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第一章「いきなり冒険者」
第28.5話 014「洞窟」
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「ノゾミさん。目的の場所まであとどれくらいなんですか?」
「うーんと……」
草木を伐採しながら進んでいるので帰り道で迷うようなことはないだろうが、かなり深いところまで入り込んでしまっている。
「もうすぐ到着しますよ」
「本当に……あるのかな……」
カルルが手をつないできた。期待と不安の入り混じった目でオレを見上げてくる。
「大丈夫だ。安心しろ」
どうかありますように! などと心の中で祈りまくっていることなど知る由もあるまい。
平常心。平常心。
「そうですよ。神様はきっと見て下さいます」
シャルカが「ね♡」とオレを見る。
いや、「ね♡」と言われてもオレそんな力ないから。
別にぃ、神様なんて信じてないしぃ。やましいことなんてしてないしぃ。
何はともあれ、目的地に到着すればはっきりするさ。
◆ ◆ ◆ ◆
「ここです」
マヤに案内されたのは小さな洞窟の前だった。
「あの……マヤさん?」
「ここです」
二度言われました。
それはどう見てもただの洞窟だった。まあ、大人が入れるくらいの大きさはある。どこまで広がっているのか見当もつかないが。
「ここだ……」
ぽつりとカルルが呟く。彼の目はずっと洞窟を凝視していた。
「ここに父ちゃんと母ちゃん、みんなで来ていた」
「待て!」
ふらりと足を進めるカルルをオレは制する。
しかし、制止の声を振り切りカルルは走り出した。
オレには暗視の能力があるから問題ないが、カルルは普通の子供だ。真っ暗な洞窟内では怪我をする恐れがあった。
「お兄ちゃん先に行くよ! シャルカさんをお願い」
マヤが走り出した。こちらにはミーシャとシャルカがいる。それを気遣っての言葉だった。
マヤは大丈夫だろう。暗視能力もだが、レベルのわりに能力の使い方が非常にうまい。
「あの……大丈夫でしょうか」
シャルカが振り返る。
「大丈夫だ」
オレが行くより安心だとは口が裂けても言えない。
「二人を追いかけよう」
マヤがついていったとはいえやはり心配だ。
洞窟に入る。すぐにミーシャが魔法の光を作り出す。
光は強い。そのせいでオレの暗視の能力では逆にまぶしすぎて役に立たない。
暗視能力を解除して進むことにする。洞窟内は入り組んでいるようではなかったが、とにかく足場が悪い。
気を付けながらオレを先頭にシャルカ、ミーシャと続く。
「シャルカ手を」
オレが手を伸ばすとシャルカが飛びつくように手にしがみついてきた。
ミーシャが怒ったような目でオレを見ているが、これは彼女が転んだ時に怪我をしないようにすぐに対応できるようにということでつないでいるわけで他意はないですよ。
洞窟内は比較的広い。だが所々に大きな穴が開いており、そこから吹き込む風が時折体を揺らす。これはどこかに通じていることを示していた。
風は温かく、甘い香りがした。
思わず気が緩みそうになるが、ここで気を抜くと足元の穴に落ちてしまう危険性があった。魔法の光だけでは隅々まで照らすことなど不可能だ。
急がずに進めば大丈夫だろう。
だが、油断は禁物だ。
「シャルカ……気をつけろよ。ミーシャも足元に……!」
ぐらり――
振り返った瞬間。不意にシャルカがオレを引っ張ってきた。いや違う。シャルカが足を踏み外したのだ。
オレはシャルカの腕を引き寄せるがバランスが悪すぎる。これは――踏み止まれない。
「ノゾミ!」
驚いたようなミーシャの顔が目に飛び込んできた。
咄嗟にシャルカを抱きしめる。
このまま倒れこむだけならいいが、今の感覚からして嫌な予感がした。
「シャルカ目を閉じていろ!」
勢いをつけてシャルカを抱き込む。頭を抱え込み衝撃に備えた。
身体に衝撃は走る。だが、以前ほどではない。
暗視の能力を発動させる。
穴は予想以上に深い。
迫りくる岩壁にできるだけぶつからないようにオレは腕を伸ばした。
岩に引っかかるがつかむことはできない。
「くっ!」
何度も弾かれているうちに地面が見えてきた。
シャルカを強く抱きしめる。
次の瞬間。
背中に衝撃が走った。
「がはっ!」
恐らくは岩にでもぶつかったのだろう。
