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第四章「カルネアデス編」
第228.5話 021「if-story アープル&アブール ②」
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台所で二人の美少女がいそいそとケーキ作りに……いや、何を作っるのかは内緒で……お菓子作りをしている。
「ちょこれーとというのは甘くてほろ苦い食べ物なのだな」
バリバリとビターの板チョコをかじりながらアブールが呟いた。出来上がる時に材料のチョコがないとかならないだろうな。
一生懸命にお菓子の作り方の本を見ているアープルとは対照的にアブールは補助に徹している。というか、彼女の役目は味見役だ。
「ノゾミに万が一にでも毒になる物があると危険だからな」
やけに苦しい言い訳をかますアブール。作っているのはアープルだからその可能性は皆無だと言いたい。
屁理屈はいいからはよ手伝え。
アープルに睨まれアブールはしぶしぶ手伝いを開始する。とはいっても作業はそれほどに難しくない。卵は卵黄と卵白に分けて牛乳と砂糖を加えてかき混ぜるだけの簡単なお仕事だ。まあ、細かなことはオレも知らない。美琴がケーキを自作したことを自慢げに話していたことを思い出したくらいの知識しかない。
「お兄さんは見ないでください」
見るなと言われると見たくなる。脱がさないでと言われると脱がしたくなる――これ男の心情。
ともあれ、サプライズとしてアープルたちが頑張っているのだ。ここはお楽しみということで素直に部屋に戻ることにした。
雨が降っているので散歩する気にもなれず、部屋に戻ってベッドの上に寝転ぶ。雨の音が遠くから聞こえてくる。雨の勢いは強く台風なんじゃないかと思えるくらいだ。
そのうち雷でも落ちて――
ピカ! ゴロゴロゴロゴロ!
予想通りというべきか、思いの外近くに落雷があった。光ってすぐに轟音がとどろいたのだ。
そして――
家中の電気が消えた。停電だ。
昼間なので窓から差し込む薄ら明かりで周囲が見えないことはない。
オレは部屋から出て台所に向かうと、そこには半泣きになったアープルと困り顔のアブールがいた。
確かこの家は停電時でも非常用に発電機があったはずだが、タニアが「雨の日こそ点検!」とかいって発電機を分解していたのを思い出した。
「オーブンが……動かないです」
今にも泣きだしそうなアープルの声。というか泣いてるし。
さもありなん。
「せっかくお兄さんにチョコレートケーキを食べてもらおうと思ったのに」
「アープルの焼くケーキをみんなで食べてみたかった……」
アープルの心遣いが嬉しかった。アブールも心底残念そうな表情をしている。
オレは本気で残念がる二人を見ていて愛おしさで胸がいっぱいになる。
気がつけばオレは二人を抱きしめていた。
「二人とも……ありがとう!」
力いっぱい抱きしめた。
アープルは初めはびっくりしていたようだったがオレに抱きつき返してくれた。アブールもこれ幸いにと抱きついてくる。
役得役得。ケーキを食べられなかったことは残念だったが、それ以上に得るものはあった。
「二人とも可愛いなあ!」
二人をぎゅ~っと抱きしめる。
「お兄さん苦しいです」
本当にかわいい。こんな二人に愛されているなんてオレは幸せ者だ。
「二人とも食べてしまいたいくらいだ」
オレの言葉に二人が一瞬にして固まる。
あ、あれ……今のはなんかまずかった?
アープルとアブールは互いに顔を見合わせる。
――いや、ほら、言葉のあやというかなんというか。
「「それだ!」」
オレの言葉に二人がにやりと笑った。
それは草食動物ではなく――明らかに肉食系の笑い方だった。
「ちょこれーとというのは甘くてほろ苦い食べ物なのだな」
バリバリとビターの板チョコをかじりながらアブールが呟いた。出来上がる時に材料のチョコがないとかならないだろうな。
一生懸命にお菓子の作り方の本を見ているアープルとは対照的にアブールは補助に徹している。というか、彼女の役目は味見役だ。
「ノゾミに万が一にでも毒になる物があると危険だからな」
やけに苦しい言い訳をかますアブール。作っているのはアープルだからその可能性は皆無だと言いたい。
屁理屈はいいからはよ手伝え。
アープルに睨まれアブールはしぶしぶ手伝いを開始する。とはいっても作業はそれほどに難しくない。卵は卵黄と卵白に分けて牛乳と砂糖を加えてかき混ぜるだけの簡単なお仕事だ。まあ、細かなことはオレも知らない。美琴がケーキを自作したことを自慢げに話していたことを思い出したくらいの知識しかない。
「お兄さんは見ないでください」
見るなと言われると見たくなる。脱がさないでと言われると脱がしたくなる――これ男の心情。
ともあれ、サプライズとしてアープルたちが頑張っているのだ。ここはお楽しみということで素直に部屋に戻ることにした。
雨が降っているので散歩する気にもなれず、部屋に戻ってベッドの上に寝転ぶ。雨の音が遠くから聞こえてくる。雨の勢いは強く台風なんじゃないかと思えるくらいだ。
そのうち雷でも落ちて――
ピカ! ゴロゴロゴロゴロ!
予想通りというべきか、思いの外近くに落雷があった。光ってすぐに轟音がとどろいたのだ。
そして――
家中の電気が消えた。停電だ。
昼間なので窓から差し込む薄ら明かりで周囲が見えないことはない。
オレは部屋から出て台所に向かうと、そこには半泣きになったアープルと困り顔のアブールがいた。
確かこの家は停電時でも非常用に発電機があったはずだが、タニアが「雨の日こそ点検!」とかいって発電機を分解していたのを思い出した。
「オーブンが……動かないです」
今にも泣きだしそうなアープルの声。というか泣いてるし。
さもありなん。
「せっかくお兄さんにチョコレートケーキを食べてもらおうと思ったのに」
「アープルの焼くケーキをみんなで食べてみたかった……」
アープルの心遣いが嬉しかった。アブールも心底残念そうな表情をしている。
オレは本気で残念がる二人を見ていて愛おしさで胸がいっぱいになる。
気がつけばオレは二人を抱きしめていた。
「二人とも……ありがとう!」
力いっぱい抱きしめた。
アープルは初めはびっくりしていたようだったがオレに抱きつき返してくれた。アブールもこれ幸いにと抱きついてくる。
役得役得。ケーキを食べられなかったことは残念だったが、それ以上に得るものはあった。
「二人とも可愛いなあ!」
二人をぎゅ~っと抱きしめる。
「お兄さん苦しいです」
本当にかわいい。こんな二人に愛されているなんてオレは幸せ者だ。
「二人とも食べてしまいたいくらいだ」
オレの言葉に二人が一瞬にして固まる。
あ、あれ……今のはなんかまずかった?
アープルとアブールは互いに顔を見合わせる。
――いや、ほら、言葉のあやというかなんというか。
「「それだ!」」
オレの言葉に二人がにやりと笑った。
それは草食動物ではなく――明らかに肉食系の笑い方だった。
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