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第一章「いきなり冒険者」
第28.5話 011「カルルと冒険者」
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明け方近くになったのでオレは起きだして朝食の準備を始める。
夜の内に危険なことはなかった。
獣の気配もあったが、こちらに近づいてくることはなかった。
危険がないことはいいことだ。
周囲を散策し薪を集める。
カルルも起きだし黙って薪集めを手伝ってくれた。
これだけ静かだと逆に心配になってくる。
「カルルどうしたんだ?」
たまらずに聞いてみる。
あれだけ威勢のよかったクソガキがここまで大人しくなるなんてどう考えてもおかしかった。
「なんか……悪い気がして」
ぽつりと呟く。
何なんだ。この世界の住民は何なのだ。
「……お前……アホだろ」
「なんだと!」
怒りもあらわにカルルが睨みつけてきた。
「それくらいでちょうどいいんだよ」
「えっ?」
虚を突かれたように呆けるカルルの頭をオレは軽く小突いた。
「あのなあ、たったあれだけの報酬で冒険者が来ると本気で考えたのか?」
オレの言葉にカルルは黙り込んだ。
はっきり言って今回の依頼の報酬なんてちんけなものだ。聞けば今回の依頼の報酬はカルルとチャルルでいろいろなお手伝いをしてやっと稼いだお金だという。それを聞いてミーシャが依頼を受けることにしたのだが、ここは世間の厳しさというものをしっかりと叩き込んでおかなければならない。
これは教育なのだ。
そう、愛のムチなのだよ。
「どうせお前もランタン草なんてないと思ってるんだろ」
簡単なことだ。おそらくだがランタン草を本気で探そうと言い出したのはカルルの妹のチャルルだ。兄としては無下に断るわけにもいかずそれならばとギルドに依頼を出すことにした。ギルドの受付がローズでなければ、またたまたまミーシャがこの話に興味を持たなければ、この依頼は日の目を見ないままお蔵入りとなっていたはずだ。そうなれば言い訳もたつ。冒険者なんて金の亡者なんだと悪態をついて妹を納得させればそれで話は終わっていたはずだ。
しかし、依頼は受理され実際に冒険者やってきてしまった。
カルルとしては責任を感じずにはいられなかったのだろう。
実行するまでは勢いがあり、それが現実味を帯びてくると尻込みしてしまったのだ。そう、それはゲームの終盤、いよいよボス戦となったところで急に心配になりレベルや装備が足りないなどといって、ボスの手前でレベル上げをする行為に似て……ないか。
「兄ちゃんはランタン草はあるって思っているのか?」
「そんなの知らん!」
きっぱりとあっさりとオレは否定する。
「なんだよそれ」
そもそもこの世界のランタン草がどんなものだか知らない。地球のものと同じようなものなのかも知らない。そんなものがこの季節にどこに咲いているかなんて知るはずもない。
「お前に冒険者が何たるかを教えてやる」
まあ、語れるほどの冒険なんて今回が初めてなのだが。
それでもシミュレーションなら何年と行っている。
魔法世界から宇宙大戦争、はたまた恋愛からエロまでその経験値は計り知れない。
「いいか、冒険者は金の亡者だ!」
「えーっ!」
身も蓋もない。
オレの言葉にカルルは心底がっかりした顔になった。
「冒険者は夢とロマンを追い求める仕事だが……同時に生きるための手段だ。そして……」
オレはカルルの頭を優しく撫でてやった。
「大切な人たちを守るための大切な仕事だ」
冒険者は確かに夢のある仕事だ。しかし、現実には夢のある仕事ばかりではない。現実の――汚れ仕事も請け負うこともある。
それでも冒険者が冒険者として依頼をこなすのは、それが――誰かのためになっているからだと自負しているからだ。
カルルは黙ってオレの話を聞いていた。
「父ちゃんはオレたちを守るために戦った」
「そうだ」
「母ちゃんも戦ったんだ」
この村でゴブリンたちから村の者たちを、子供を守るために。
「父ちゃんや母ちゃんの死は……無駄じゃなかったんだな」
かみしめるように一言一言。
「当たり前だ!」
オレは力強く頷く。
「いいか。こんな安い依頼料で依頼を受ける冒険者なんてめったにいない」
うんうんとカルルは頷いた。
「依頼を受けた後は冒険者の責任だ。依頼で死のうが依頼主に責任はない」
これは冒険者として当然のこと。冒険に危険がつきまとうのは当たり前だ。それを覚悟で依頼を受けている。
「だからお前はドーンと構えていろ」
「それでいいの?」
「ああ、安心しろ」
「うんわかった」
カルルはにっと笑った。いつもの生意気なクソガキの顔だった。
