アラカルト

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1人目 わしお ななこ

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「珠江ー!」

学生で溢れるカフェテリアで、1人読書に耽る私、星野珠江。
正直周りがお昼間近のカフェテリアは煩くて、さほど集中は出来ていなかったけれど、暇つぶしにはちょうどよかった。

お昼前に登校してきた私はここでこうして友人たちを待っていた。
別に遅刻じゃない。大学ってのは自由だってこと。私がたまたま講義を選択してない結果ってだけだ。

私以外の友人たちもそう。
こちらに満面の笑みで近づいてくる彼女も、お昼前に登校してきた仲間。

「おはよー、菜々子」

朝はとっくに過ぎてるからおはようが正しいかは分からないけれど、私はこの友達が多くて可愛い鷲尾菜々子に挨拶をした。
可愛い笑顔がさらに可愛くほころぶ。

「おはよ、みんなまだ?」
「もうそろそろと思うよ、それより今日はちゃんと起きれたんだね」
「目覚まし1分ごとにかけたからね!」

ふふん、と鼻を鳴らす菜々子は普段は遅刻常習犯だ。
よく他のメンバーにも注意されていて、正直大学入学式から1ヶ月も経ってないのによくやるもんだと思う。

高校を卒業して、私は県外の大学に進学した。
知り合いも一人もおらず、正直とても心細かったときに、私は彼女たちに声をかけてもらった。

派手な見た目でもなく、大学デビュー感が出ているわけでもない、普通そうな彼女たち。
何より、菜々子は私と同じ一人暮らしだと聞いてとても嬉しかった。

「今日のお昼何にしようかなーAランチかBランチか・・・珠江は?」
「うーん、うどんかな・・・」
「またうどん!?たまには違うの食べなきゃ益々細くなるよー!」
「菜々子に言われたくないよ!」

別にお金があるなら私だってBランチが食べたかったけど・・・!
正直仕送りだけじゃ毎日学食なんて厳しい・・・
菜々子はどうやらお金には困ってないようでいつも美味しそうなランチを食べている。
アルバイトしてるなんて話聞いたことないけど、

「ねぇねぇ、菜々子アルバイトしてるの?」
「急にどしたの?してないよー!働くなんて無理無理!」

可愛い顔して笑ってるけど、羨ましいという心が私に芽生える。
だって、っていうことは親でしょう?
もしかして菜々子の家はお金持ちなのかなぁ・・・
うちは正直お父さんサラリーマンだし、お母さんパートだし、家庭はいっぱいいっぱいだよ、ほんと、娘の私にも家庭事情わかるもん。

妬み嫉みは思ったって仕方ないんだけどさ

「珠江アルバイトするの?」
「考えてはいるんだけどさ、なかなかいいの見つからなくて」
「ふーん、そういえば葉那ちゃんと澪もそんなとこ言ってたね」
「え?そうなの?」
「うん、特に澪はもう目星つけてるっぽい」

ここにはいないメンバーの2人の顔を浮かべ、そうなんだ、と頷く。
澪は知らないけど、葉那ちゃんは部活もするんじゃなかったんだっけ?
タフだな、両立なんて私は絶対無理。

「葉那ちゃん部活はどうするの?」

私たちの中で私たちの情報に詳しいのは菜々子だ。
あまり学校に来ない彼女だけど、なんとなく彼女にはあれこれ話してしまう癖がみんなある。
きっと聞き上手なんだけと思うけど・・・
菜々子はどうにもこうにも掴みどころがないから私は自分のことを話す時はちょっと警戒してるのは内緒。

菜々子はにっこりと笑い上機嫌な声を出して言う。

「今日の放課後見学行くんだってさ!珠江も一緒に行ったら?」
「え!な、なんで?」

部活をやりたいなんて言った覚えはないんだけど

「彼氏いないんだよね?部活って彼氏作るチャンスだよ」
「そんな理由でやらないよ!」
「だって珠江人見知りじゃん、葉那ちゃんいたらあんまり緊張もしないだろうし、なにより部活、男子バスケ部だよ?」
「え、男子?」
「そ、マネージャーしたいんだってさ、葉那ちゃん」

マネージャー・・・ちょっとだけ憧れる職であると思うのが本音
葉那ちゃんは菜々子のこの言い方だと、男目当てなのだろうか?
まさか葉那ちゃんが・・・とは思う一方でちょっとだけ心が揺さぶられる
なんて邪な気持ちなんだ!
真面目に部活やってる人に失礼じゃん!

そんな考えを菜々子はお見通しなのか、「葉那ちゃん珠江が一緒だと嬉しいんじゃない?」と笑って見せた。



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