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銀狐の章
第036話「お祝いケーキを召し上がれ」
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「ただいま」
「お……おかえりなのじゃ」
「おかえりなさい」
家に帰るとちょっと顔を赤らめたシェンとホクホク顔のあーちゃん先輩に出迎えられた。
「とっても、お風呂だったよ」
「く、屈辱なのじゃ」
何があったかは――聞かないでおこう。
「ところで、どこに行ってたの?」
「ああ、ちょっと買い物に行っていたんだ」
オレの言葉にシェンは少しだけほっとした表情で、「聞かれていなくて……良かったのじゃ」とぽつりとつぶやいている。
そんなシェンの姿を見ていると。
いや、大体筒抜けで聞こえてたんですけどね。とは言えなかった。
◆ ◆ ◆ ◆
「ジャーン!」
オレはテーブルの上に買ってきたケーキを出した。
「ぬおおお!」
「やった!スイーツ!」
イチゴケーキ、チョコレートケーキ、チーズケーキ。
「三人での新しい生活が始まるんだ。ちょっとお祝い的なことをしないといけないと思ってね」
「さっすがモー君!気が利くねぇ!」
「凄いのじゃ!白くてふわふわしているのじゃ!特にこの赤い……ひいっ!」
イチゴケーキを見てシェンが顔を真っ赤にしてテーブルの上に突っ伏した。
「イ、イチゴ……!?」
何やらブツブツと呟き始めた。イチゴはシェンに何やらトラウマを与えているらしい。
「そういえば、お風呂場でイチゴのおも――」
「この白いのはお主様に譲るのじゃ!」
オレの言葉を遮るようにイチゴケーキを差し出す。
「お、おう……分かった」
「そのケーキをシェンちゃんだと思って食べるのよ」
「きゅ~!」
シェンが耳まで真っ赤にする。
「ま、待て!こ、この【けーき】は……小娘が食うのじゃ!」
オレの目の前からイチゴケーキが消えた。
忙しいケーキだなぁ。
「じゃあ、シェンはどれにするんだ?」
「我様はこの茶色いのでいいのじゃ」
つまりはチョコレートケーキ。必然的にオレはチーズケーキになった。
飲み物を準備する。
今回はフルーツジュースだ。
グラスに注いで、さて乾杯となった時に――
「あ、そーだ!」
あーちゃん先輩が思いついたとばかりに手を叩いた。
「モー君。ちょっとあっちを向いていてくれないかな?」
「ん?なに?」
「いいからいいから!」
オレは言われたとおりに後ろを向く。
ははん。さてはローソクでも立てて雰囲気を出すんだな。
せっかくのお祝いだ。誕生日みたいな感じだが、それも悪くない。
オレは携帯をソファーの上に置いてこの様子を録画することにした。
後でみんなで見ればいい思い出になるだろう。
「ねぇ、シェンちゃん」
なにやらごにょごにょとあーちゃん先輩がシェンに耳打ちしている。
「はにゃ!そそそそ、そんなことをするのか!?」
「大丈夫、その方がモー君も喜ぶよ。私もするから……一緒なら大丈夫でしょ?」
小声だがよく通る声。
「うむむむ、分かったのだ」
シェンも納得したようだった。
はて、どんなサプライズがあるのやら。
クラッカーで驚かされるかもしれない。もしくはまさかの鬼火でドッキリとか?
オラ、ワクワクしてきたぞ!
するりと何故か衣擦れの音がした。
――ん?
何だろう、この違和感。
「モー君いいわよ!」
あーちゃん先輩の声。
「はは!オレはちょっとやそっとの事じゃ、驚かな……」
振り返ってオレは目が点になった。
そこには――チョコクリームがあった。
そこには――生クリームがあった。
先ほど買ってきたけーきのクリームをスプーンですくって別の場所に盛り付けただけのものだ。
何の変哲もない――ただのクリーム。
問題はそのクリームを盛り付けた場所だった。
「わ、我様の【ちょこれーと】を舐めて欲しいのじゃ」
衣服を脱ぎ上半身裸になったシェンのそのなだらかな双丘の上にちょこんと盛られたチョコレート。恥じらいながらも腕を組みぐっと胸をよせてちょっとでもふくらみを大きく見せようとしている姿が小動物を連想させた。
「私の生クリームもこぼれそうよ。早く舐めないと落ちちゃうかも♡」
あーちゃん先輩は零れ落ちそうな豊かな果実を両腕で抱えで胸を張っている。その果実のてっぺんには白いクリームがちょこんとのっていた。
「「どうぞ、召し上がれ♡」」
「召し上がれるか――っ!」
こいつら、食のありがたみをなんと心得る!
――ケーキくらい普通に食わせろ!