「じゃあ、ノゾミ兄ちゃん。オレをランタン草までしっかりと案内してくれよ!」
「任せておけクソガキ!」
夜の内に危険なことはなかった。
獣の気配もあったが、こちらに近づいてくることはなかった。
危険がないことはいいことだ。
周囲を散策し薪を集める。
カルルも起きだし黙って薪集めを手伝ってくれた。
これだけ静かだと逆に心配になってくる。
「カルルどうしたんだ?」
たまらずに聞いてみる。
あれだけ威勢のよかったクソガキがここまで大人しくなるなんてどう考えてもおかしかった。
「なんか……悪い気がして」
ぽつりと呟く。
何なんだ。この世界の住民は何なのだ。
「……お前……アホだろ」
「なんだと!」
怒りもあらわにカルルが睨みつけてきた。
「それくらいでちょうどいいんだよ」
「えっ?」
虚を突かれたように呆けるカルルの頭をオレは軽く小突いた。
「あのなあ、たったあれだけの報酬で冒険者が来ると本気で考えたのか?」
オレの言葉にカルルは黙り込んだ。
はっきり言って今回の依頼の報酬なんてちんけなものだ。聞けば今回の依頼の報酬はカルルとチャルルでいろいろなお手伝いをしてやっと稼いだお金だという。それを聞いてミーシャが依頼を受けることにしたのだが、ここは世間の厳しさというものをしっかりと叩き込んでおかなければならない。
これは教育なのだ。
そう、愛のムチなのだよ。
「どうせお前もランタン草なんてないと思ってるんだろ」
簡単なことだ。おそらくだがランタン草を本気で探そうと言い出したのはカルルの妹のチャルルだ。兄としては無下に断るわけにもいかずそれならばとギルドに依頼を出すことにした。ギルドの受付がローズでなければ、またたまたまミーシャがこの話に興味を持たなければ、この依頼は日の目を見ないままお蔵入りとなっていたはずだ。そうなれば言い訳もたつ。冒険者なんて金の亡者なんだと悪態をついて妹を納得させればそれで話は終わっていたはずだ。
しかし、依頼は受理され実際に冒険者やってきてしまった。
カルルとしては責任を感じずにはいられなかったのだろう。
実行するまでは勢いがあり、それが現実味を帯びてくると尻込みしてしまったのだ。そう、それはゲームの終盤、いよいよボス戦となったところで急に心配になりレベルや装備が足りないなどといって、ボスの手前でレベル上げをする行為に似て……ないか。
「兄ちゃんはランタン草はあるって思っているのか?」
「そんなの知らん!」
きっぱりとあっさりとオレは否定する。
「なんだよそれ」
そもそもこの世界のランタン草がどんなものだか知らない。地球のものと同じようなものなのかも知らない。そんなものがこの季節にどこに咲いているかなんて知るはずもない。
「お前に冒険者が何たるかを教えてやる」
まあ、語れるほどの冒険なんて今回が初めてなのだが。
それでもシミュレーションなら何年と行っている。
魔法世界から宇宙大戦争、はたまた恋愛からエロまでその経験値は計り知れない。
「いいか、冒険者は金の亡者だ!」
「えーっ!」
身も蓋もない。
オレの言葉にカルルは心底がっかりした顔になった。
「冒険者は夢とロマンを追い求める仕事だが……同時に生きるための手段だ。そして……」
オレはカルルの頭を優しく撫でてやった。
「大切な人たちを守るための大切な仕事だ」
冒険者は確かに夢のある仕事だ。しかし、現実には夢のある仕事ばかりではない。現実の――汚れ仕事も請け負うこともある。
それでも冒険者が冒険者として依頼をこなすのは、それが――誰かのためになっているからだと自負しているからだ。
カルルは黙ってオレの話を聞いていた。
「父ちゃんはオレたちを守るために戦った」
「そうだ」
「母ちゃんも戦ったんだ」
この村でゴブリンたちから村の者たちを、子供を守るために。
「父ちゃんや母ちゃんの死は……無駄じゃなかったんだな」
かみしめるように一言一言。
「当たり前だ!」
オレは力強く頷く。
「いいか。こんな安い依頼料で依頼を受ける冒険者なんてめったにいない」
うんうんとカルルは頷いた。
「依頼を受けた後は冒険者の責任だ。依頼で死のうが依頼主に責任はない」
これは冒険者として当然のこと。冒険に危険がつきまとうのは当たり前だ。それを覚悟で依頼を受けている。
「だからお前はドーンと構えていろ」
「それでいいの?」
「ああ、安心しろ」
「うんわかった」
カルルはにっと笑った。いつもの生意気なクソガキの顔だった。
「じゃあ、ノゾミ兄ちゃん。オレをランタン草までしっかりと案内してくれよ!」
「任せておけクソガキ!」
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