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第一章「いきなり冒険者」
第48.5話 010「白竜族の巫女」
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「いやはや、まさかヤムダを倒して下さっていたとは!」
老婆が嬉しそうにオレの盃に酒を注ぐ。
ゲルガにお姫様抱っこされみんなの元まで戻ることができた後――
村の雰囲気は一変。いきなりの歓迎ムードとなった。
酒がふるまわれ、女たちは踊る。
笛や太鼓の音が渓谷に響き渡った。
皆の表情は明るい。
それもそのはず。
オレがこの村の仇であるヤムダを討伐したとアンナの口から報告されたからだ。
「しかし、ヤムダがバージル卿の元までたどり着いていたとは……」
老婆――白竜族の長老兼元巫女のバジンが感慨深げに頷いた。
「バジン様。これで黒竜族の襲撃はなくなるのでしょうか?」
心配そうなゲルガの言葉にバジンは静かに首を振った。
「確かなことは分からぬが……これで終わりではあるまい」
バジルの言葉に周囲が騒然となる。
「しかし……ヤムダを失ったことでノワール派の戦力は大きく失われたことになる」
そんなに大物だったの。
偶然とはいえ、何とか倒せてよかった。
「アンナは狙われる可能性がないわけではないが……」
バジンの言葉にアンナは力強く頷く。
「大丈夫です大婆様。ノゾミ様の加護がある限り私は大丈夫です」
「ふん。悔しいが今のオレではノゾミ殿に勝てん――だが、いずれアンナ様の隣に立つのはこのオレだ!」
ゲルガはそういうと拳を突き出した。
「困ったことがあればオレを頼れ。いついかなる時であってもお前の牙となり爪となろう!」
「いいのか?」
「人間の中でもノゾミ殿は特別な輩だ」
がっしりと肩を組まれ盃に酒を注がれる。
ガルガはほろ酔いの状態のまま話し始めた。
己の心の内を――葛藤と解放。今の気持ちを素直に吐き出すゲルガ。
オレは黙って彼の話を聞いた。その隣でアンナも話を聞いていた。
「飲んでくれ」
ゲルガが盃をオレに向ける。
「この盃を受け取ってくれ」
ゲルガの目は真剣そのものだった。
「……分かった」
オレはゲルガの持つ盃を一気にあおった。ゲルガもオレの持つ盃で酒を飲む。
「これで……オレたちは兄弟だ」
竜人族の戦士と義兄弟になりました。
不思議と違和感はなかった。
「アンナを頼んだぞ!」
「ああ、任せておけ」
頼もしい仲間が増えた。アンナはオレが、白竜族の村はゲルガが守っていくことになる。
「おお、料理が運ばれてきたぞ。ノゾミ殿、今回の料理は女集が腕によりをかけて作った料理だ是非食べてくれ!」
運ばれてくる料理はどれもおいしそうに見えた。
やはりおいしいものを食べると元気が出る。
明日の活力のためにもここは遠慮なく食べるとしよう。
「ところでノゾミ殿」
バジンが酒を注いできた。
「アンナは見てのとおり器量よしじゃ、じゃがくれぐれも気をつけておくれ」
猫撫で声だった。
「大丈夫だ。オレがいる限りアンナは安心だ」
「そうかそうか」
カカカ! とバジンは豪快に笑った。笑うと愛嬌のある顔になるなとその時になって気づいた。
「孫娘に悪い虫がつかんようにしっかりと見張っておいてくれよ」
「そうだぞノゾミ殿! アンナはオレの嫁になるんだからな!」
ゲルガは笑っているが、バジンはピシャリと「お主に婿は務まらん」と切り捨てた。
「アンナの婿は儂が考えるで心配するでない」
話から総合すると誓約と結婚はイコールではないらしい。
「もちろん、嫁になるまでは清い身体でいてもらわねばな」
へええええええええ。
イヤな予感がするなあ。
オレは皿に盛られた肉に手をかけた。
「ところでノゾミ殿」
ドス!
バジンのナイフが肉に突き刺さる。
「アンナの白き翼は、今でも純白に輝いておるのかえ?」
バジンの瞳がオレの目を射抜く。
「お、大婆様……!?」
いつの間にか周囲はしんと静まり返っていた。
太鼓のは止み、笛の音は途絶えた。女や男の笑い声――それらすべてが沈黙に染められる。
「は……はひ?」
動揺するなノゾミ。ここはいつものポーカーフェイスで乗り切るしかない。
「のお、アンナ?」
バジンがアンナに笑いかけた。先ほどまであれほど愛くるしいと感じた顔が今では般若に見えまする。
「ええっと……」
アンナは顔を赤らめながらオレを見た。
「な……!!!!! ノゾミ殿……!!」
バジンがオレを睨みつける。
「儂の可愛い孫娘を……!」
あ、ヤバい。
そう思った時にはすでにガルガにがっしりと肩を掴まれてしまっていた。
「よお……兄弟……」
「オレの中の義兄弟は……今死んだ!」
ゲルガが血の涙を流して叫んだ。
おいおい、義兄弟五分で解散かよ!
「斬首じゃ……」
ほら、おばあちゃんも落ち着いて。
「この男、斬首の刑じゃ――――!!」
「ノゾミ様、逃げますよ!」
アンナがオレの手を引く。
「アンナ様!?」
ゲルガはあまりのことにオレの束縛を解いてしまった。
「もお、お肉食べそこなったじゃない!」
マヤが抗議の声を上げる。
「早く逃げないと殺されちゃうよ!」
。
何なんだよ。せっかくいいところまで行ったのに――
しかし、もとはと言えばオレのせい? アンナも同罪か?
「行きましょうノゾミ様!」
村人に追われているってのにアンナは嬉しそうだった。
「斬首じゃ! 斬首!」
遠くからバジンの叫び声が聞こえる。
どこをどう通ったかオレたちはいつの間にか森に中にまで逃げ込んでいた。
「ノゾミ殿! 潔く罪を受け入れよ!」
ゲルガの声も響く。
まったく。落ち着いて里帰りもできないのかよ。
「次回までに言い訳を考えておこう」
オレの呟きにアンナはびっくりしたようだ。
少し考えてからオレにキスしてくる。
「そうですね。それまでは愛の逃避行ですね!」
嬉しそうに走り出すアンナの後姿をオレたちは必死になって追いかけた。
バージル卿まではまだ遠い。
老婆が嬉しそうにオレの盃に酒を注ぐ。
ゲルガにお姫様抱っこされみんなの元まで戻ることができた後――
村の雰囲気は一変。いきなりの歓迎ムードとなった。
酒がふるまわれ、女たちは踊る。
笛や太鼓の音が渓谷に響き渡った。
皆の表情は明るい。
それもそのはず。
オレがこの村の仇であるヤムダを討伐したとアンナの口から報告されたからだ。
「しかし、ヤムダがバージル卿の元までたどり着いていたとは……」
老婆――白竜族の長老兼元巫女のバジンが感慨深げに頷いた。
「バジン様。これで黒竜族の襲撃はなくなるのでしょうか?」
心配そうなゲルガの言葉にバジンは静かに首を振った。
「確かなことは分からぬが……これで終わりではあるまい」
バジルの言葉に周囲が騒然となる。
「しかし……ヤムダを失ったことでノワール派の戦力は大きく失われたことになる」
そんなに大物だったの。
偶然とはいえ、何とか倒せてよかった。
「アンナは狙われる可能性がないわけではないが……」
バジンの言葉にアンナは力強く頷く。
「大丈夫です大婆様。ノゾミ様の加護がある限り私は大丈夫です」
「ふん。悔しいが今のオレではノゾミ殿に勝てん――だが、いずれアンナ様の隣に立つのはこのオレだ!」
ゲルガはそういうと拳を突き出した。
「困ったことがあればオレを頼れ。いついかなる時であってもお前の牙となり爪となろう!」
「いいのか?」
「人間の中でもノゾミ殿は特別な輩だ」
がっしりと肩を組まれ盃に酒を注がれる。
ガルガはほろ酔いの状態のまま話し始めた。
己の心の内を――葛藤と解放。今の気持ちを素直に吐き出すゲルガ。
オレは黙って彼の話を聞いた。その隣でアンナも話を聞いていた。
「飲んでくれ」
ゲルガが盃をオレに向ける。
「この盃を受け取ってくれ」
ゲルガの目は真剣そのものだった。
「……分かった」
オレはゲルガの持つ盃を一気にあおった。ゲルガもオレの持つ盃で酒を飲む。
「これで……オレたちは兄弟だ」
竜人族の戦士と義兄弟になりました。
不思議と違和感はなかった。
「アンナを頼んだぞ!」
「ああ、任せておけ」
頼もしい仲間が増えた。アンナはオレが、白竜族の村はゲルガが守っていくことになる。
「おお、料理が運ばれてきたぞ。ノゾミ殿、今回の料理は女集が腕によりをかけて作った料理だ是非食べてくれ!」
運ばれてくる料理はどれもおいしそうに見えた。
やはりおいしいものを食べると元気が出る。
明日の活力のためにもここは遠慮なく食べるとしよう。
「ところでノゾミ殿」
バジンが酒を注いできた。
「アンナは見てのとおり器量よしじゃ、じゃがくれぐれも気をつけておくれ」
猫撫で声だった。
「大丈夫だ。オレがいる限りアンナは安心だ」
「そうかそうか」
カカカ! とバジンは豪快に笑った。笑うと愛嬌のある顔になるなとその時になって気づいた。
「孫娘に悪い虫がつかんようにしっかりと見張っておいてくれよ」
「そうだぞノゾミ殿! アンナはオレの嫁になるんだからな!」
ゲルガは笑っているが、バジンはピシャリと「お主に婿は務まらん」と切り捨てた。
「アンナの婿は儂が考えるで心配するでない」
話から総合すると誓約と結婚はイコールではないらしい。
「もちろん、嫁になるまでは清い身体でいてもらわねばな」
へええええええええ。
イヤな予感がするなあ。
オレは皿に盛られた肉に手をかけた。
「ところでノゾミ殿」
ドス!
バジンのナイフが肉に突き刺さる。
「アンナの白き翼は、今でも純白に輝いておるのかえ?」
バジンの瞳がオレの目を射抜く。
「お、大婆様……!?」
いつの間にか周囲はしんと静まり返っていた。
太鼓のは止み、笛の音は途絶えた。女や男の笑い声――それらすべてが沈黙に染められる。
「は……はひ?」
動揺するなノゾミ。ここはいつものポーカーフェイスで乗り切るしかない。
「のお、アンナ?」
バジンがアンナに笑いかけた。先ほどまであれほど愛くるしいと感じた顔が今では般若に見えまする。
「ええっと……」
アンナは顔を赤らめながらオレを見た。
「な……!!!!! ノゾミ殿……!!」
バジンがオレを睨みつける。
「儂の可愛い孫娘を……!」
あ、ヤバい。
そう思った時にはすでにガルガにがっしりと肩を掴まれてしまっていた。
「よお……兄弟……」
「オレの中の義兄弟は……今死んだ!」
ゲルガが血の涙を流して叫んだ。
おいおい、義兄弟五分で解散かよ!
「斬首じゃ……」
ほら、おばあちゃんも落ち着いて。
「この男、斬首の刑じゃ――――!!」
「ノゾミ様、逃げますよ!」
アンナがオレの手を引く。
「アンナ様!?」
ゲルガはあまりのことにオレの束縛を解いてしまった。
「もお、お肉食べそこなったじゃない!」
マヤが抗議の声を上げる。
「早く逃げないと殺されちゃうよ!」
。
何なんだよ。せっかくいいところまで行ったのに――
しかし、もとはと言えばオレのせい? アンナも同罪か?
「行きましょうノゾミ様!」
村人に追われているってのにアンナは嬉しそうだった。
「斬首じゃ! 斬首!」
遠くからバジンの叫び声が聞こえる。
どこをどう通ったかオレたちはいつの間にか森に中にまで逃げ込んでいた。
「ノゾミ殿! 潔く罪を受け入れよ!」
ゲルガの声も響く。
まったく。落ち着いて里帰りもできないのかよ。
「次回までに言い訳を考えておこう」
オレの呟きにアンナはびっくりしたようだ。
少し考えてからオレにキスしてくる。
「そうですね。それまでは愛の逃避行ですね!」
嬉しそうに走り出すアンナの後姿をオレたちは必死になって追いかけた。
バージル卿まではまだ遠い。
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