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第一章「いきなり冒険者」
第28.5話 009「夜空」
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見上げれば満天の星空。
パチパチと焚火の中で燃えた枝が爆ぜる。
ぼんやりと炎を眺めながらオレは手元の地図に視線を落とした。
焚火の火だけでは見えにくいだろうが、オレには暗視の能力がある。
それはマヤによって描かれたこの村周辺の地図だ。
その中に印のつけられた場所がある。それが今回目指す場所だ。
現地まで行かなければ実際のところは分からない。
見当をつけた場所に行って空振りという可能性だってあった。
しかも地図だけでは分からないことも多い。
実際にこの廃村の現状も訪れてみるまでは分からなかった。
人がいなくなるということがこれほどに荒んだ状況を作り出すとは予想すらしていなかった。
崩れた建物の一角に幕を張り屋根にする。これで夜露をしのぐことができる。
寝るときはマントに包まり眠る――これはかなり効率が悪そうだったのでマザーさんにお願いして寝袋を作っていただきました。
「これは……こんな快適な寝具見たことないです!」
ミーシャが寝袋を見て目を輝かせた。
寝袋といっても布に綿を入れた簡単なものだ。今の季節あまり寒くないので最低限の防寒機能しかない。
ふふふ。この程度で喜んでくれるとは、他にもキャンプの便利グッズを持ち出してみようかとも思ったが、あまりに便利になるとこの雰囲気が台無しだ。
組み立て式のイス程度ならご愛嬌という事でとりあえずは人数分用意する。
「これもすごいですね」
今までならば布を敷いてその上に座るかぐらいしかしてきていないのだろう。
快適な野営にここが危険地帯なのだという気分が薄れそうになった。
「これは教会で作れるかもしれません」
シャルカも目を見張っている。材料集めは贅沢さえ言わなければ教会で集めることができるだろう。
商業ギルドに行き商品の登録を行えば独占して販売ができるという事だ。
「それじゃ大量に作って売り出せばいい」
「えっ? いいんですか?」
シャルカは驚いたようだ。
寝袋自体は大したことはない。逆に今まで誰も思いつかなかった方が不思議なくらいだ。
ミーシャに聞いてみたが、そもそも冒険者はマントや毛布に包まって眠る。外敵に警戒してのことだ。寝袋もいざという時にすぐに動けるように留め具は簡単に外れるようにしてある。
アイデアさえあれば誰でも作れるのだが、今までなかったのであれば、今使っているものがこの世界での寝袋第一号という事になる。
「やるかやらないかはシャルカ次第だ。それで教会が潤えばそれでいいんじゃないか?」
「自分で売り出そうとな思わないんですか?」
まあ、オレが独占して販売すればひと財産にはなるだろう。しかし、そんな気は毛頭なかった。
誰かの助けになればそれでいい。寝袋くらいで人が助かるのならば安いものだ。
「興味ないな」
これは本当のことだ。オレは商売っ気がないのだろう。大人になったら苦労しそうだ。絶対に出世しないだろうし子供の立場ならば父親にしたくないタイプである。生活は苦労しそうだ。
「ノゾミ……すごいです」
ミーシャが感動したようにすり寄ってきた。
「この旅が終わって教会に帰ったら……」
オレは焚火に枝をくべながらシャルカに言う。
「他にも売れそうなものを教えてやるよ」
「いいんですか?」
どうしていいかわからないといった顔だ。
「私たちは……あなたに返せるものなんてありませんよ?」
そんなものを要求するほどオレは欲深くないつもりだ。
「そんなものはいらない……そうだな……」
オレは少しだけ考えた。
「もし商品ができたなら、オレにその商品を安くして売ってくれ」
シャルカは目をぱちくりとさせる。そして、大きく口を開けて笑い出した。
「ノゾミさんって面白い方なんですね!」
「そうか?」
オレは何かしたのだろうか? この世界に来てから感覚がおかしくなったのか?
