っている。嫌なのか照れているのか。しかしこの表情は咲にとってご褒美だ。
🧸
食後にコーヒーを注文していた。くまちゃん🧸オムライスの皿が下げられ、コーヒーお持ちしますねと言われてから何分か間があった。少し遅いなと思っていた頃に、星野のスマホが小刻みに震える。
「あれっ電話だ。ちょっと外すわ」
唐突に萌え萌え空間に一人になり、僕はなんだか居心地が悪くなった。
「お待たせいたしました、ご主人様♡」
コーヒカップが載ったトレイを持ったメイドさんが僕の席に近づいて言った。さっきまで対応してくれた子と違う、というか聞いたことのある声に僕はばっと顔を上げる。
「どうぞ」
目の前に差し出されたコーヒーは良い薫りがした。そしてそれを置いてくれたメイドさんの姿をまじまじと見て、僕は思わず息を呑む。心拍数が跳ね上がるのがわかる。
「──どうぞ?」
はにかんだように笑顔を浮かべたメイドさんは、みやびだった。
長い髪をツインテールに結び、ひらひらのヘッドドレスがよく似合っていた。ふんわりとしたメイド服のスカート丈は膝より若干上で、黒いニーハイソックスとスカートの間にほんの少しだけ肌が見えて、どきりとする。この店の制服であるが、みやびが身に着けるとより一層可愛らしく見えるのは元々の素材のせいだろうか。
うぐぅ。
なんだこの可愛い生き物は、天使かな!?
「お連れ様は?」
「えっあっ星野はちょっと電話で」
「そうなんですねご主人様。ミルクとお砂糖はお入れしますか?」
「いやっ、いらな……」
僕は普段コーヒーには何も入れない派だったが、みやびは何故か残念そうに「そうなんですね」と呟いた。
あれっ、これはもしかしてミルクとか入れてくれるつもりだったのか? ぴんと来て、僕は言い直す。
「た、たまには入れようかな」
「かしこまりました、ご主人様」
みやびは嬉しそうに微笑んで、僕のコーヒーにミルクと砂糖を入れると、スプーンでくるくるかき回した。
琥珀色の液体が、淡くミルクと混じり合ってゆく。普段みやびはツンツンしているが、今ここにいるみやびはなんだか普段と違って見えて、変なふうに緊張した。
「はい、どうぞ。ふーふーしますか?」
「……それはさすがに」
「あっ、メイドさんとイチャイチャしてやがる! いいなー」
ずっと続いて欲しかった空間が、星野の声で突如崩れた。電話が終わって戻ってきたようだ。いやしかし、戻ってきてくれて良かったのかもしれない。僕の理性がどうにかなりそうだ。
「いいなー。俺にもミルク入れて♡」
「星野はブラック無糖だろ」
「はあ? 宮田だってそうだろうがー」
「今日はいいんだ」
「……ははぁん、もしやこちらのメイドさん、みやびちゃん?」
察したらしい星野は、みやびを不躾に眺めた。あんまり見るなもったいない!
「はじめまして、みやびです♡ ミルクお入れしますね」
星野のコーヒーにもミルクを入れ、くるくるしているみやびの姿を見て、得も言われぬ感情がどこかから芽生える。なんだこれは。まさか星野に嫉妬しているのか僕は?
もやもやしている僕に気づいたのか、みやびはちらりとこちらを見て、意味深に笑んだ。いつものツンツンはどこへ行ったんだ。
「いやあ、可愛いなあ。なんで宮田なの? 学校にもっといい男いるだろー?」
「何を言ってるのかわかりません、ご主人様。ではごゆっくり♡」
みやびはするりと躱して、僕達の席を離れた。久しぶりに飲んだミルクと砂糖入りのコーヒーは、なんだかとても優しい味がした。
名残惜しいみやびの後ろ姿を僕は見送る。スカートからすらりと伸びるニーハイソックスの脚がやけに魅力的で、脳裏に焼き付いた。
これはけしてやましい感情ではない。そう自分に言い聞かせた。
更衣室に顔を覗かせたメイドの一人が、にまにまと中にいたみやびに声をかけた。
「きゃわっ……きゃわわ! 一日だけでもご褒美だよみやび! 眼福~♡」
「ねー咲、変じゃない?」
「あっ、待ってスカート。……よし、このぎりぎりの絶対領域が素晴らしい仕上がり」
「何それ?」
みやびは鏡の前でくるりと回り、自分の姿を確認している。メイド──咲は小さなテーブルに置かれたスマホの画面に写っていたくまちゃん🧸オムライスの写真に気づき、興味深そうにそれを見た。
「みやび、あのリーマンぽいおじさん……宮田さん? って何歳?」
「えっ、知らない。三十手前かな」
「宮っちの、どこが好きなのお」
「──別にっ、好きとかじゃないし。ていうか宮っちとか勝手に呼ばないで!」
