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① 1月3日の話

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正月そうそう、ご来光を拝んで実家に向かう電車はほとんど人が乗っていなかった。

自宅から少し離れた俺の実家。
「元旦はゆっくりしたいから来るな!」と母さんに言われ、俺の年始はだいたい3日から始まる。
朝日が登って。若いカップルが楽しそうにはしゃぐ姿はなんとも微笑ましい。

独り身の俺が実家に帰るのは、母さんのおせちが食べたいのと。筆無精の母さんのかわりに俺が年賀状の返事を書くからだ。

親の年賀状を描いている俺。
昔から絵を描くのが苦ではない。
プリンターで印刷するのがどうにも違和感で、ゴム版で作る俺。偉いよな。

母親の年賀状。律儀にも俺の幼稚園のときの保護者からずーっとある。
結婚しました。孫産まれました。いつも新年に去年の年賀状をチェックする。
親の手紙を読むのは気が引けるけど、住所確認のついでに読むわな。
みんなどうしてんのかな。

40歳すぎて独身。
なんで結婚しなかったのか。
ご縁がなかったの一言。
いや、生きるに精一杯。
嘘です。
毎日、楽しくて、楽しくて、なんかそのまま来てしまいました。
お付き合いもあったけど、共に生きるとか無理だなって思ってしまった。
やりたいことありすぎて。
相手の事考えるのが面倒。

「LINEが既読になってるのに返事くれない!」とか言われても。
「了解!」のスタンプで何があかんの?
メッセージ書くのも面倒くさい。
会って話したらいいと思うしな。

まぁ、そう言う事。

花の命は短し乙女?

何も僕がつむことないやろ。

あっという間に歳はとる。

世間一般、一人がどうとか、

家を出たら、

ずーっと一人だからな。

あまり考えてもな。

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