面白いなどと……オレは真面目に生きているだけなのに。
「冒険者って、ノゾミさんみたいな方ばかりなんですか?」
「お兄ちゃんは特別なのです」
「そうですよ」
マヤとミーシャに言葉にシャルカは「ふーん」を楽しそうにこちらを見ている。
羨望の眼差しだった。
「もし私が……修道士見習いじゃなかったら……」
「ん? なんだって?」
「ううん。なんでもないです」
シャルカの言葉は焚火の音でかき消されオレの耳には届かなかった。
パチパチと焚火の中で燃えた枝が爆ぜる。
ぼんやりと炎を眺めながらオレは手元の地図に視線を落とした。
焚火の火だけでは見えにくいだろうが、オレには暗視の能力がある。
それはマヤによって描かれたこの村周辺の地図だ。
その中に印のつけられた場所がある。それが今回目指す場所だ。
現地まで行かなければ実際のところは分からない。
見当をつけた場所に行って空振りという可能性だってあった。
しかも地図だけでは分からないことも多い。
実際にこの廃村の現状も訪れてみるまでは分からなかった。
人がいなくなるということがこれほどに荒んだ状況を作り出すとは予想すらしていなかった。
崩れた建物の一角に幕を張り屋根にする。これで夜露をしのぐことができる。
寝るときはマントに包まり眠る――これはかなり効率が悪そうだったのでマザーさんにお願いして寝袋を作っていただきました。
「これは……こんな快適な寝具見たことないです!」
ミーシャが寝袋を見て目を輝かせた。
寝袋といっても布に綿を入れた簡単なものだ。今の季節あまり寒くないので最低限の防寒機能しかない。
ふふふ。この程度で喜んでくれるとは、他にもキャンプの便利グッズを持ち出してみようかとも思ったが、あまりに便利になるとこの雰囲気が台無しだ。
組み立て式のイス程度ならご愛嬌という事でとりあえずは人数分用意する。
「これもすごいですね」
今までならば布を敷いてその上に座るかぐらいしかしてきていないのだろう。
快適な野営にここが危険地帯なのだという気分が薄れそうになった。
「これは教会で作れるかもしれません」
シャルカも目を見張っている。材料集めは贅沢さえ言わなければ教会で集めることができるだろう。
商業ギルドに行き商品の登録を行えば独占して販売ができるという事だ。
「それじゃ大量に作って売り出せばいい」
「えっ? いいんですか?」
シャルカは驚いたようだ。
寝袋自体は大したことはない。逆に今まで誰も思いつかなかった方が不思議なくらいだ。
ミーシャに聞いてみたが、そもそも冒険者はマントや毛布に包まって眠る。外敵に警戒してのことだ。寝袋もいざという時にすぐに動けるように留め具は簡単に外れるようにしてある。
アイデアさえあれば誰でも作れるのだが、今までなかったのであれば、今使っているものがこの世界での寝袋第一号という事になる。
「やるかやらないかはシャルカ次第だ。それで教会が潤えばそれでいいんじゃないか?」
「自分で売り出そうとな思わないんですか?」
まあ、オレが独占して販売すればひと財産にはなるだろう。しかし、そんな気は毛頭なかった。
誰かの助けになればそれでいい。寝袋くらいで人が助かるのならば安いものだ。
「興味ないな」
これは本当のことだ。オレは商売っ気がないのだろう。大人になったら苦労しそうだ。絶対に出世しないだろうし子供の立場ならば父親にしたくないタイプである。生活は苦労しそうだ。
「ノゾミ……すごいです」
ミーシャが感動したようにすり寄ってきた。
「この旅が終わって教会に帰ったら……」
オレは焚火に枝をくべながらシャルカに言う。
「他にも売れそうなものを教えてやるよ」
「いいんですか?」
どうしていいかわからないといった顔だ。
「私たちは……あなたに返せるものなんてありませんよ?」
そんなものを要求するほどオレは欲深くないつもりだ。
「そんなものはいらない……そうだな……」
オレは少しだけ考えた。
「もし商品ができたなら、オレにその商品を安くして売ってくれ」
シャルカは目をぱちくりとさせる。そして、大きく口を開けて笑い出した。
「ノゾミさんって面白い方なんですね!」
「そうか?」
オレは何かしたのだろうか? この世界に来てから感覚がおかしくなったのか?
面白いなどと……オレは真面目に生きているだけなのに。
「冒険者って、ノゾミさんみたいな方ばかりなんですか?」
「お兄ちゃんは特別なのです」
「そうですよ」
マヤとミーシャに言葉にシャルカは「ふーん」を楽しそうにこちらを見ている。
羨望の眼差しだった。
「もし私が……修道士見習いじゃなかったら……」
「ん? なんだって?」
「ううん。なんでもないです」
シャルカの言葉は焚火の音でかき消されオレの耳には届かなかった。
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