――後日談――
クリームはみんなで美味しくいただきました。
どうやって食したかについては――企業秘密です。
「お……おかえりなのじゃ」
「おかえりなさい」
家に帰るとちょっと顔を赤らめたシェンとホクホク顔のあーちゃん先輩に出迎えられた。
「とっても、お風呂だったよ」
「く、屈辱なのじゃ」
何があったかは――聞かないでおこう。
「ところで、どこに行ってたの?」
「ああ、ちょっと買い物に行っていたんだ」
オレの言葉にシェンは少しだけほっとした表情で、「聞かれていなくて……良かったのじゃ」とぽつりとつぶやいている。
そんなシェンの姿を見ていると。
いや、大体筒抜けで聞こえてたんですけどね。とは言えなかった。
◆ ◆ ◆ ◆
「ジャーン!」
オレはテーブルの上に買ってきたケーキを出した。
「ぬおおお!」
「やった!スイーツ!」
イチゴケーキ、チョコレートケーキ、チーズケーキ。
「三人での新しい生活が始まるんだ。ちょっとお祝い的なことをしないといけないと思ってね」
「さっすがモー君!気が利くねぇ!」
「凄いのじゃ!白くてふわふわしているのじゃ!特にこの赤い……ひいっ!」
イチゴケーキを見てシェンが顔を真っ赤にしてテーブルの上に突っ伏した。
「イ、イチゴ……!?」
何やらブツブツと呟き始めた。イチゴはシェンに何やらトラウマを与えているらしい。
「そういえば、お風呂場でイチゴのおも――」
「この白いのはお主様に譲るのじゃ!」
オレの言葉を遮るようにイチゴケーキを差し出す。
「お、おう……分かった」
「そのケーキをシェンちゃんだと思って食べるのよ」
「きゅ~!」
シェンが耳まで真っ赤にする。
「ま、待て!こ、この【けーき】は……小娘が食うのじゃ!」
オレの目の前からイチゴケーキが消えた。
忙しいケーキだなぁ。
「じゃあ、シェンはどれにするんだ?」
「我様はこの茶色いのでいいのじゃ」
つまりはチョコレートケーキ。必然的にオレはチーズケーキになった。
飲み物を準備する。
今回はフルーツジュースだ。
グラスに注いで、さて乾杯となった時に――
「あ、そーだ!」
あーちゃん先輩が思いついたとばかりに手を叩いた。
「モー君。ちょっとあっちを向いていてくれないかな?」
「ん?なに?」
「いいからいいから!」
オレは言われたとおりに後ろを向く。
ははん。さてはローソクでも立てて雰囲気を出すんだな。
せっかくのお祝いだ。誕生日みたいな感じだが、それも悪くない。
オレは携帯をソファーの上に置いてこの様子を録画することにした。
後でみんなで見ればいい思い出になるだろう。
「ねぇ、シェンちゃん」
なにやらごにょごにょとあーちゃん先輩がシェンに耳打ちしている。
「はにゃ!そそそそ、そんなことをするのか!?」
「大丈夫、その方がモー君も喜ぶよ。私もするから……一緒なら大丈夫でしょ?」
小声だがよく通る声。
「うむむむ、分かったのだ」
シェンも納得したようだった。
はて、どんなサプライズがあるのやら。
クラッカーで驚かされるかもしれない。もしくはまさかの鬼火でドッキリとか?
オラ、ワクワクしてきたぞ!
するりと何故か衣擦れの音がした。
――ん?
何だろう、この違和感。
「モー君いいわよ!」
あーちゃん先輩の声。
「はは!オレはちょっとやそっとの事じゃ、驚かな……」
振り返ってオレは目が点になった。
そこには――チョコクリームがあった。
そこには――生クリームがあった。
先ほど買ってきたけーきのクリームをスプーンですくって別の場所に盛り付けただけのものだ。
何の変哲もない――ただのクリーム。
問題はそのクリームを盛り付けた場所だった。
「わ、我様の【ちょこれーと】を舐めて欲しいのじゃ」
衣服を脱ぎ上半身裸になったシェンのそのなだらかな双丘の上にちょこんと盛られたチョコレート。恥じらいながらも腕を組みぐっと胸をよせてちょっとでもふくらみを大きく見せようとしている姿が小動物を連想させた。
「私の生クリームもこぼれそうよ。早く舐めないと落ちちゃうかも♡」
あーちゃん先輩は零れ落ちそうな豊かな果実を両腕で抱えで胸を張っている。その果実のてっぺんには白いクリームがちょこんとのっていた。
「「どうぞ、召し上がれ♡」」
「召し上がれるか――っ!」
こいつら、食のありがたみをなんと心得る!
――ケーキくらい普通に食わせろ!
――後日談――
クリームはみんなで美味しくいただきました。
どうやって食したかについては――企業秘密です。
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