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第四章「カルネアデス編」
第226話「マヤ」
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「お兄ちゃん、お茶をどうぞ」
マヤが麦茶を持ってきてくれた。
目の前ではあーだこうだと言いながらシスティーナたち片づけをしている。
コップに注がれた麦茶はよく冷えていた。
口に含むと冷たい液体がのどを潤す。
「こうしていると……なんだかこれが普通なんじゃないかって思えてくるよ」
「そうだね」
何も考えないでゲームのことばかりを考えていた以前の自分。
まさか、この世界が幻であるなんて考えもしなかった。
――それに。
魔法世界に調査体として派遣されてからもマヤのサポートがなければ今頃こうしていられたかどうかわからない。
右も左も分からないオレに的確なアドバイスをくれたのはマヤだ。
サポートAI――というが、オレにはどちらでもいい。マヤはマヤだ。オレにとってかけがえのない存在であることは間違いなかった。
「私も……お兄ちゃんには感謝しているんだよ」
または肩に頭を当ててくる。
小さな身体だ。
でも、小さな身体に似合わないパワフルな一面も持ち合わせている。
マイスター領では地図作りでお世話になった。バージル領でのヤムダとの戦闘では大活躍だった。彼女がいなければオレは負け、アンナは連れ去られていた可能性だってあったのだ。
「本当に、ありがとう」
マヤは赤くなりながら俯く。
「そんなことないよ。お兄ちゃんを……調査体をサポートすることが私の役割だか……」
言いかけたマヤの口をオレは塞ぐ。
「…………ん♡」
「調査だとか、サポートだとか――そんなのは関係ない」
しっかりと彼女の目を見据えてオレは気持ちを伝えた。
「オレはマヤだから良かったんだ。二人でいたから乗り越えられたんだ」
「お兄ちゃん……」
任務だとかそんなのは二の次だ。オレたち以上に息の合うコンビもないだろう。
「そうだね。二人だから頑張ってこれたんだもんね」
マヤは笑顔になった。
先ほど麦茶を持ってきた時には少し沈んだ顔をしていたうな気がしたが――どうやら気のせいだったようだ。
「明日、この世界を脱出しよう」
「……うん。そうだね」
ちょっと悲しそうな笑顔。何でそんな顔するんだ? この世界を離れるのが実は嫌だとか?
「まだ、この世界で一緒にデートしてない場所とかいっぱいあったから……ちょっと残念かなぁって思って」
そうか。オレの勘違いか。
それならよかった。
――この時のオレは馬鹿だった。大馬鹿だった。
「いつまでも一緒だよ。お兄ちゃん」
――オレがその言葉の意味を理解したのは――だいぶ経ってからのことだった。
マヤが麦茶を持ってきてくれた。
目の前ではあーだこうだと言いながらシスティーナたち片づけをしている。
コップに注がれた麦茶はよく冷えていた。
口に含むと冷たい液体がのどを潤す。
「こうしていると……なんだかこれが普通なんじゃないかって思えてくるよ」
「そうだね」
何も考えないでゲームのことばかりを考えていた以前の自分。
まさか、この世界が幻であるなんて考えもしなかった。
――それに。
魔法世界に調査体として派遣されてからもマヤのサポートがなければ今頃こうしていられたかどうかわからない。
右も左も分からないオレに的確なアドバイスをくれたのはマヤだ。
サポートAI――というが、オレにはどちらでもいい。マヤはマヤだ。オレにとってかけがえのない存在であることは間違いなかった。
「私も……お兄ちゃんには感謝しているんだよ」
または肩に頭を当ててくる。
小さな身体だ。
でも、小さな身体に似合わないパワフルな一面も持ち合わせている。
マイスター領では地図作りでお世話になった。バージル領でのヤムダとの戦闘では大活躍だった。彼女がいなければオレは負け、アンナは連れ去られていた可能性だってあったのだ。
「本当に、ありがとう」
マヤは赤くなりながら俯く。
「そんなことないよ。お兄ちゃんを……調査体をサポートすることが私の役割だか……」
言いかけたマヤの口をオレは塞ぐ。
「…………ん♡」
「調査だとか、サポートだとか――そんなのは関係ない」
しっかりと彼女の目を見据えてオレは気持ちを伝えた。
「オレはマヤだから良かったんだ。二人でいたから乗り越えられたんだ」
「お兄ちゃん……」
任務だとかそんなのは二の次だ。オレたち以上に息の合うコンビもないだろう。
「そうだね。二人だから頑張ってこれたんだもんね」
マヤは笑顔になった。
先ほど麦茶を持ってきた時には少し沈んだ顔をしていたうな気がしたが――どうやら気のせいだったようだ。
「明日、この世界を脱出しよう」
「……うん。そうだね」
ちょっと悲しそうな笑顔。何でそんな顔するんだ? この世界を離れるのが実は嫌だとか?
「まだ、この世界で一緒にデートしてない場所とかいっぱいあったから……ちょっと残念かなぁって思って」
そうか。オレの勘違いか。
それならよかった。
――この時のオレは馬鹿だった。大馬鹿だった。
「いつまでも一緒だよ。お兄ちゃん」
――オレがその言葉の意味を理解したのは――だいぶ経ってからのことだった。
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