鏡越しにみやびが咲を軽く睨みつけた。楽しそうにみやびを観察していた咲は、睨まれたことなど気にもせず、ふと思い出したように壁の時計を見る。
「ほらほらぁ、もう行こう? おじさん達のことだいぶ待たせてるよ」
「ねえ、本当にあたし変じゃない?」
「世界一可愛いから、もう行こ。ドリンク持って行ってあげないと!」
そろそろ食べ終わりそうなのを見計らってのタイミングだった。
「あっ、みやびがもし宮っちと結婚なんてしちゃったらさあ、……宮田みやび」
「変なこと言わないで」
「あっ婿養子に来て貰えば解決?」
「変なこと言わないでってば!」
嫌そうな表情のみやびの顔には朱が散っている。嫌なのか照れているのか。しかしこの表情は咲にとってご褒美だ。
🧸
食後にコーヒーを注文していた。くまちゃん🧸オムライスの皿が下げられ、コーヒーお持ちしますねと言われてから何分か間があった。少し遅いなと思っていた頃に、星野のスマホが小刻みに震える。
「あれっ電話だ。ちょっと外すわ」
唐突に萌え萌え空間に一人になり、僕はなんだか居心地が悪くなった。
「お待たせいたしました、ご主人様♡」
コーヒカップが載ったトレイを持ったメイドさんが僕の席に近づいて言った。さっきまで対応してくれた子と違う、というか聞いたことのある声に僕はばっと顔を上げる。
「どうぞ」
目の前に差し出されたコーヒーは良い薫りがした。そしてそれを置いてくれたメイドさんの姿をまじまじと見て、僕は思わず息を呑む。心拍数が跳ね上がるのがわかる。
「──どうぞ?」
はにかんだように笑顔を浮かべたメイドさんは、みやびだった。
長い髪をツインテールに結び、ひらひらのヘッドドレスがよく似合っていた。ふんわりとしたメイド服のスカート丈は膝より若干上で、黒いニーハイソックスとスカートの間にほんの少しだけ肌が見えて、どきりとする。この店の制服であるが、みやびが身に着けるとより一層可愛らしく見えるのは元々の素材のせいだろうか。
うぐぅ。
なんだこの可愛い生き物は、天使かな!?
「お連れ様は?」
「えっあっ星野はちょっと電話で」
「そうなんですねご主人様。ミルクとお砂糖はお入れしますか?」
「いやっ、いらな……」
僕は普段コーヒーには何も入れない派だったが、みやびは何故か残念そうに「そうなんですね」と呟いた。
あれっ、これはもしかしてミルクとか入れてくれるつもりだったのか? ぴんと来て、僕は言い直す。
「た、たまには入れようかな」
「かしこまりました、ご主人様」
みやびは嬉しそうに微笑んで、僕のコーヒーにミルクと砂糖を入れると、スプーンでくるくるかき回した。
琥珀色の液体が、淡くミルクと混じり合ってゆく。普段みやびはツンツンしているが、今ここにいるみやびはなんだか普段と違って見えて、変なふうに緊張した。
「はい、どうぞ。ふーふーしますか?」
「……それはさすがに」
「あっ、メイドさんとイチャイチャしてやがる! いいなー」
ずっと続いて欲しかった空間が、星野の声で突如崩れた。電話が終わって戻ってきたようだ。いやしかし、戻ってきてくれて良かったのかもしれない。僕の理性がどうにかなりそうだ。
「いいなー。俺にもミルク入れて♡」
「星野はブラック無糖だろ」
「はあ? 宮田だってそうだろうがー」
「今日はいいんだ」
「……ははぁん、もしやこちらのメイドさん、みやびちゃん?」
察したらしい星野は、みやびを不躾に眺めた。あんまり見るなもったいない!
「はじめまして、みやびです♡ ミルクお入れしますね」
星野のコーヒーにもミルクを入れ、くるくるしているみやびの姿を見て、得も言われぬ感情がどこかから芽生える。なんだこれは。まさか星野に嫉妬しているのか僕は?
もやもやしている僕に気づいたのか、みやびはちらりとこちらを見て、意味深に笑んだ。いつものツンツンはどこへ行ったんだ。
「いやあ、可愛いなあ。なんで宮田なの? 学校にもっといい男いるだろー?」
「何を言ってるのかわかりません、ご主人様。ではごゆっくり♡」
みやびはするりと躱して、僕達の席を離れた。久しぶりに飲んだミルクと砂糖入りのコーヒーは、なんだかとても優しい味がした。
名残惜しいみやびの後ろ姿を僕は見送る。スカートからすらりと伸びるニーハイソックスの脚がやけに魅力的で、脳裏に焼き付いた。
これはけしてやましい感情ではない。そう自分に言い聞かせた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる