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17.遅れて帰ってくる兄がいるので
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「レイ、兄さまはどこ?」
レイはすこし目を泳がせてとめた。すぐに覚悟を決めた様子でまっすぐ私を見る。
「デイヴィットはオレを先に行かせるための囮になった。途中、衛兵と王城騎士に助けを頼んだが……あちらの情報はまだわからない」
後悔のにじむ瞳のレイ。私は兄ならそうするだろうと妙に納得してしまって小さく息を吐いた。
「兄さまならやりかねないわね。そのおかげで私は助かったのだし。……文句と礼はあとでたっぷりいうわ」
無事を祈り、窓を見る。雨は止んだ。
騎士たちが気を失っている侵入者たちを縛り上げ床に転がしている。そろそろ衛兵が到着するだろう。
********
レイやサラ、パトリシアに手伝ってもらいながら、片付けの指示を出し、壊されたものや仕掛けられたものがないか念入りにチェックしていった。
細かな傷や汚れ、小物の破損はあるが、壊されたものは私の執務室の扉くらいで、他の調度品には大きな破損があるものはなく、屋敷の中も周辺にも目立った異変はない。屋敷の周辺は日が昇った後、もう一度確認するよう指示を出した。
あの男の“目的は達した”という言葉が気になるが、今のところ何も被害がないところをみると、部屋を荒らすことが目的なんて短絡的なものでなければ、兄の方に目的があったのかもしれない。
「シャーロット!」
走り寄ってきたパトリシアの声に意識を向ける。彼女は足りない工具などを借りるために一度家へ戻っていたはずだ。
「デイヴィット様が帰ってきた。今、エントランスに……」
言葉は最後まで聞けなかった。はやる気持ちを抑えてエントランスホールに向かう。
エントランスホールには兄の護衛をしていた騎士たちが手当てを受けている。
その騎士たちの間を忙しなく動きまわり、指示を出す兄を見つけて、私は思わず大きな声で呼びかけた。
兄は私に気が付くと、ほっとした顔で笑う。
「無事でよかった」
そう言った兄の腕には包帯が巻かれ、血がににじんでいる。
「そちらのけが人は?」
「数名、全員軽傷よ。手当てもすんでいて休んでいるわ。兄さまの方は、大変だったみたいね」
「あぁ、死者が出ていないのが救いだ」
横たわる騎士や御者たちを悲痛な面持ちで見つめている。
「兄さまの怪我は」
兄は包帯の巻かれた腕を少し上げて、小さく笑う。
「かすり傷程度だよ。大丈夫。……彼らにはそれなりの償いをしてもらわないとね」
「心当たりがあるの?」
「まぁね。シャルは何も心配しなくていいよ」
兄の目が鋭く光る。
襲撃の首謀者には心当たりがあるようだった。
それを私に言わないあたり、兄らしいと思う。そして、私が兄に対して抱える不満の一つだ。
「デイヴィット様」
サラが心配と安堵の入り混じった瞳で兄を見ている。
「サラ嬢。……君がいてくれてよかったよ」
「いえ、私は何もできていません」
サラが首を横に振って悲痛な顔をする。
「なんで? サラがいなかったら被害はもっと大きかったはずよ」
「それはラクシフォリアの使用人たちが優秀だからよ」
私の言葉にサラは微笑んで答えた。そしてまた申し訳なさそうな顔をして、兄を見上げる。
「例の件、準備が終わっておりません」
兄の顔色が変わった。
レイはすこし目を泳がせてとめた。すぐに覚悟を決めた様子でまっすぐ私を見る。
「デイヴィットはオレを先に行かせるための囮になった。途中、衛兵と王城騎士に助けを頼んだが……あちらの情報はまだわからない」
後悔のにじむ瞳のレイ。私は兄ならそうするだろうと妙に納得してしまって小さく息を吐いた。
「兄さまならやりかねないわね。そのおかげで私は助かったのだし。……文句と礼はあとでたっぷりいうわ」
無事を祈り、窓を見る。雨は止んだ。
騎士たちが気を失っている侵入者たちを縛り上げ床に転がしている。そろそろ衛兵が到着するだろう。
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レイやサラ、パトリシアに手伝ってもらいながら、片付けの指示を出し、壊されたものや仕掛けられたものがないか念入りにチェックしていった。
細かな傷や汚れ、小物の破損はあるが、壊されたものは私の執務室の扉くらいで、他の調度品には大きな破損があるものはなく、屋敷の中も周辺にも目立った異変はない。屋敷の周辺は日が昇った後、もう一度確認するよう指示を出した。
あの男の“目的は達した”という言葉が気になるが、今のところ何も被害がないところをみると、部屋を荒らすことが目的なんて短絡的なものでなければ、兄の方に目的があったのかもしれない。
「シャーロット!」
走り寄ってきたパトリシアの声に意識を向ける。彼女は足りない工具などを借りるために一度家へ戻っていたはずだ。
「デイヴィット様が帰ってきた。今、エントランスに……」
言葉は最後まで聞けなかった。はやる気持ちを抑えてエントランスホールに向かう。
エントランスホールには兄の護衛をしていた騎士たちが手当てを受けている。
その騎士たちの間を忙しなく動きまわり、指示を出す兄を見つけて、私は思わず大きな声で呼びかけた。
兄は私に気が付くと、ほっとした顔で笑う。
「無事でよかった」
そう言った兄の腕には包帯が巻かれ、血がににじんでいる。
「そちらのけが人は?」
「数名、全員軽傷よ。手当てもすんでいて休んでいるわ。兄さまの方は、大変だったみたいね」
「あぁ、死者が出ていないのが救いだ」
横たわる騎士や御者たちを悲痛な面持ちで見つめている。
「兄さまの怪我は」
兄は包帯の巻かれた腕を少し上げて、小さく笑う。
「かすり傷程度だよ。大丈夫。……彼らにはそれなりの償いをしてもらわないとね」
「心当たりがあるの?」
「まぁね。シャルは何も心配しなくていいよ」
兄の目が鋭く光る。
襲撃の首謀者には心当たりがあるようだった。
それを私に言わないあたり、兄らしいと思う。そして、私が兄に対して抱える不満の一つだ。
「デイヴィット様」
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「サラ嬢。……君がいてくれてよかったよ」
「いえ、私は何もできていません」
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「なんで? サラがいなかったら被害はもっと大きかったはずよ」
「それはラクシフォリアの使用人たちが優秀だからよ」
私の言葉にサラは微笑んで答えた。そしてまた申し訳なさそうな顔をして、兄を見上げる。
「例の件、準備が終わっておりません」
兄の顔色が変わった。
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