darkness dandelions

Ari

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9導かれしもの

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ある朝、ウロコダキは水面をゆったりと漂いながら、Ariに穏やかに語りかけた。

「なぁ、Ari、ひとつ疑問が浮かんだ。この洞窟で何を求めておる?よそ者には過酷な場所だ。」
その視線は温かくも鋭く、Ariの内面を優しく探った。

Ariは一瞬言葉を探し、モモンガを肩でそっと撫で、視線を落とした。

「……ここにいる理由か。」
とAriは静かに口を開き、思いを語り始めた。

「目が覚めて、助かった事に安堵したが、しばらく誰とも会いたくないと思った。確かに環境は厳しいかもしれないが、滝の音は僕を落ち着かせてくれるし、興味深い文献が山ほどある。贅沢な暮らしをしなければ充分生きていける。僕は少し前まで国の役人として、疲弊した心を癒す回復魔法薬を創っていたんだが…」
言葉が途切れ、窓の外に広がる風景に目を向けた。

「人間は相手を想いすぎて自らを消耗してしまう。僕が調合した薬は驚くほど高値で取引されたが、それが本当に善いことなのか、疑問が湧いてきた。努力と過労の境界を見失ってしまったんだ。」

ウロコダキは長い体を水中で軽く動かし、Ariの言葉に耳を傾けた。幾多の時代を監視してきた守護者の瞳には、深い洞察と微かな光が宿っていた。やがて、低く落ち着いた声で応じた。

「人間の心は脆く儚いものだな。俺は何世紀もこの滝を見守り、過ぎ去る命を数多く目にしてきた。お前の薬は救いを齎すが、同時に犠牲も生む。それが魔法の二面性というものか。」

Ariはウロコダキの言葉に小さく頷き、静かに付け足した。

「人の心と命は尊い。誰かを支えたいという気持ちはあるが、金銭の駆け引きにはもう疲れ果てた。でも、もし新しい希望を誰かに灯せたら…。」
声に微かな震えが混じりつつも、内に秘めた意志が感じられた。しばしの静寂が流れ、Ariは頭上から流れ落ちる滝の水を見つめ、さらに語った。

「人の心は壊れやすく、糸が切れれば独りで空へ消えてしまう。もしまた希望を失った者に出会えたなら…その終わりが悲劇でなく、天命を見出し、幸せを掴んで生きてほしいと願う。それは僕の勝手な思いかもしれないが、人生は自分を最大限に活かし、世界に還元する喜びを与えられるものだ。生まれてきた意味を感じられるよう、助けになりたい。」

ウロコダキは水面に静かに身を浮かせ、Ariに声をかけた。

「Ariよ…お前はどこへ向かおうとしている?その瞳は休息も安らぎも失ったようだが。」Ariは動きを止め、かすかに震える声で答えた。

「僕は自分も周囲も守りたいだけだ。だが、あの場所には二度と戻りたくない…。」ウロコダキはゆっくりと首を傾け、深い響きの声で語り出した。

「この滝は、お前が落ちた場所よりも遥か深くへと続いている。運命が人生を再び歩むべき者にだけ開かれる聖域だ。かつてこの地にいた魔法使いは、その務めを果たした。あいつは『現実世界への架け橋』と記された看板を掲げ、フラワーランドと外の世界を繋ぎ、迷える魂を導いた。天命を全うし、旅立ったが、その使命はまだ終わっていない。お前が引き継いでみないか?」Ariは一瞬目を閉じ、震える手を強く握った。追手の影が脳裏をよぎったが、ウロコダキの言葉に奇妙な平穏を感じ、顔を上げた。

「ここに留まってもいいなら、引き受けよう。何をすればいい?」
声には躊躇と決意が交錯し、モモンガがそっと頬に鼻を寄せて寄り添った。

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