これがシャルカだったら確実に死んでいる。
ぶつかるのがオレでよかった。
オレは薄れる意識の中でそう思った。
「うーんと……」
草木を伐採しながら進んでいるので帰り道で迷うようなことはないだろうが、かなり深いところまで入り込んでしまっている。
「もうすぐ到着しますよ」
「本当に……あるのかな……」
カルルが手をつないできた。期待と不安の入り混じった目でオレを見上げてくる。
「大丈夫だ。安心しろ」
どうかありますように! などと心の中で祈りまくっていることなど知る由もあるまい。
平常心。平常心。
「そうですよ。神様はきっと見て下さいます」
シャルカが「ね♡」とオレを見る。
いや、「ね♡」と言われてもオレそんな力ないから。
別にぃ、神様なんて信じてないしぃ。やましいことなんてしてないしぃ。
何はともあれ、目的地に到着すればはっきりするさ。
◆ ◆ ◆ ◆
「ここです」
マヤに案内されたのは小さな洞窟の前だった。
「あの……マヤさん?」
「ここです」
二度言われました。
それはどう見てもただの洞窟だった。まあ、大人が入れるくらいの大きさはある。どこまで広がっているのか見当もつかないが。
「ここだ……」
ぽつりとカルルが呟く。彼の目はずっと洞窟を凝視していた。
「ここに父ちゃんと母ちゃん、みんなで来ていた」
「待て!」
ふらりと足を進めるカルルをオレは制する。
しかし、制止の声を振り切りカルルは走り出した。
オレには暗視の能力があるから問題ないが、カルルは普通の子供だ。真っ暗な洞窟内では怪我をする恐れがあった。
「お兄ちゃん先に行くよ! シャルカさんをお願い」
マヤが走り出した。こちらにはミーシャとシャルカがいる。それを気遣っての言葉だった。
マヤは大丈夫だろう。暗視能力もだが、レベルのわりに能力の使い方が非常にうまい。
「あの……大丈夫でしょうか」
シャルカが振り返る。
「大丈夫だ」
オレが行くより安心だとは口が裂けても言えない。
「二人を追いかけよう」
マヤがついていったとはいえやはり心配だ。
洞窟に入る。すぐにミーシャが魔法の光を作り出す。
光は強い。そのせいでオレの暗視の能力では逆にまぶしすぎて役に立たない。
暗視能力を解除して進むことにする。洞窟内は入り組んでいるようではなかったが、とにかく足場が悪い。
気を付けながらオレを先頭にシャルカ、ミーシャと続く。
「シャルカ手を」
オレが手を伸ばすとシャルカが飛びつくように手にしがみついてきた。
ミーシャが怒ったような目でオレを見ているが、これは彼女が転んだ時に怪我をしないようにすぐに対応できるようにということでつないでいるわけで他意はないですよ。
洞窟内は比較的広い。だが所々に大きな穴が開いており、そこから吹き込む風が時折体を揺らす。これはどこかに通じていることを示していた。
風は温かく、甘い香りがした。
思わず気が緩みそうになるが、ここで気を抜くと足元の穴に落ちてしまう危険性があった。魔法の光だけでは隅々まで照らすことなど不可能だ。
急がずに進めば大丈夫だろう。
だが、油断は禁物だ。
「シャルカ……気をつけろよ。ミーシャも足元に……!」
ぐらり――
振り返った瞬間。不意にシャルカがオレを引っ張ってきた。いや違う。シャルカが足を踏み外したのだ。
オレはシャルカの腕を引き寄せるがバランスが悪すぎる。これは――踏み止まれない。
「ノゾミ!」
驚いたようなミーシャの顔が目に飛び込んできた。
咄嗟にシャルカを抱きしめる。
このまま倒れこむだけならいいが、今の感覚からして嫌な予感がした。
「シャルカ目を閉じていろ!」
勢いをつけてシャルカを抱き込む。頭を抱え込み衝撃に備えた。
身体に衝撃は走る。だが、以前ほどではない。
暗視の能力を発動させる。
穴は予想以上に深い。
迫りくる岩壁にできるだけぶつからないようにオレは腕を伸ばした。
岩に引っかかるがつかむことはできない。
「くっ!」
何度も弾かれているうちに地面が見えてきた。
シャルカを強く抱きしめる。
次の瞬間。
背中に衝撃が走った。
「がはっ!」
恐らくは岩にでもぶつかったのだろう。
これがシャルカだったら確実に死んでいる。
ぶつかるのがオレでよかった。
オレは薄れる意識の中でそう思った。
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